第95話 とある男の半生
俺の人生はどこかおかしかった。
小さい頃は異能学園に憧れて必死に努力をした。
しかし、それは無駄に終わった。純粋に才能が無かった。
異能は努力で伸びるが限界がある。
自分にはその限界が早く来た。
そして周りに置いていかれ、孤立した。
結局異能学園には入学出来なかった。
そこで俺は復讐を決意した。
脈絡がおかしいと思うかもしれないが、本当のことだ。
思考の飛躍がすごいと自分でも思う。
そうだよ。これはただの八つ当たりだ。
そんな事自分が一番分かっている。
ただ今はこの気持ちをぶつけたかった。
その復讐先を探していると、とある人物と出会った。
そいつはカイザルと名乗っていた。
姿は影のように見えて、はっきり捉えられなかった。
しかし、尋常ならざる圧を感じた。
比較対象として挙げるとするならば、こんなに圧を感じたのはアリーネス公爵家の長男を初めてお目にした時ぐらいだろうか。
その時は確か、長男が3歳になった記念として、自治領の民へお披露目する。
という名目でお目にかかって以来だ。
そのカイザルという男はこう言った。
「お前も何かが憎いんだろう?だが、復讐を果たすための力が無い」
この時は確かにそうだと思った。
何をするにしても力が足りない。
「そんなお前に提案がある。それは、力を授ける代わりに都市サンディーゴを統治下に置け。それから適当に犯罪者を世に送り出せ。お前はそれだけで良い」
ものすごい簡潔な命令だが、その意図がまったく分からない。
しかし、拒否出来るような状態ではなかった。
だからその提案を受け、新たな力を得てサンディーゴに向かった。
全能感とまではいかないが、今の自分なら悪名高いサンディーゴで無双出来ると思った。
実際サンディーゴにあった犯罪組織や浮浪者は俺の敵では無かった。
それから犯罪組織のデータベースを奪い、各街に適材適所で割り振っていった。
あの男との約束はそろそろ果たせたはずだ。
これでこんな暑い場所から離れられるーーと、思っていた。
突如、外から破裂音に似た爆音が響いた。
驚いて外に出てみると、人間が大量に倒れていた。
何事かと思っていたら、倒れていた人間の後ろから人が出てきた。
その子は藍色がかった長髪の少女で、制服を着ている。
光を受けるとほのかに藍色がきらめき、陰に入ると深い紺へと沈むその髪は、肩口で静かに揺れていた。
その子の表情は穏やかで、逆に不気味だった。
単純に背景とのギャップが大きすぎた。
そこで視線を再び制服に戻すと、どうにも見覚えがあった。
あれはスターダスト異能学園の制服だ。
最初は憧れていた。しかし、すぐに諦めた。
なぜならレベルが違いすぎた。
その憧れの制服を着た子供がこの惨状を作り上げた。
もしかしたら、今なら勝てるかもしれない。
そんな淡い期待はすぐに打ち砕かれたのだが。
俺は先行して異能を発動した。
少女の背後の影を操る。
それを凝縮し、針状にして突き立てた。
完全な不意打ちだったはずなのに、芳しい効果は得られなかった。
なんと避けられるどころか、躱して影を粉砕してきたのだ。
自分でも何を言っているか分からない。
だが、本当に粉砕されていたのだ。
驚いている暇もなく、さらなる手を考える。
しかし、気がつけば視界に少女はいなかった。
急いで振り向くと、辺りにいたごろつき達がさらに倒れていた。
全神経を集中させていたのに、まったく知覚出来なかった。
「(…あれはもしかして…)」
ここで一つ重要で最悪な事柄に気が付いた。
それは胸にあるエンブレムだ。
そのエンブレムの中心に王冠、その下には小さな剣・獣・翼・紋章があしらわれている。
これをつけることが許されるのは、スターダスト異能学園の序列上位7人のみ。
憧れるどころか、畏怖される存在。
「…セブンキングスだと…」
この日、俺は死を悟った。そして地獄が始まった。
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