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異能使いの魔王は学園を好き放題に蹂躙する  作者: 誠くん2F29
帰省編

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第95話 とある男の半生

 俺の人生はどこかおかしかった。


 小さい頃は異能学園に憧れて必死に努力をした。

 しかし、それは無駄に終わった。純粋に才能が無かった。

 異能は努力で伸びるが限界がある。

 自分にはその限界が早く来た。

 そして周りに置いていかれ、孤立した。


 結局異能学園には入学出来なかった。

 そこで俺は復讐を決意した。


 脈絡がおかしいと思うかもしれないが、本当のことだ。

 思考の飛躍がすごいと自分でも思う。


 そうだよ。これはただの八つ当たりだ。

 そんな事自分が一番分かっている。

 ただ今はこの気持ちをぶつけたかった。


 その復讐先を探していると、とある人物と出会った。

 そいつはカイザルと名乗っていた。

 姿は影のように見えて、はっきり捉えられなかった。


 しかし、尋常ならざる圧を感じた。

 比較対象として挙げるとするならば、こんなに圧を感じたのはアリーネス公爵家の長男を初めてお目にした時ぐらいだろうか。

 その時は確か、長男が3歳になった記念として、自治領の民へお披露目する。

 という名目でお目にかかって以来だ。



 そのカイザルという男はこう言った。


「お前も何かが憎いんだろう?だが、復讐を果たすための力が無い」


 この時は確かにそうだと思った。

 何をするにしても力が足りない。


「そんなお前に提案がある。それは、力を授ける代わりに都市サンディーゴを統治下に置け。それから適当に犯罪者を世に送り出せ。お前はそれだけで良い」


 ものすごい簡潔な命令だが、その意図がまったく分からない。

 しかし、拒否出来るような状態ではなかった。

 だからその提案を受け、新たな力を得てサンディーゴに向かった。


 全能感とまではいかないが、今の自分なら悪名高いサンディーゴで無双出来ると思った。

 実際サンディーゴにあった犯罪組織や浮浪者は俺の敵では無かった。


 それから犯罪組織のデータベースを奪い、各街に適材適所で割り振っていった。


 あの男との約束はそろそろ果たせたはずだ。

 これでこんな暑い場所から離れられるーーと、思っていた。

 突如、外から破裂音に似た爆音が響いた。


 驚いて外に出てみると、人間が大量に倒れていた。

 何事かと思っていたら、倒れていた人間の後ろから人が出てきた。



 その子は藍色がかった長髪の少女で、制服を着ている。

 光を受けるとほのかに藍色がきらめき、陰に入ると深い紺へと沈むその髪は、肩口で静かに揺れていた。


 その子の表情は穏やかで、逆に不気味だった。

 単純に背景とのギャップが大きすぎた。


 そこで視線を再び制服に戻すと、どうにも見覚えがあった。

 あれはスターダスト異能学園の制服だ。

 最初は憧れていた。しかし、すぐに諦めた。

 なぜならレベルが違いすぎた。


 その憧れの制服を着た子供がこの惨状を作り上げた。

 もしかしたら、今なら勝てるかもしれない。

 そんな淡い期待はすぐに打ち砕かれたのだが。


 俺は先行して異能を発動した。

 少女の背後の影を操る。

 それを凝縮し、針状にして突き立てた。

 完全な不意打ちだったはずなのに、芳しい効果は得られなかった。

 なんと避けられるどころか、躱して影を粉砕してきたのだ。

 自分でも何を言っているか分からない。

 だが、本当に粉砕されていたのだ。


 驚いている暇もなく、さらなる手を考える。

 しかし、気がつけば視界に少女はいなかった。

 急いで振り向くと、辺りにいたごろつき達がさらに倒れていた。

 全神経を集中させていたのに、まったく知覚出来なかった。


「(…あれはもしかして…)」


 ここで一つ重要で最悪な事柄に気が付いた。

 それは胸にあるエンブレムだ。

 そのエンブレムの中心に王冠、その下には小さな剣・獣・翼・紋章があしらわれている。

 これをつけることが許されるのは、スターダスト異能学園の序列上位7人のみ。

 憧れるどころか、畏怖される存在。


「…セブンキングスだと…」


 この日、俺は死を悟った。そして地獄が始まった。

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