だから、別れた
お久しぶりです。
一ヶ月……ぐらいですかね、投稿してなかったの。
ホントゴメンナサイ。
あの日から何一つ楽しくない。
マサキがいなきゃあたしは何にも出来ないんだなって、実感する。
だめだ。
彼のことはもう考えない。
……あれから何日が経ったかな。
指で数えるだけじゃ数えきれないほどだ。
「マリ……?」
「あ、ナツホ。どしたの?」
「今日さ、放課後空いてる?」
「うん」
久々の約束。
もう病気なんてどうでもいいや、生きてたって楽しくない。
ならいっそ、このままでいい。
マサキがいないこんなセカイ。
灰色で、何一つ楽しくなくて、もうわかんなくなる。なんのために生きたいのか。
あたしはマサキがいなきゃ何もできなくて弱い人間だ。
あたしはマサキを傷つける弱い人間だ。
だけどあたしは、マサキに別れを告げた。
どうしようもない矛盾。
*
「あー、マリ待った?」
「ううん」
時が過ぎるのはあっという間だ。
放課後なんてすぐに来る。
「カフェでも行こっか」
「いいよ」
淡々としか返事をしないあたしにナツホも苦笑いする。
ばかみたいだ。碌な返事もできないなんてホント……ばかだよね。
なにか話題……なにか話さなきゃ、あたし駄目になりそう。
だけど気まずさだけだ、今のあたしたちを囲むのは。
*
『いらっしゃいませ――…』
風鈴の音が太陽に照り付けられた人々を和らげる。
楽しそうに笑う人、悲しげに俯く人……、寄り添いあう恋人同士。
みんなみんな、何も知らない。
本当に大切なものを何も分かってない。
本当に大切なもの――…それは失ってから初めて気づくものだから。
「ぉーぃ……いマリ?」
「……ッナツホ、ごめん」
店員さんが冷え切った水を二つテーブルに置いた。
水滴はひたすら落ちる、落ちる、落ちる。
「あのね、マリ……話があるんだよね、」
「話?」
「あの――…あたしが首突っ込むことじゃないと思うけど――…」
「うん?」
「マサキ君と別れたの?」
気づいたらテーブルは湿っていた。
真夏だというのに、人がこんなにもいるというのに。
まるでセカイが違う、この空間だけどこからか切り離されて仲間はずれにされた気分。
「……」
「あんなに仲良かったじゃん、ふたり。
喧嘩なんかじゃ別れたりしないよね?」
「喧嘩じゃ、ないよ」
「じゃあなんでッ」
「ごめんねナツホ」
「あたしに謝ったって何もかわらない。
とにかくあたしは……相談してほしかった。
だってあたしら、親友じゃん。
そう思ってたのって、あたしだけだったってこと?」
「ちがうよ、あたしはナツホのこと、親友だと思ってる。
大スキだから……」
「……」
「マサキと別れたのは……」
「……」
「ナツホは、マサキに言ったりしないよね?」
一瞬迷ったような顔した彼女は分かったと告げた。
「あたしね…――いつ死んでも可笑しくない体なの」
「え?何、それ。意味わかんない。
冗談?ハッ笑えない……」
「冗談なんかじゃない」
「ほんと、に……言ってんの?」
仕方のないことだよ。
簡単に信じられるはずない。
つい昨日まで一緒にいた人間が、突然死ぬかもって言ったら、あたしだって戸惑うから。
「病気でね、20まで生きられない。
マサキと別れたのも――…、マサキには迷惑かけられないし、急にあたしが死んじゃったらマサキ悲しむでしょ」
「……ッマリ」
あたしはただただ俯いてた、ナツホはただただ泣いて、あたしをすっぽり抱きしめてた。
「だから……別れたの」




