第90話 異常性の発露
「なぜその事を知っているんだい?ルナにはそんな能力は無かっただろう」
盗聴器などは魔法で調べた所、部屋には無かった。
俺の知らないところで覚醒でもしたのかな?
「それは愛の力です!……と、言えれば良かったのですが、そうではありません。実はメア先輩のカバンに盗聴器を仕込まさせて頂きました。こうすればヘルト様に気付かれずに、お話の内容を聞けるかな〜と思いまして」
そういうことだったのか。
昨日探知魔法を使った時には、メアは買い出しに行ってくれていた。
だから、探知魔法が反応しなかったのは………。
ん、いや待てよ。
それでは説明がつかない。
「メアは昨日バックを持って買い出しに行っていたのに、返信があんなに早かったんだ?」
そう聞くと、ルナはポカンとした顔をした。
「昨日ですか?それは偶然ですね。メア先輩は寮の中にいなかったようですし、私が知る術はありません。ですから昨日は奇跡だと思いました!」
あまりの勢いで膝の上に乗っていたお弁当が落ちそうだ。
それぐらい、言葉の最後につれて勢いが増していった。
「偶然ねぇ……。まぁ、ルナのことを信じようじゃないか」
「ありがとうございます。それと誠に差し出がましいのですが、私もヘルト様にご同行したいのです。せっかくこうして自由の身になれたのですから、ヘルト様のお役に立ちたいのです」
まっすぐとこちらの瞳を見つめてくる。
ここまでど直球に頼まれると断りづらい。
けれど、メアも付いてくるから、ルナ一人が増えたとしても変わらないか。
「良いよついてきて。でも、その代わりに喧嘩はだめだからね」
「はい、分かっています」
今後のためにも、ヘルト様の両親にご挨拶をしなければいけません。
そんな状態で喧嘩など起こる訳はないのだから。
自然を感じながらお弁当を食べた。
ルナは食事中終始、笑顔を絶やさなかった。
そこまで嬉しいものかと内心思ったが、向こうでの手駒が増えるのは良いことだ。
これでとれる作戦の幅が広がる。
あっちの情勢は知らないけど、俺の勘だとだいぶ荒れてそうだ。
となると動かせる人は多ければ多いほど良い。
夏休みという学生が最も楽しみな事柄を前にして、学園の雰囲気は非常に緩んでいた。
そんな中、一際異彩を放つ場所がある。
それはとある寮の1室であった。
ここだけは外の世界と隔絶されていた。
そこでは早速この学園の序列第1位である妹に通話をかけようとしている男がいた。
今から行うのは妹に、帰省をする時に同級生と後輩が1人ずつついてくるという報告をするだけだ。
なのに、ここは魔境となっていた。
「対策はこれで十分なはずだ。よし、通話をかけよう」
通話の着信音は特異なこの空間では響かない。
ヘルトの周りで吸収されて終わりだ。
そして、奏は少しの時間を置いて通話に出た。
「お兄様から連絡をいただけるとは珍しいですね。何かご要件があるのですか?…私は何時でもお待ちしていたのに…」
スマホ越しからは少し拗ねているような声色に聞こえる。
「あまり連絡しなくてごめんな。それで今日連絡したのは帰省の件で伝えたいことがあってね」
「帰省に関することで何かあったのですか?」
お兄様は家がお嫌になられたのだろうか?
だとしたら、私もこの学園に残りましょうか。
お兄様のいない家など、ただ空虚な箱である。
そんな場所に行く価値などない。
「それが帰省に後2人ついてくることになったんだ。だから、あまり虐めないでおくれよ」
ヘルトには謎の緊張が走るが、それは解消されることとなる。
「ご要件はそれだけですか?なら問題はありません。重要なのはお兄様がいることですから」
思ったより軽く承諾してくれた。
もしかしたら前の弟子の時のように、暴れだすかもしれないと思っていた。
しかし、杞憂に終わってくれたようだ。
「そうか、なら安心したよ。少し話は変わるけど、奏にはルナがどう見える?」
奏はスマホ越しにコクンと首を傾げた。
そして、いつも通りの可愛らしい声で言う。
「雑味が強そうだから、恐らく微妙ですかね」
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