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毒親転生 〜娘に嫌われたまま死んだので、異世界で学びなおします〜  作者: ちょこだいふく


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1/10

1.娘とうまくやっていると思っていた

娘の顔を、最後に正面から見たのはいつだっただろう。


あの日、玄関先で。

「……もう、関わらないで」

娘は震える声で、私にそう告げた。


雨なのか、涙なのか。

頬を伝う水滴が冷たかった。


「話をさせて!!お願いだから……!!」


必死に呼びかけても、

娘は小刻みに肩を震わせ、息を詰めたまま──

それでも、一度もこちらを見なかった。




「ねぇ、聞きなさいってば!私はあんたのために…」


「…もう…やめてよ…」


小さく、蚊の鳴くような声だった。

それでも、私の心臓を串刺しにするには十分だった。


「やめてって…なにがよ。なに被害者みたいなこと言ってるの…」


娘は、顔を歪めたまま、声を絞り出すように言った。


「…もう…関わりたくないの…。もう勘弁して……ママと話すの、もう無理…」


その言葉だけで呼吸が止まる。


「無理ってなにがよ!?ママの言うこと、聞きなさい。子供みたいに駄々こねて…全部、あんたのためでしょう!」


娘は首を横に振った。


「私のためじゃない…ママのためでしょう…?」


心臓を爪で引っかかれたような痛み。


「何馬鹿なこと言って…そんなわけないでしょう…」


娘はついに、こちらを見た。

その目は泣き腫れて赤く、限界を超えた子どもの目だった。


「友達だって、全部、ママが勝手に決めたじゃん…。あの子は合わないから駄目。あの子の家は良くないから付き合っちゃ駄目。って…仲良くしたい子、何人もいたのに…全部、やめさせられた…」


息が詰まる。


「いつも“恥をかかないように”って言われ続けて…私の好きな服も、好きなものも…みっともないって全部、否定された…全部捨てられた…」


「それは…あんたがちゃんとした子になれるように…」


「違うよ!!」

娘は泣きながら叫んだ。


「ママがちゃんとしてる母親に見られたいだけでしょう!?私の人生を…ママの世間体に使わないでよ…!!」


「そんな言い方!!」


否定したかった。


「ねぇ…もうやめたいの…ママに合わせて生きるの……苦しいよ……」


「私は……あんたのために…よかれと思って……!」


「そのよかれが一番苦しかったの……」


娘は、まるで心臓を押さえつけるように胸に手を添えていた。


「私、もう…限界なの…このままだと無理なの。」


息を吸い、震える声で、でもはっきりと告げた。


「…この関係を、終わらせたいの」


バサッと視界が崩れ落ちる。


「終わらせる…何を……?どういう意味…よ」


「私…もう、ママの子どもでいるのが苦しいの…。だから…距離を置く。もう連絡もしないし会わない。これで終わりにする…」


娘の声は震えていたけれど、揺るぎなかった。


「待っ…待ちなさい…!なにを勝手な事ばかり…!」


「勝手なのは、ママの方だよ…」


足元が崩れるように感じた。

膝が震え、視界がぐにゃりと曲がった。


「どうして…どうしてわかってくれないの…。私は…あなたのために…あなたを愛してたのに……全部……あなたのためだったのに…!なんで…どうして……どうしてよ!!!」


涙が止まらない。

息が吸えない。

ひとりでに身体が震えた。


「どうして……わかってくれないの……なんで……あんたは……」


娘は、もうこちらを見ていなかった。


「……さよなら、ママ」


その小さな背中が歩き出すのを、私はただ見つめるしかなかった。


(どうして……どうしてよ……どうして……)


意識がぼやける。

雨粒が頬にあたるたび、胸が裂けるように痛む。


(どうして…どうして伝わらないの……どうして……こんな……こんな……)


涙と雨で世界が滲む。

呼吸が浅くなり、胸が締めつけられ、

心が壊れそうになった。

足元がふらつき、そのまま階段を転げ落ちた。


(やだ……いや……やだ……わかってよ……なんで……なんで……)


薄れていく意識の中で、私は泣いた。

泣いて、泣いて、泣き続けた。

頭がおかしくなるほどに。


そして──


……あたたかい。


柔らかな布。

淡い光。

やさしい声。


「生まれてきてくれて、ありがとう……かわいい子…私の天使…」


(…え??)


 抱かれた身体は、小さくて軽い。


(…赤ちゃん…?わたし…?)


おそらく母であろう女性が、涙を浮かべて笑う。


「ようこそ私の天使、あなたの名前は……ニアよ」


ニア。


その響きが胸に落ちた瞬間、泣き尽くした心の奥で、小さな光が灯った。


(…ニア…わたし…新しく産まれなおしたの…?)


 小さな指が、きゅっと空気を掴んだ。


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