第77話 イタズラ好きの日向
次々に体に衝撃が走っていく。
ダメージ的には少ないが、無視できないものだ。
速さのあまりよく見えないので、剣を適当に振ることしかできない。
「(この速度は集中しないと見切れないのに、集中する暇を与えてくれない…)」
逆にむしゃくしゃしたきた。
もう斬ることは忘れて、いっそのこと燃やしてしまおうか。
こうやって考えている間にも、魔物が突っ込んでくる。
「あぁ…もう!しゃらくさいわね」
このストレスに耐えきれなくなってメアは、異能で辺りを燃やした。
すると、焦げ臭い匂いとともに、攻撃の雨は止んだ。
防御はそこまでないようで安心した。
ステータスを速度に全振りしているのだろう。
となると、脳死で異能ブッパしていればいいのでは?
ここには日向しかいないから、その択もありな気がしてきた。
「メアちゃん、それじゃ駄目だよ…。せっかく良い動く的なんだから、練習に使わないと。あれだけ小さくて速い魔物なんて、剣技を高めるには絶好の機会でしょ〜」
「そ、そうかもだけど…」
魔物は剣で対応が絶対に出来ないものではない。
しかし、集中力と体力をかなり消費してしまう。
それでもこれを乗り切れば、自分の実力がワンランク上がるかも?
そんな予感がしてくる。
「…まぁ、そうね。私もそう思うわ」
ズルするのは諦めて、真っ向勝負にしましょうか。
グリップを強く握る。
最初は不意打ちのように食らってしまったが、もう手の内は分かった。
大きく息を吐き、呼吸を整える。
奥にはまた廃物の気配がする。
おそらくこちらの動行を何っているのだろう。
一歩踏みだすと、突撃してくることが容易に想像できる。
目に魔力をこめて、さらに動体視力をあげる。
「(ここまでしたら絶対に斬れる) 」
自信満々に一歩踏みこむ。
すると、鳥の魔物の姿をはっきりと捉えられた。
その姿は全身は薄い青に染められていて、尖ったくちばし持っている。
そのくちばしをとがらせて、一本の矢のようにして実貫してきているようだ。
普通に斬ろうとすると、固いくちばしに当たって、はじかれる可能性がある。
となると、胴が弱点のはずだ。
「うおりゃ〜!」
剣の切っ先は横ではなく、縦に構える。
そして、すばやく振りあげて、加速度も加算させて振り下ろす。
すると、鳥の魔物は簡単に消えていった。
その後も続々とやってくる鳥どもを見据える。
要領はつかめた。
これからは作業的に行えそうだ。
バッサバッサと鳥の魔物が倒されていく。
その光景はまるで、銃弾を剣のみで斬り伏せているようにも見えるかもしれない。
「(良い対応力だね〜。対応力を鍛えるには数をこなすしかないけど、それが極まってるね。ちょっとイタズラしてみようかな)」
メアが大量の鳥の魔物を捌いている後ろで、楽しげに笑った。
そして、メアに気づかれように隠蔽して、強化魔法を鳥の魔物に付与する。
これで一筋縄ではいかなくなるはずだ。
これにも臨機応変に対応できるかな〜?
鳥の魔物の群れを3分間は切っているのに、未だに減っている気配がない…。
さすがに数は減っているだろうが、気が滅入りそうだ。
「(んっ…?なんか気のせいかもしれないが、動きが速くなってない?)」
全身へと巡らせている魔力を増やし、速度に合わせる。
一振り一振りの動きをコンパクトにして、無駄を削ぎ落とす。
こうすれば、消費体力と回復する体力がある程度釣り合いがとれる。
これで長時間戦えるようになったが、速くこのダンジョンを踏破するには時間が足りない。
となると、この場で鳥畜生を効果的に倒すには、あの技が最適だろう。
日向もここまでやれば納得してくれるだろうから、惜しみなく使う。
実戦で成功するかは分からないが、今のコンディションだと成功する気しかしない!
【連結爆破】
剣に纏わせる炎の量は、いつもより少ないがそれで良い。
刃の切っ先が魔物に当たった瞬間激しく燃え上がり、隣接している鳥にも燃え移る。
それを繰り返し、やがて全てが異能に包まれた。
そして、辺り一帯に存在していた魔物の気配は、完全に消滅した。
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