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新しいスイッチ ~7~

「……ハルト?」

 腕の中で、小さく呼びかけるユウリがどうしようもなく好きで、

「……壊したいわけやない」

 頬に触れる、妙にさわり心地の良い猫っ毛を優しく撫でながら問いかける。

「俺が、なんかしてる、思うたんか?」

「……うん」

「俺は、なんもしとらんよ」

「……でも、痛いねん」

「キスが、痛いんか?」

「……うん」


 落ち着き始めたユウリの、その表情を確認したくて、ハルトは腕を緩めてユウリを見下ろす。泣いたばかりのユウリは、(まなじり)がほんのりと赤く染まって痛々しく見える。


「やったら、もう、せんようにするか?」

「ちゃうねん。俺、そこがわからんねん」

 ユウリが拳でハルトの胸を押して、泣きそうな表情で訴える。

「壊れそうや思うんに、してもらえないと寂しいねん。なぁ、これってなんなん? 俺、どないしたらええん?」


 自分とのキスで壊れそうに思うのに、してもらえないと寂しいなんて、それがどんな告白なのか、きっとユウリは知らない。もちろん、その言葉がハルトにとってどんなに嬉しいことなのかも。

 眦を紅く染めてぱちぱちと瞬きするユウリを、もう一度抱きしめたくなってしまって、ハルトはあんまり近い距離から離れてユウリの足元に腰掛ける。


「あんなぁ、ユウリ。「好き」ってわかる?」

「うん。わかるよ。物には「好き」なものと「嫌い」なものがあるんやろ? で、好ましいってのが好きで、嫌やなぁってのが嫌いやろ?」


 う~ん、それはいったいどこの辞書に載ってたんやろう?

 そんなことを思いながら、さすがの記憶力にちょっと笑ってしまう。


「そうやなぁ。じゃぁ、ユウリが好きな人って誰なん?」

「好きな人? それだったら、いっぱいおるで。まずパパさんやろ? トオルも好きや。それから、いっつも犬に触らせてくれるおばさんや、「こんにちは」言うてくれるおじさん。みんな、みんな、好きや」

 ユウリにとって、この世界は好きなものであふれている。目にするもの、耳にするもの、全部がきらきらと煌めいている。


「でも、一番は、ハルトやで。やってハルトは、俺のパートナーなんやもん!」

 それはなんだか、ちょっと哀しくなってしまう答えだった。

 ユウリにとって、自分は初期設定の一部にすぎないと言われてしまったような気がした。すると、

「でも、待ってや。ハルトは、それだけやないで。ハルトが特別なんはあたりまえやん。俺、ハルトがいなくなったら、此処に居る必要ないんやもん」

 そんなことはないだろうと、ハルトは思う。


 ユウリはロボットなんだから、データをリセットすれば何度でも、新しい家族と暮らせるだろう。

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