第2小路 役割分担
1週間でそれぞれの種族特徴を把握したので
神官たちを徴集した
会議の円卓を7人が囲んで着席する
悪魔族の大神官が切り出した
「マーニ様、此度の徴集の意図をご教授願えますか」
「そうだな、私が目を覚ませて7日が経った。それぞれの種族の長所・短所を把握した上で役割担当を記した」
大神官に渡した紙はフワフワとそれぞれの手元に行き渡った
(魔法?俺も使えるのかな?)
竜人族ーーーー掃除、洗濯、雑用
獣人族ーーーー食事、雑用 夜の相手
悪魔族ーーーー警備、雑用 夜の相手
淫魔族ーーーー警備、雑用 夜の相手
ダークエルフー食事、雑用 夜の相手
巨人族ーーーー食事、城の管理
「主にこの作業にそれぞれ従事してもらいたい。
雑用というのは、メイドのことと考えてくれ。
この中で気になったのが、悪魔族と淫魔族この違いだ。
淫魔族は悪魔族なのではないのか?」
「マーニ様、お言葉ではございますが、我々淫魔族は悪魔族とは全く異なり、探究心が強く頭の良さは魔族随一でございます。それに比べて悪魔族は怠惰によりおつむが弱いです」
「何を言うか!貴様ら淫魔族はただ性に対してよく深く、それについての探究心はずば抜けていても、頭の中はチン…(咳払い)男生殖器と女生殖器で溢れているだけではないか!」
「まぁ淫魔族がこのDEMON6、略してD6に入れているのは大神官様に枕営業したからって噂だけどね」
「な…何を言うか、獣人族の小娘!」
「もう良い、わかった。それぞれがそれぞれの責務を全うしてくれ。会議は以上だ。それと…淫魔族長、この場に残れ」
「ひぃーーー、か…かしこまりました」
退出する5種族長は
ざまぁみやがれ!とか
マーニ様の怒りに触れたとか
好き放題言っていた
呼び止められた本人も生きて帰れる気がしていなかった
「さて、淫魔族長」
「は…はいぃ…」
「どうした?そんなに緊張する必要はないぞ」
「は…はぁ…」
「先日当てがってくれた娘をここに呼んでくれぬか?」
「えっ?は…はい!ただいま呼んで参ります!しばしお待ちを!」
会議室の窓を開けて文字通り飛んで帰って行った
獣人族のメイドが入ってきた
「マーニ様、昼食の用意ができました」
(そんな時間か確かにお腹が空いたなぁ)
「すぐに行く」
食堂に向かい、テーブルに腰掛けた。
ミートソースの香りが包み込む
「本日はミートスパゲッティでございます
デオビス山脈麓で採れたガルーダの肉をミンチにし…」
「いっただきまーす…うまい!」
男は説明を途中で遮った
「光栄に存じます」
おかわりもして満腹になった頃
ガシャーーン
(なんだ?会議室の方だな)
男がたどり着く頃に竜人族の警備兵が2人先着していた
「な、何をしておられる、淫魔族長殿!」
「イテテ…急いでいたら止まれなくなって窓にぶつかってしまった」
「大丈夫か?淫魔族長」
マーニが声をかけると、気がついて体勢を立て直そうとするのだがすぐには立ち上がれない
「マーニ様、騒ぎ立てて申し訳ございません。イテテ…連れて参りました!」
「マーニ様、お呼びたていただきありがとうございます。あのサティスディーナと申します」
「サティスディーナ、サティスでよいか?」
「名前を呼んでいただけるだけで光栄に存じます」
「警備兵よ、淫魔族長を医務室に連れていき手当を受けさせよ」
「申しつかりました」
メイドが2人やってきた
「すまぬ、このガラスを掃除してもらえるか?くれぐれも怪我をせぬようにな」
「は…はい、かしこまりました」
顔を赤らめてそう答えた
「それと用務員の巨人族に窓の修理を依頼しておいてくれ」
「サティス、行こうか」
「は、はい…」
サティスは寝室に向かうと思っていた、昼間から体を求められるのだと…向かった先は城内の庭だった
「サティスよ、魔法は使えるか?」
「は…はい、嗜む程度には…」
「ちょっと使って見てくれぬか…そうだ、あそこに庭師が刈り取った雑草が山になっているであろう。あれを燃やせるか?」
「はい。ファイアボール!」
赤い魔法陣を描き、その中心部から火の玉を発した
「すごいな!サティス!」
庭師がこちらを見ている
サティスはマーニの耳元、小声で言った
「マーニ様、このような最下級魔法で驚かれていては面子が立ちません」
「こちらへ」
サティスはマーニの手を取って
足元に青色の魔法陣を描いた
シュイーーン
シュイーーン
綺麗な湖のほとり
対岸の山岳地帯がそっくり水面に映っている
「綺麗だ…」
「え?」
これほど強大な力をうちに秘めている方なのに
感性、感情はまるで子供のようだとサティスは母性をくすぐられるような親近感が湧いた
私も夢を見ていた、長い夢を。
ただ私はサティスディーナを名乗る事前準備としての情報は与えられていた。というかなんとなく覚えていた。
この世界に来たのはつい最近なのに、ずーっとここで生まれ育ったような違和感。
「サティス、私はこちらの世…いや転生召喚されてこの地について知らないことが多すぎる。マーニという存在自体も理解していないのだ」
「召喚前の記憶はございますか?」
「いや、ほぼない。夢で見たようなうろ覚えでしかない」
「わかりました、私が知り得る情報のみになってしまいますが…
あなた様のお名前はマーニ・カレント、月の神マーニの生まれ変わりとされています。ご自身が認識されているかどうかわかりませんが、とんでもない魔力をお持ちです。なので、先ほどのような魔法で驚かれると変な噂が立ってしまうと、こちらに移動させていただきました」
「自覚はない。自覚はないが…」
湖の方に手をかざし青色魔法陣を浮かび上がらせた
炎の波が対岸に向かって押し寄せる
一直線に山頂までの煤だらけの道が出来た
「さ、さすがです!」
これがマーニの力…
「おそらく一度見れば思い出すのでしょう。
私が知りうる限りお見せいたします」