第9小路 演技指導
次の日からマーニによる寸劇、演技指導が始まった
「マーニ様、なんですか?その格好は?」
「イロハッ!」
サティスは止めろと言わんばかりだ
「カーディガンを肩からかけて、サングラスこれこそ監督だろう」
「そうなんですねーマーニ様さまー、意外と形から入るタイプ?」
「イロハッ!」
「よし、シーン2の半ば。ヨーイ、ハイ!」
「このははおやのびょうきにはあるとくしゅな…」
「ストーーップ!ドラキュラ…棒読みすぎる、セリフは入っているんだろうな?」
「はいっ!セリフは全部覚えました!」
「ならもう少しなんとかならぬものか?」
「次、イロハ!シーン1の半ば。ヨーイ、ハイ!」
「今、お医者さんがウチに見に来てくれてる」
「ストーーップ!違うなー3、4歳の子供にしてはスラスラ話しすぎだ」
「ちょっとサティス、やってみてくれ。ヨーイ、ハイ!」
「今ぁ、お医者さまがぁ、ウチのぅ体をぉ求めてぇ、アァッ」
「ストーーップ!ダメだ、エロすぎるというか勝手にセリフを変えるな!」
「あとは衣装。ドラキュラは白衣でいけるとして…
イロハ、お前もう少し子供っぽく出来るか?」
「こんな感じ?」
ポンッ
全身煙に巻かれ、消えた頃には
幼児に変わっていた
「おーー」
拍手が湧いた
「そんなことができるのか?」
「ダークエルフの特性かな?大きくなったり小さくなったりはできる。性別を変えたり違うものに変わることは出来ないよ」
「マーニ様、私は?」
「サティス…お前は黙ってベッドに寝ていてくれ。まぁ時々咳払いなんかをしながら」
「えっ?裸で?時々喘ぎ声…」
「アドリブがひどすぎる…」
「セリフは?」
「ない!変な色気を出すから…無い!」
「そんなぁ、あんまりですぅ……シュン」
「大丈夫だ、サティス。お前には大道具と場所の手配などの仕事を用意した。しっかり頼むぞ!」
「かしこまりました」
「ドラキュラ、ちょっと長いセリフもあるからしっかり練習してくれよ!」
「かしこまりました」
「場所はいかがいたしますか?適当に空き家を見つけてくれ。それっぽいのを頼むぞ。
いやーー楽しみだなぁ」
かくして作戦が実行された
(男の裾を引っ張る)
男A「ん?」
(振り返ると緑の髪でツインテールの女の子が立っている)
イロハ「ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんって冒険者さん?」
男A「あぁ、まぁそうだよ。どうかしたの?」
(いきなり泣き出す)
イロハ「エーンエーン、ママが…ママが…」
男A「ママがどうしたの?」
イロハ「ママが病気で寝込んじゃって…」
男A「病院には?」
イロハ「今、お医者さんがウチに来て見てくれてる」
(子供、家の方を指差す)
女A「わかったよ、心配しないで!一緒にお姉ちゃんがついていってあげる」
(女は子供の頭を撫でる)
(全員で家に向かう)
(家の中、ろうそくランタン用意)
(ベッドには母親が横たわっている)
サティス(咳払い)
(ドラキュラ頭を悩ませる)
ドラ「これは…」
イロハ「せんせー、ママはどうなの?」
ドラ「うーーーん…ん?お嬢ちゃん、この人たちは?」
イロハ「ぼーけんしゃさん!」
ドラ「これは、これは!いや、この母親の病気にはある特殊な薬草が必要でして…」
男A「薬草…ですか」
ドラ「とても危険で上位ランクの冒険者であれば可能かとは思うのですが…」
女A「私たちBランクです!」
ドラ「それなら!この街の南にあるコバトール渓谷、その奥に滝があります。その辺りに生えている黄月草キヅキソウと言う黄色い葉のススキによく似た薬草なんですが、それがあれば彼女の病気は良くなるかと」
男A「わかりました、できるだけ早く採ってきますが、あそこは魔物も多いので少し準備してから向かいますが、お母さんのご容態は?」
ドラ「まぁ、今すぐどうこうというわけではないのですが、早いに越したことはありません」
イロハアドリブ「お姉ちゃん、採ってきてくれるの?」
女Aアドリブ「もちろん!」
(女A屈んで子供に視線を合わせる)
イロハ「有難う!宜しくお願いします!」
【ビライド城・謁見の間】
いつも怠惰な男は上機嫌だ
「お前たち、名演技だったぞ!脚本、監督をするのは面白いな。
黄月草…気づきそうなものだがな!
御膳立ては整った、あとはアイツらが上手くやるかどうかだな!ハッハッハッ!
今回の助演俳優賞は…イロハ!お前だ!」
両手で口元を押さえて、周りに会釈し喜びを隠せない演技をした。マイクの前で
「ありがとうございます。この舞台に立てて本当に良かったです。
監督さん、他の俳優さんにもお礼が言いたいです!」
「で、何か欲しいものはあるか?なんでもよいぞ」
「肉!」
「早いに越したことはありません」の後は
男A「わかりました!すぐに準備します。
お兄ちゃんたちきっと薬草持ってくるからね!」
のはずだったのだが、その場の空気を読んで
イロハが女Aに絡んだのがマーニには好印象だったらしい
♢♢♢
ベルゼブブとの格闘
詳しくは
電工月下 第37〜41回路 ご覧くださいm(_ _)m
♢♢♢
【コバトール渓谷】
ドラキュラが罠にかけた後からベルゼブブが敗北するまでの一部始終を見届けていた
「なるほどそうか、思っていた以上だな
しかし、本当に頭の悪いやつだな、ベルゼブブは!
見ていてイライラした。
インセクトの襲撃に絡めて一気に畳み掛ければ良いものを!
虫取り網にかかって死ぬとは本当にどうしようもない、愚か者め
ブツブツブツ
戻って主人様に報告するとしよう」
シュイーン
【ビライド城・謁見の間】
マーニは玉座に右片膝を立てて折り紙をしている
どうやら飛行機を作って飛ばしているようだ
サティスディーナの飛行機がグングン飛距離を伸ばす
「サティス、お前、飛ばすのが美味いな!」
「あらやだ、マーニ様、下ネタですか?」
「いや、全く…」
シュイーン
ドラキュラが現れた
「マーニ様、ただ今戻りました」
「伯爵、お疲れ様。どうであった?まぁ聞くまでもないか、その顔を見れば」
「はい、申し訳ございません。ベルゼ…」
扇子が飛んできた
すんでのところでかわした
「貴様、その名前を呼ぶな!マーニ様が不愉快になられる。ベルちゃんじゃ」
サティスディーナはいいところで伯爵を止めた。そうでなければ…
「し、失礼致しました。ベルちゃんはことごとくヤツらによってやられました」
「そうか、そうか、そう来なくてはな。退屈しのぎもまだ続くと言うことだ。次は何にしようかな」
◇◇◇
【ビライド城・謁見の間】
折飛行機を止めて何かを昔の記憶を辿って折ったようだ
たぶん…おそらく男は鶴を折ったのだ
しかし、どう見ても鶴とは呼べない不細工
よりによってイロハニールが謁見の間に入ってきた
「なんかお腹空いたなーマーニ様さまーーなんか食べるものなーい?」
その不細工な折り紙をみた
「えーマーニ様さま、すごい!!よく出来ていますね、このドラゴン!」
「あーこれか?これは鶴じゃ」
「えー鶴ですかー?どこからどう見てもドラゴンですよー
ほら尻尾なんかグニャグニャに曲がっていて…」
「(咳払い)イロハ、これは鶴じゃ。どこからどう見ても」
サティスディーナが割って入る
「サティス姉様には鶴に見えるんですか?これはどっからどう見てもドラゴン!しかも赤い、ファイヤードラゴンです!」
「捉え方も人それぞれだからな。ただ一般的にはこれは鶴と言っておる。」
「これがーー?」
「イロハ、貴様しつこいぞ!マーニ様は鶴とおっしゃっておるのだ。見方によってはそう見えなくもないが…」
サティスディーナは言った
「サティス、お前傷口に塩を塗るタイプだな」
男は不愉快そうだ
「と、とんでもございません、これは鶴、鶴でございます」
「もう良い。ドラゴン、ファイヤードラゴンか…
皆の中でファイヤードラゴンについて詳しいものはおるか?」
「マーニ様、ダークエルフに伝わる伝承でこの世には三大偉竜があります。
赤…ファイヤードラゴン 火山地帯
緑…キングドラゴン 山岳地帯
藍…アイスドラゴン 氷山地帯
ここ400年はどれも現れておりませんが
それぞれの生息地にて今も眠ると伝わっております」
「なるほど、そうか。ならば、私も含めて手分けして探したい。
是非力を貸してくれ」
「もちろんでございます、マーニ様」
「かしこまりました」
「マーニ様さまー、あたしも探すよーっ」