表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20年の思いをあなたに  作者: のん
新たな道へ
27/31

だから、別れた


お久しぶりです。

一ヶ月……ぐらいですかね、投稿してなかったの。

ホントゴメンナサイ。




あの日から何一つ楽しくない。


マサキがいなきゃあたしは何にも出来ないんだなって、実感する。


だめだ。


彼のことはもう考えない。




……あれから何日が経ったかな。




指で数えるだけじゃ数えきれないほどだ。





「マリ……?」


「あ、ナツホ。どしたの?」


「今日さ、放課後空いてる?」


「うん」




久々の約束。


もう病気なんてどうでもいいや、生きてたって楽しくない。


ならいっそ、このままでいい。


マサキがいないこんなセカイ。


灰色で、何一つ楽しくなくて、もうわかんなくなる。なんのために生きたいのか。




あたしはマサキがいなきゃ何もできなくて弱い人間だ。



あたしはマサキを傷つける弱い人間だ。



だけどあたしは、マサキに別れを告げた。




どうしようもない矛盾。





    *




「あー、マリ待った?」


「ううん」




時が過ぎるのはあっという間だ。


放課後なんてすぐに来る。




「カフェでも行こっか」


「いいよ」




淡々としか返事をしないあたしにナツホも苦笑いする。


ばかみたいだ。碌な返事もできないなんてホント……ばかだよね。




なにか話題……なにか話さなきゃ、あたし駄目になりそう。


だけど気まずさだけだ、今のあたしたちを囲むのは。




    *



『いらっしゃいませ――…』




風鈴の音が太陽に照り付けられた人々を和らげる。


楽しそうに笑う人、悲しげに俯く人……、寄り添いあう恋人同士。


みんなみんな、何も知らない。


本当に大切なものを何も分かってない。


本当に大切なもの――…それは失ってから初めて気づくものだから。



「ぉーぃ……いマリ?」




「……ッナツホ、ごめん」




店員さんが冷え切った水を二つテーブルに置いた。


水滴はひたすら落ちる、落ちる、落ちる。




「あのね、マリ……話があるんだよね、」


「話?」


「あの――…あたしが首突っ込むことじゃないと思うけど――…」


「うん?」


「マサキ君と別れたの?」




気づいたらテーブルは湿っていた。


真夏だというのに、人がこんなにもいるというのに。


まるでセカイが違う、この空間だけどこからか切り離されて仲間はずれにされた気分。




「……」


「あんなに仲良かったじゃん、ふたり。

 喧嘩なんかじゃ別れたりしないよね?」


「喧嘩じゃ、ないよ」


「じゃあなんでッ」


「ごめんねナツホ」


「あたしに謝ったって何もかわらない。

 とにかくあたしは……相談してほしかった。

 だってあたしら、親友じゃん。

 そう思ってたのって、あたしだけだったってこと?」


「ちがうよ、あたしはナツホのこと、親友だと思ってる。

 大スキだから……」


「……」


「マサキと別れたのは……」


「……」


「ナツホは、マサキに言ったりしないよね?」



一瞬迷ったような顔した彼女は分かったと告げた。



「あたしね…――いつ死んでも可笑しくない体なの」


「え?何、それ。意味わかんない。

 冗談?ハッ笑えない……」


「冗談なんかじゃない」


「ほんと、に……言ってんの?」



仕方のないことだよ。


簡単に信じられるはずない。



つい昨日まで一緒にいた人間が、突然死ぬかもって言ったら、あたしだって戸惑うから。



「病気でね、20まで生きられない。

 マサキと別れたのも――…、マサキには迷惑かけられないし、急にあたしが死んじゃったらマサキ悲しむでしょ」



「……ッマリ」





あたしはただただ俯いてた、ナツホはただただ泣いて、あたしをすっぽり抱きしめてた。




「だから……別れたの」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ