第85話 平和にテストは終わる
「とうとう最下層である5層に到り着いたね」
涼しい顔をして言ってのける日向。
さすがセブンキングスの第4位。
「うん、そうね。ここまでは日向のおかげでかなり楽ができたわ」
2層のボスは道中で出てきた魔物の巨大版だった。
あの速度+巨体で突撃されると思うとゾッとした。
しかし、デカくなったせいで速度が大幅に落ち、ただのサンドバックに成り下がっていた。
これなら道中の魔物の方が断然手ごわかった。
それからの3層と4層は日向に任せっきりになっていた。
否、介入する余地が無いほど圧倒的だっただけだ。
この3〜40分の間でしたことといえば、よく分からない落とし物を拾ったぐらいだ。
それは知らないロゴの入ったバッチだった。
このロゴはどこかで見た気もするが、思い出せはしない。
日向は階段を降りてからの表情とは少し違い、怪訝なものに変わった。
「(んっ?これは…)」
隠されていないから分かるけど、ヘルトとダリアさんの魔力の残滓を感じる…。
あの揺れの原因がはっきりしたのは良かった。
しかも、魔物の気配も一切しない。
おそらく、ヘルトとダリアが風紀委員の中で話題になっていたテロ組織と戦っていたのだろう。
これで辻褄は合う。
「こっからはもうウイニングランだよ。さっきの揺れのせいで魔物が全滅したみたい」
「えぇ〜!これから敵が手強くなって、私の出番が来る所じゃないの?」
メアはひどく驚いた様子だ。
それと同時に肩を落としてがっかりしている。
確かにメアちゃんには不完全燃焼かもしれない。
「まぁまぁ、どうせメアちゃんならこれぐらいのダンジョンなら余裕だよ。もし戦い足りないならヘルトに模擬戦でも頼んでみたら?」
そう言うと、メアは顔が青ざめた。
そういえば第3運動場でヘルトと戦っていたね。
それならその反応になるのも頷ける。
私もヘルトと戦いたくないし…。
「ううん、遠慮しておく」
「じゃあ、早くこんなしみったれた場所から脱出しよう」
メアも頷いて私の後ろに続く。
出口の方向へ走っていくと、広い場所に出た。
今までのボス部屋よりも明らかに広いこの部屋には、最後の砦となるべく強大な魔物が設置されているはずだった。
しかし、事前に察知したように何も感じない。
「帰ったら何しようかな〜。甘い物が食べたいな〜」
日向が軽快な足取りで出口へ向けて進み出す。
それがフラグとなってしまった。
先程までは何も無かったのにいきなり空気が重くなった。
それはこの階層の主が帰ってきた証拠であった。
"ヴオオオォォ!!"
ドラゴンの鳴き声がこの階層で響く。
いきなりのボスの出現に、日向も自分も呆気に取られた。
「(いきなりあんなのが現れた?いや…空間そのものが現れたみたい。これは空間ごと断たれていたのが戻ったということ?)」
日向は顎に手を当てたまま、天井を見据えた。
それはあまりにもドラゴンの目の前では無謀だった。
ドラゴンは鋭い爪を日向に向けて突き立てた。
それに日向は反応しなかった。
未だ思考の海に沈んでいる。
「(これは私が防がないと!)」
日向の前に出て爪を弾く。
かなり重いが、踏ん張ればなんとかなる。
ひとまず日向との距離をあけるために、異能で作った炎の爆発力も加算させて押し出す。
私がバチバチに戦っている間も日向は固まっていた。
「(これはもしかしたらダリアさんの仕業なの?空間を断つことが出来て、それを戻せるのはダリアさんしかいないはず)」
おそらくボスが邪魔になったから空間ごと切り離して、用が済んだからボスをこの場所に戻したんだろう。
それもご丁寧に、人が近づくと戻るように設定されてもあるし。
あまりにも細かい芸当だ。
「考え込んでいる暇は無いよ日向!」
声をかけられて前を向くと、メアが炎を纏わせて立っている。
私の代わりに戦ってくれてるっぽい?
これは私も動かないとセブンキングスの名折れだ。
「メアちゃんばかりに働かせる訳にはいけないねぇ〜。バトルは最後だし、私ちょっと張り切っちゃおうかな!」
【契約の呪縛】
決して人には理解できない文字が宙に浮かび上がる。
それは意思を持ってドラゴンの元へ飛んでいき、縛り上げた。
ドラゴンは激しい唸り声をあげている。
しかし、それは一瞬で止んでしまった。
結果的にドラゴンの抵抗虚しく、跡形なく消えていった。
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