第97話 あふれる想い
窓際にはカーテンが半分だけ開かれ、淡い光がベッドの上に落ちている。
そのベッドの周りには見たことない機器が大量にある。
そのまま歩いて行くとナタリーがベッドの上で眠っていた。
白いシーツに包まれた体は小さく、胸がわずかに上下するたびまだ息があることを確認出来て安心した。
顔を覗いてみると、健やかな表情をしている。
あれ…?おかしいな…?
まったく悲しくないのに涙が頬に流れてくる。
拭っても、拭っても流れてくる。
足に力が入らず、姿勢を崩しそうになる。
こうして会えたというのに。
なんとか姿勢を保ち、持ちこたえた。
こんな場所で倒れるわけにはいかない。
あまり長居してもあれなので、そろそろ帰ろうか。
でも最後に一言だけ言わせてもらおう。
「また一緒に戦いましょうね。私はいつまでも待っているから」
足を後ろに下げて回ろうとすると、僅かにナタリーが動いた気がした。
急いで振り返るが、真偽が分からない状態にあった。
まあ多分気のせいだよね。
ナタリーが動くはずもないし。
ゆっくりと扉を閉めて出る。
これからどうしよか。
ヘルトもいないし、ここは異国の地だ。
いや、だからこそ冒険でもしてみようかな。
この場所に来た大きな目的は達成出来た。
けれど、ヘルトの動向がどうにも気になる。
これからはそっちの方にも注力しないとね。
それと、お世話係としての仕事も並行してしなければ。
そう思うと意外とやる事が多いかも?
結局今日は冒険もせず、自室に戻った。
なぜならもう少しだけこの余韻に浸っていたいからだ。
サンディーゴから帰ってくると、少しの間だけ時間が出来た。
なので、そろそろエリオット様の元へ出向く事にしようかな。
話される内容は想像出来てるけど、立場上行かなくてはならない。
そろそろ日が沈みそうなぐらいの時間帯だが、アポ取ればいいか。
王子に直接メッセージさせてもらおう。
不敬かもしれないが、王子とは仲が良いので特に咎める人もいないでしょ。
送信が完了したから王城に向かおうかな。
返事など分かりきっているから確認しなくて良いか。
残念ながら、王都は国防や色々な面から全面的に転移が禁止されている。
なのでチェックポイント(検閲所)の前までしか転移出来ない。
そこからはめんどうな事に車移動となる。
さぁ早速転移しようか。
マグマや岩石だらけの景色から、目の前には大きな門が現れた。
門は白灰色の魔石を組み上げて造られ、表面には古い守護紋が淡く光っている。
それは不届き者を弾くための役割がある。
この門を通るには貴族でも、本人確認などの手続きしないといけない。
その門の前にはけっこうな数の人が並んでいる。
VIP用の通路があるので、その列に並ばなくていいのは助かっている。
けど、その手続きかっとばしいたなぁ〜。
そう思うが、この国の貴族としてルールを破る訳にはいかない。
VIP用の通路を通るがここは逆に静かすぎる。
外はあんなに喧騒に包まれているのに。
「こちらに書類提出をお願いします」
VIP専用の職員が淡々と語る。
その職員は派手さはないが、シワ一つないキレイなスーツを着ている。
「もぉ、君はいつも変わらないね」
初めて見た時からまったく変わっていない職員さんを見ながら書類を出す。
今後はあっちの領分だから、これからは待機時間となる。
この待たされる時間が本当に面倒だ。
そんなただの待機中にいきなり職員が帰ってきた。
何か書類に不備があったのかと思ったが、どうやら違うようだ。
「現在上から特例を受けておりまして、書類は軽いチェックだけで良いとのことです。ですので、もうお通りいただいて大丈夫です」
「えっ…何があったんだい?普段あんなに融通の利かない君たちがそんな事を言うなんて」
自分の質問に対して職員は表情を変えず、端的に答えた。
「それは王子様から勅命がありまして。アリーネス公爵家の方を出来るだけ早くお通しするように、と言われております」
そういうことか。なるほど。
エリオット様が事前に手回しをしてくれていたようだ。
すごくありがたい。これで素早く王都に入れる。
「分かった、ありがとう。君も頑張りたまえよ」
そう言うと、職員は深々と頭を下げた。
本当に頑固さが無ければ良く出来た人だ。
こっからはリムジンでの移動となる。
目立ってウザいのでこんなの使いたくないのだが、大貴族としてのメンツがあるので仕方なく呼んである。
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