今を精一杯
城出姫が少し落ち着いてきたので投稿します。
「ねえマリ……?」
気づいたら、なみだで顔も髪の毛もぐしゃぐしゃだ。
カフェにいた人たちからの視線が危うい。
だけど気にする余裕なんてなかった。
ナツホに全部を話した、泣きたくなった?辛くなった?
ちがう。
全部ぜんぶ違う。きっとあたしは、楽になったんだと思う。
あの日みたいに……、病気のことを知らなかったあの頃みたいに笑えることはたぶんぜったいないと思う。
だけど……。胸の辺りにとり捲くこのどうしようもない痛みは少しだけ和らいだ。
「拓也に話しちゃだめ?拓也も……心配してたよ?」
「拓也、君は……マサキに言わない、よね」
「そんなにマサキ君に心配かけらんない?」
「だってマサキにはマサキの人生があるんだよ?
あたしが死んでも、マサキはこの先ずっと生き続ける。
だから、マサキにはあたしのことなんか考えないで真っ直ぐ生きて欲しい」
「そ……っか、マリが決めたことなら仕方ないね
分かった、拓也には言わないでって言っとく」
「……うん」
今のあたしにとって何より大切なのはマサキ。
何より失いたくないのはマサキ。
何より……別れるべきなのはマサキ。
その事実はぜったいに変わらない。
「マリはこれからどうするの?」
「どうって?」
「やっぱりマサキ君……納得しないでしょ、簡単には。
ずっと一緒にいたんだよね?5年間も」
「仕方ないよ、納得してもらわなくてもいい。
あたしが……マサキから離れればいい話だから」
無言の沈黙。……ああ、あの日からもう1年が経つ。
15歳になったあの悪夢の瞬間から……、残り1日。
明日で16歳。
きっと誰も覚えてない。
お父さんやお母さんは、病院に掛け合って忙しい。ナツホはきっと病気のことで頭がいっぱい。
マサキにはあたしの存在自体忘れてもらわなきゃいけない。
ひとりぼっちの16歳。
これから先ずっとそうなのかもしれない。
仕方ない。
そう、仕方がないことなんだ。
「あたしは――…」
沈黙を破ったのはナツホだった。
「ずっとマリの味方だから!病気とかそんなの関係ない。
20まで生きられないかもしれない?
そんなの、生きられるかもしれないじゃん!
マリが死ぬとか、許さないから。
それに……、もしマリがあたしを避けても、ぜったいあたしはマリの傍から離れない」
目に入ったセカイは段々歪んでゆく。
手に感じたわずかな温もり。
本当は、ずっとずっと……ずぅっと思ってたんだ。
あたしは生きたいんだ。
誰になんと言われようと、生きたい。
その気持ちはぜったいに間違いじゃないし、偽りでもない。
たとえ未来がなくったって、今を生きてることに変わりはない。
20まであと4年。ううん、もう縛られない。
――さあ今を精一杯生きよう
この作品も今月中完結目指して頑張ります。
もう全部完結させたいんです。
新しい長い恋愛書きたくって。
それでは、読んでいただき有難うございました。




