出会い ~2~
そんなこんなな、春休み。
ハルトは一人寂しく、これから暮らす予定のマンションの整理に明け暮れていた。
父の蔵書保管のためだけに使われていたマンションは荒れ放題で、そのままではとても人が住める状態ではなかった。でも、住み慣れた芦屋の一軒家は既に短期貸出の契約も終えて、他人が住んでいた。もともと中学卒業と同時に一人暮らしをしたいと言い出したのは、ハルト自身だったのだけれど、なんとなく、なんとなく寂しくて、ためいきがでそうになる。でも、そんな感慨に浸っている場合ではないと自分に言い聞かせながら、ちょっと大きめのマンションをパタパタと走り回っていた。
とりあえず、あっちこっちに散らばっている本を玄関わきの一部屋に集めて、寝室とリビングを綺麗にする。書庫の整理は多分、一番最後になってしまうだろう。まっ、でもそこは、蔵書を我が物顔で読みたおしている、幼馴染のトオルにでも任せればいい。なんてことを思いながら、最後の仕上げとばかりにリビングのワックスがけをしていた。
―― ピンポーン。
「ん?」
不意になった玄関チャイムに、ハルトが怪訝そうな表情をする。
ハルトが此処に引っ越すことを知っている人は、ほんの数人しかいない。暇があれば此処に入り浸っているトオルはというと、いつの間に手に入れたのかは謎だけれど、このマンションの合鍵を持っているからインターフォンなんか鳴らさないと思う。多分、勝手に入ってくる。
そこへ、チャイムだ。
長いあいだ無人のまま放っておかれたマンションへの訪問客なんて、ろくなもんじゃない。不穏な空気を感じながらそろーっとドアスコープを覗けば、「私ですよぉ!」と無駄に明るく応える父がいた。
がっくりとハルトの肩が落ちる。
「なんやねん」
嫌そうに言ってドアを開けたとたん、グイーっとドアがおされて、ハルトはドアと壁の間に押しつぶされてしまう。
「そっと、そっとね。こっち、こっちの奥のほうに持ってきて」
事の詳細が見えなくて「何? 何?」とあわてるハルトを他所に、父は片したばかりのリビングに大きな荷物を運びこんでいる。せっかく綺麗にしたのに、また散らかされては敵わないとばかりにハルトが急いで父の後を追う。
「親父!」
「はい、お疲れ様。どうもありがとうね。私もすぐに戻りますから、下の駐車場で待っててくれますか?」
父の部下の所員だろうか、白衣姿のふたりがぺこりと頭を下げてリビングを出て行く。
「親父!」
「ん?」
「ん? やないわ。これなんなん? 此処はもう、親父の物置きやないんやで。何、勝手に運びこんどるんよ!」
得体のしれない大荷物を指さしながら、むっとして言えば、
「これはね、私の荷物じゃなくて、ハルトへのプレゼントなんですよ」
「へ?」
「新しい門出へのお祝いってとこですかね?」
「門出ってなんやねん!」と突っ込みたい気持ちを抑えて、ちろりと足元の箱に目をやる。ぱっと見「お棺」にも見えるその箱に、ハルトは悪い予感しかしない。




