初めての雪 ~4~
こんなユウリを見るたびに、ハルトはユウリが機械だということが、ちょっと信じられなくなる。目の前でスイッチを入れられたにもかかわらず、だ。
だってユウリは、ハルトが今までかかわってきたロボットとはもちろん、より進化したアンドロイドとも違っていた。それは綺麗な見た目ばかりではなく、行動や話し方とかがあまりにも人間くさいのだ。
ユウリは機械のくせに、人間で言うところの「天然」という言葉がはまりすぎるほどはまる勘違いや聞き違いが多かった。それも、その間違いが、罪のない面白いものばかりでハルトはいつも笑ってしまう。
それがまだ試作段階のせいなのか、それとも父の「初期設定」がそうさせているのか、ハルトに判断はつかない。ただこれは、経験が増えたからといって変われるような代物とは思えなかった。なんとなくだけれど、ユウリの「性格」に問題があるような気がしてならなかった。
もちろん、機械に「性格」なんてものが存在するかどうかは、ハルトにとって謎ではあるけれど、もうそうとしか思えない。
だってユウリは、自分の間抜けな言い間違いや早とちりを笑われると、物の見事にふくれてしまう。「ごめんごめん」と謝って、間違いを理詰めで説明して、何とか納得させることに成功したとしても、今度はいじいじと拗ねてしまうのだ。
ぶちぶちと文句を言いながら、部屋の隅っこに体育座りするのが定番で、その端っこからチラチラとハルトをうかがう。そして、「こっちにおいで」と呼ばれるのを、ずっと待っている。
まだ、ほんの一週間しかたっていないのに、ユウリはハルトの生活にすんなりと溶け込んで、まるで生まれた時から一緒にいるみたいに馴染んでいる。それはハルトにとって、とても不思議な感覚だった。
もともとハルトは人づきあいが苦手で、家族の中でさえ上手く息がつけなくなる時があった。だから高校だって、人となるたけ会わなくてすむようにと、通信制の学校を選んだくらいだった。通信制なら毎日通わなくて済むし、面倒な人づきあいもいらない。そんなふうに、なかば引き籠りみたいな生活を望んでしまうハルトにとって、ユウリは特別だった。
ユウリの前では、色んなことに気を回す必要が無かった。ただ毎日、新しいことを教えながら一緒に歩いて行くだけ。それがハルトには、なんとも心地良い時間だった。ユウリといると毎日が発見の連続で、明日が待ち遠しくなる。こんな経験はいままでなかった。毎日が楽しくて仕方がないなんて、なんて幸せなことなんだろうとハルトは思う。
たとえユウリが、父がつくった機械だと知っていても。機械の成長データを欲しがる父が、ほんの一時ハルトに預けただけなんだろうと察しがついても。変なとこだけいっちょまえの、手がかかって面倒くさいユウリが、可愛くてしょうがなかった。




