第72話 魔物の悲惨な末路
日向は辺りをぴょんぴょんとしながら見渡す。
軽快なステップなので、非常に楽しそうである。
「君がいたからヘルトもいると思ったのに。ざ〜んねん」
あまりにもノリが軽いので、冗談にも聞こえる。
しかし、同じセブンキングスなら知り合いだろうし、本当に残念がっているかもしれない。
いや、今はそれよりもこの状態を聞く方が大事だ。
正直状況がイマイチ理解できていない。
目の前の人ならおそらく、私の聞きたいことを知っているだろう。
「あの…変な質問だと思うんだけど、何でここに一緒のタイミングで入ったヘルトがいないの?」
「ん、それはね、このダンジョンは入った瞬間に転移させられるんだよ。けど、ヘルトならその後でさらに転移出来るでしょ。だから、探してたんだけど〜」
転移させられたからこの場にいなかったのか。
冷静に考えてみると、日向以外に周りに人の気配はない。
ということは、入り口の先はランダムであると考えた方が自然だろう。
「ヘルトに教えてもらってないんだ。本当そういう奴よねヘルトは」
ヘルトのことを随分理解しているようだ。
ちょっと悔しい…。
「そんなことより先に進もうよ、メアちゃん。今はテスト中だからね〜」
「そうですね…」
別のクラスなのに、何で私の名前を知っているんだろう。
ヘルトから聞いたのかな?
新たに謎がでてきたが、最近ではよくあることなので、そのまま暗い道を進んでいく。
すると、遠くからよく分からない動物?の波動を感じる。
自分は探知魔法が使えないので正確性はないが、肌感でわかる。
ここでは動物ではなく魔物と言った方が適当だろうか。
「この道の奥にいる魔物はどんなものか分かる?」
魔物と実際に戦ったことはあるが、このダンジョンで出現する魔物の種類や強さはまったく分からない。
となると、先人の知恵を借りるしかない。
「狼系の魔物っぽいね〜。まぁ、こんな浅い所にでてくる奴らだからゴミだよ」
「やっぱりそのセオリーは健在なのね」
セオリー通りで敵は強くないようだ。
こうなれば好きに暴れられる。
これから使える魔力を考えて戦わないといけない。
「おっ、戦う気満々だね〜。けど、力は温存しておかないと。ここは私に任せてよ、これでもセブンキングスなんだからね」
胸を張って答える日向。
そのせいで、はち切れんばかりの胸が強調されて、少しウザい。
あれぐらいあれば私も幸せだったのに。
まったく関係のないことに思考が包まれた。
「そう言ってくれるなら…分かったわ!」
「うんうん、素直でよろしい」
この子はヘルトと第3運動場で戦ってたよね。
しかも、わざわざ権能解放まで使ってあげていた。
ということは、そうとう可愛がられているのでは?
まぁ、この子にそんな価値があるとは思えないけどね。
本当ヘルトって変わり者。
メアちゃんとヘルトの関係性について考えていると、目視できる範囲にまで魔物がやって来た。
目測で体長1.5mぐらいあるだろう。
深い所にいる魔物に比べたら、まだまだ子供だ。
こんなのは一瞬で消さないとね!
魔力を軽く練って、魔物にぶつけた。
ーーすると、魔物は体内から爆発した。
それはまるで、風船に空気を入れすぎた時のように、内部から爆発した。
「えっ、魔物が勝手に爆発した?」
その異様な光景を目の当たりにして、困惑を極めるメア。
日向の異能なのは分かるが、どのような経緯で爆発したのかが不明だ。
「隠す必要もないから教えてあげる〜。私の異能は他人と契約を交わすと、絶対にそれを遵守させれるの。さらに、対象に私の魔力を纏わせると、強制的に契約の内容を決められるんだ。だから、会話の出来ない相手でも契約できるの」
「つまり、その契約を反故にすると、ああやって爆発するってことなのね」
異能については大まか理解できたが、随分と凶悪な異能だ。
裏切りなどを防止するためにも使えるし、あの魔物のように無理やり契約を結んで倒す事もできるとは、汎用性が途轍もなく高い異能ではないか?
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