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異能使いの魔王は学園を好き放題に蹂躙する  作者: 誠くん2F29
黒き福音編

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第82話 ボスのエゴ

「佐藤渡…いったい誰のことを言っているんだ?私の名はドミナスだ」


 薄々…いや、ほとんどこちらの素性が割れていると思っていたが、やはりバレていたようだ。

 無駄だと分かっていても、一縷の望みに賭けて白を切る。


「今までよく隠していたと思うけど、細かい箇所が杜撰だったな。例えば魔力量だ。お前の魔力量で考えると、異能がサポート特化にしては弱すぎな所だったりな。高位の魔法をある程度使えてもおかしくないのにな。最初は違和感程度だったが、直近で動きすぎたな」


「そうか、そうか…」


 いつかはバレると思っていたが、いやはやこんなに早いとは。

 やっぱいコイツには敵わないんだな。


 最後の手段として自爆特攻があるが、相打ちを狙おうにも良い作戦が思い浮かばない。

 完全に詰みの状態だ。


「そろそろ、その仮面をはずしてみたらどうだ?息苦しいだろ?」


 もちろんこの仮面のことも気付れていたようだ。


 この仮面は1人で暴れていた頃に、偶然見つけたものだ。


 この仮面の効果は凄まじく、相手視線からすると、至って普通のありふれた顔に見せることができるというものだ。


 だから、どんな国に行っても、不自然に見られないという利点がある。

  これは各国の要職や実力者は騙せたが、ヘルトには無駄だったようだ。


「あぁ、もう降参だ」


 そう言ってドミナスは仮面を掴み、取った。

  普通の人からすると、本物の顔が取れているように見えるだろう。


「やあヘルト。さっきは随分と派手にやってくれたな〜。まぁ、そんなことはどうでもいい。ここにいない他の幹部はどこへやった?」


 ずっと気になっていた事だった。

 ここには幹部総勢9人中の4人しかいない。

 超越転移で呼び出した時は、切迫した状態だった。

 その時は彼、彼女らのことについて話し合っている時間はなかった。

 それは他の面々も分かっていたようで、誰も触れなかった。


 しかし、負けが確定した今は、それを気にしないといけなくなってきた。


「別に何もしてないさ。ただ、俺の前に立つ資格がなかった、それだけのこと」


 淡々と吐き捨てるように言うヘルト。

 心の底から思っていることが窺える。


 同胞への扱いに不満があるが、敗者には何の権利もない。

 ただ受け入れるのみ…

 なんて素直な性格だったらどれほど良かったことか。

 

 密かに待機させていた超越転移を発動する。


 未だに拘束されているハゲや、倒れているアスパーも範囲に指定する。


 これで目の前のコイツらだけでも……。


「それが最後の足掻きかい?なら、存分に付き合ってあげようか」



 当然介入してくるヘルトだが、最後に力を振り絞る。

 異能でのバフがかかっている分、自分の方が有利なはずだ。


「はぁぁぁ!」


 魔力同士が激しく干渉しあう。

 空間を転移させようとする力と、それを押さえつける力が


 脳が焼けるように痛い。

 さらに全身が鉛のように重く、呼吸をするたび胸の奥が悲鳴をあげる。


 自身の全力と、大きなアドバンテージがあってもなお、勝てるピジョンが浮かばない。


 満身創痍で限界な自分と、余力を十分残しているヘルトとは、とても対照的だ。


「ボス、あなただけなら逃げられるかも知れません!どうか我々など置いてお一人だけでもお逃げください!」


「そうですわ。私たちなど気にしないでくださいまし」


 ブルーノの叫びにリリアンも同調する。

 しかも、カル坊まで首を大きく縦に振っている。


「(お前ら……)」


 同胞たちのおかげで、荒れていた全身がマシになった気がした。

 しかし、ボスが部下を置いて逃げるなど、あまりにもダサいだろう。

 厚意を無下にするようで悪いが、ここはエゴを押し通させてもらう。


 さらに魔力を込める。

 自分の魔力だけでは全く足りないから、持ち物の中で魔力が含まれている物を分解し、魔力に変換する。


 これで、正真正銘全てを賭していることになる。


「最後にもう一勝負と行こうぜ!」


 この時の渡の顔は、彼の人生至上一番輝いていた。

 それは黒き福音の面々から見ると、ヘルトの瞳の色と遜色ないほどの輝きであった。

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