第98話 旧友との会話
リムジンに揺られる時間は存外長くなく、王城が見えてきた。
当たり前だが自分の城より断然大きい。
しかし、面白いのは国の王城よりスターダスト異能学園の寮の方が大きいことだ。
あれは本当に意味が分からない。
そのせいで笑ってしまいそうになる。
この事をエリオット様に伝えた時の驚いた顔は実に滑稽で面白かった。
王城は顔パスなので門をすぐ通れる。
普段はチェックポイントの方が待たされるぐらいだ。
「城の警備隊に止められると思うけど、俺が対応するから安心して」
「承知いたしました」
ベテランのドライバーなので言わなくても良いと思ったが念のため言っておかないと。
これで問題になられたら困るからね。
やはり警備隊に止められることになったが、窓を開けてもらって顔を出した。
すると、すぐ道を通してくれた。
車で入れる場所は入り口までなので、そろそろ降ろしてもらおうかな。
「今日はありがとうね。もう降ろしてもらっていいよ」
「承知いたしました。ではこちらでお停めさせて頂きます」
地味に快適だったリムジンを降りる。
それからは歩きで正門に向かう。
正門の前には多くの兵士が待ち構えている。
その兵士たちは強力な魔法をエンチャントした甲冑を着ている。
正規兵である証だ。
「アリーネス公爵様ですね。念のためですが、こちらに武器や危険物を置いて下さい」
もちろん王城に危険物を持ち込ませる訳にはいかないから当然の確認だ。
しかし、生憎俺はそんな物は持っていない。
そもそも必要ないし。
「安心して、そんなもの持ってないよ」
周りの反応は慣れているもので、逆に微妙な空気が流れていた。
「公爵様はそうですよね。存じ上げているのですが、聞くのも仕事ですので」
「分かってるから気にしなくていいよ」
これでもう入城するための検査は終わったはずだ。
こんなに簡単に城に入れるのも貴族の特権だ。
普通はボディチェックや魔法による確認も行われる。
「エリオット王太子様がお待ちしておりますので、このままお進み下さい」
これでようやく城に入れる。
もう辺りは日が落ちてしまっている。
こうなったら家に連絡をしておこうかな。
この城はあまりに大きいため、魔法陣に設定された魔力を流すと転移出来る仕組みになっている。
正しくは俺がその仕組みを作った。
ここから転移した場所にエリオット様が待っている。
いざ謁見の間へ!
まぁそんな仰々しい場所に行く訳ではないが。
魔力を流し転移すると、少し意外な人物が待っていた。
その人物は朱色を基調とした長衣は動くたびに柔らかく揺れ、堅苦しさを感じさせない仕立てになっている。
その長衣は王族御用達のブランドだ。
「わざわざ足を運んでもらってごめんな」
まさかエリオット様のお出迎えとは。
そんなに緊急な事態だったんだ。
これは見積もりを修正した方が良さそうかな?
「これはエリオット様、ご機嫌麗しゅう」
ヘルトは深々と頭を下げた。
相手は王太子なのだから、血縁の公爵といえども礼儀を尽くさないと。
「もう、そんな態度とらないでおくれよ。いつもの君に戻ってくれないとこっちも困ってしまうじゃないか。それに"エリオット様"だなんて呼び方はこっちが恥ずかしくなるよ」
瞳が僅かに揺れ、眉も下がっている。
これは彼の困った時にする仕草だ。
長い付き合いだからこそ分かる。
「ごめんごめん、エリオット。君が困っている姿を見たくてね。ついついふざけてしまったよ」
今までエリオット様などと呼んでいたのはこのためだ。
正式な場ではさすがに敬称をつけるが、このような場では必要ない。
久し振りに会うのだから、これぐらいはしておかないと。
「こんな場所で悪いけど話をさせてもらうよ」
「こちらは問題ないよ」
エリオットは一つ息を吐き、空気を変えた。
そして、重々しく言葉を出した。
「君は知っているだろうけど、国内で犯罪者が暴れる回っているんだ。そんな事は日常茶飯事だから良いとして、それがあまりにも広範囲で一斉に行われている。そのせいで軍の手が足りていないんだ」
「うんうん、それで俺に何をして欲しいだい?」
エリオットは息を整えて、ヘルトをまっすぐ見据えて話す。
これは国の威信をかけた問題だ。
軍が無理ならヘルトに頼るしかない。
本当に情けない話だが、自分ではこんな事は出来ない。
王太子だから……などの理由ではなく、単純に実力が足りないだけだ。
「厄介者をばら撒いてる大元を叩いてほしい」
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