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出会い ~3~

 頃は二十二世紀後半。

 AI(人工知能)搭載のロボットは、人口減少とともにものすごい進歩を遂げて、今では一家に一台があたりまえになっていた。お掃除ロボットや後片付けロボットみたいに、ひとつの作業に特化したものはもちろん、メイドロボットなんて銘打(めいう)たれた、それこそお手伝いさんか家政婦さんみたいに家の中のことならなんでもこなす高級ロボットまで、その用途はさまざまだ。


 そんなロボット製作の研究所に席をおくハルトの父は、ロボット博士としてテレビの特番なんかにも顔を出すほどの、その道の第一人者だった。


 仕事の関係で研究所のある神戸と東京を行き来しているハルトの父は、ハルトが物心ついた頃から綺麗な標準語を喋っていた。兵庫で生まれ育ったハルトは、気取った感じがする標準語がちょっと苦手だったのだけれど、父の丁寧で穏やかな喋り方は好きだった。

 それに、姉の就職にあわせて母も標準語を使うようになっていたハルトの家は、兵庫に住んで居ながら関西弁を喋るのはハルト一人という微妙な環境になってしまっていたから、今となっては標準語に対する苦手意識はほとんどなくなっていた。

 それでも、自分自身が標準語に切り替えることはなく、母の慣れない標準語に眉を(ひそ)めることも忘れないハルトだった。


 でも、ハルトの父の標準語は、少しの違和感もなく流ちょうだった。

 そして、年がら年中忙しそうにしていたけれど、休日ともなれば家族サービスに余念がなく、母や姉の希望はもちろん、一番小さかったハルトのお願いもちゃんと聞いてくれた。父の自由時間は少なく、出来る範囲も限られていたけれど、ハルトにしてみれば話を聞いてもらえるだけで満足だった。そのうえ、なにかにつけて「男どうし」という言葉を使って、ハルトの味方をしてくれた。

 そんなふうに特別に扱ってもらえるのは、子供心に一人前と認めてもらえているようで嬉しかったし、ハルトの喋ることをなんでも真剣に聞いてくれる父がハルトは大好きだった。


 ところが、それらがすべてハルトに対する愛情ではなく、子供という存在に対する好奇心に過ぎないのかもしれないと疑い始めてからは、ハルトは父に甘えることが出来なくなっていた。


 だって父は時々、ハルトが本気で泣きだしてしまうようなことをする。

 中でも忘れられないのは、ハルトが可愛がっていた初代のタマが今にも死にそうだと嘘をつかれたことだった。

 ビックリして、泣きながら学校から帰ったハルトに父は「ごめんごめん」なんて軽く謝って、「ハルトがどうするか知りたかったんだよ」と他愛ないことのように言った。


 涙は、あっという間にひっこんでしまった。

 怒りとか、不満とか、そんな感情よりもなによりも、そんなことが平然と出来てしまう父が、なんとなく怖かった。

 父の研究者独特の観察をしているような視線は、ハルトを息子からモルモットに変えてしまう。もちろん、実際に父にそう言われたわけじゃないけれど、父にとって自分は研究対象でしかないのかもしれないと感じた時の気分は、言葉では言い表せない。


 そんな研究第一の父は、何かと言うと試作品を自宅に持ち込んで、ハルトの家族を実験材料にする。

 まともに動かないロボットなんて迷惑この上ないのに、母や姉が何度「やめてくれ」と言ってもきかない。ハルトはというと、母や姉と結託(けったく)して父を責める気にはなれず、かといってその現状に満足する気にもなれなくて、逃げることに決めた。その結果が、このマンションでの一人暮らしだった。

 現実は、予定から遥かに離れて、想像以上に寂しいものになってしまったけれど……。

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