新しいスイッチ ~8~
悲観的な思いに囚われながら見つめていると、ユウリはどの答えも合ってないんだと聡く気づいて、うーんうーんと唸りだす。
「ちょう、待てや。んーとな、俺が壊れたい思うたんは、ハルトを困らせたくなかったからなんよ。それって、どう言えば良いんやろ……?」
きときとと視線をさまよわせて、パンと手を叩く。
「あっ! わかった! あんな、ハルトにはずっと笑ってて欲しいんや!」
やっと見つけた! と言わんばかりにユウリがにっこりと笑うから、ハルトの胸底が痛んだ。不意に受け渡される優しさに慣れないのは、いつものことだった。それを取りこぼしてしまったことも、何度もあった。
「……そーか」
ユウリの知らない昔のことも重なって、ちょっと落ち込んでしまったハルトの覇気のない呟きに、ユウリがハルトの顔を覗きこんでこれも違うのかと首をひねっている。
「笑う言うても、作り笑いちゃうで。いっつも、いっつも、幸せそうに笑ってて欲しいんよ」
敵わないと思ってしまう。
ユウリがあまりにも純粋すぎて、その無垢さにハルトは嬉しいのと同時に、どうしようもなく哀しいような気持ちになってしまう。
「ユウリ」
「なん?」
「俺も、同じこと、思うとるよ」
「同じこと?」
「うん」
切ない想いがあふれて、ハルトはちょっと泣きたいような気分になる。
「ユウリには、いつも笑ってて欲しい」
「そうなんか?」
「うん。おまえが笑っとったら、俺も嬉しくなるんよ」
これが「好き」という気持ちだよと、心で呟きながら、
「やから、壊してくれなんて、もう、言わんといてや」
情けなく言えば、ユウリが布団から抜け出して足元に座るハルトに抱きついてくる。
「ごめん、ハルト。ハルトが嫌がるんやったら、俺、もうそんなん言わん。やから、そんな哀しそうな顔せんといて。なんや、俺まで哀しいなってまうよ」
あぁ、ユウリ。それが「好き」という気持ちだよと、言ってみたい。
でも、これが「好き」だと教えてしまったら、もう二度と、ユウリの心から零れる「好き」という言葉は聞けなくなってしまうような気がした。だから今は、ユウリもきっと少しは自分のことを大切に思ってくれているらしいと、そう思うだけだった。
ぎゅーっと抱きしめてくる腕の中は、思いのほか柔らかくて暖かい。ユウリからの抱擁にもたれかかって、ハルトは心底安堵してうつらうつらと眠くなってしまう。
「なんや? ハルト、眠いんか?」
ユウリの声が、遠くに聞こえる。
そう言えば昨日の夜は、あんまり眠れなかった。そして今日も緊張のしどうしで、今はどうしようもなく眠い。
「やったら、このまま眠る? 俺も、傍におっていい?」
そんなことを聞いてくるユウリに小さく頷いて、そのままコトンと眠りにおちていった。




