時計と一緒に住んでいるある青年のお話
PCのメモ帳で保存していたのを書き起こしたSS。
文字を詰め過ぎた感が諌めませんが……。
カチコチと時計が時を刻んでいる。
心地の良くなる音でもあるし、逆に不愉快にもなる音だ。
音は決して揃うことなく、不協和音が如くに一つ一つが自由に音を発して時を刻んでいる。
それは何個所ではない。何十万と言う時計がひっきりなしに不協和音を奏でるのだ。
私にしてみたら、不快のなにものでもない。たまったものではない。
それでも彼らを管理するのが私の役目である。誰が決めたかは知らないが、管理者は私らしい。
誰からでも聞いた訳ではない。ただ、この時計たちは人の命を刻んでいるのだと言う事は知っている。
壁一面を覆う棚に、一定の間隔を保って置かれている時計たち。
それは床から天井まで続いているらしいのだが、生憎と私は天井まで続く棚が見れていない。
高すぎるのだ。天井が。
私は一面棚に囲まれた中央に、椅子に座って過ごしていた。
窓は無い。けれどどこからか光が差し込んでいるのか部屋の中は明るい。不便な事は何も無い。
正面には扉が有るけれど、開けた事は一切無い。開け様とも思わない。だからその向こうに何があるのか、私には一切理解が出来ない。
私はこの空間で何年の歳月を生きたのだろうか。
否―――何年生かされ続けるのだろうか。
まだ数年しか経過していない様にも思うし、もう数年も経過したような気がする。あるいは数十年やら数百年やら経っているのかもしれない。
正確な時間は、この空間では把握できない。
其々が其々の時を思うままに刻んでいるこの空間では、正確な時間は解らない。例え解ったとしても本当に正しいのかどうか疑問視するのが目に見えている。
だから、もう正しい時間を考えるのを止めた。
朝も昼も夜も、私には関係の無い事だ。
私が起きれば朝であるし、私が寝れば夜である。
結局は、私自身が正確な時間なのだと思う。
可笑しいのは時計たち、とも正直言いがたいのが現状だ。時計たちも時計たちなりに正常な時間を刻み続けているのだから。
「……もう、疲れた」
先代は一体どれほどの時間をここですごしてきたのだろうか。一体どれほど、並ぶ時計が止まり、壊れてゆく所を見てきたのか。
想像出来ない事を、私は今から体験するのだろう。長い年月をかけて。
果たしてその長い年月が速いのか、はたまた遅いのかは理解しがたいけれど。
「もう少しだけ、頑張ろう」
この、数え切れない程の時計たちと。




