第54話 断絶の女王の意外な一面
俺たちはセブンキングスなだけあって、知名度はやたら高い。
それが島にずっと住んでいる人や、同じ学園の人なら分かるが、観光客の人にも知れ渡っているので、不思議なものである。
たかが、セブンキングスなんて、単独で複数の国家と全面戦争をしたら、余裕で勝てる程度の強さしかもっていないただの人間である。
(例外として、うちの妹は特殊すぎて一晩もあれば、人類を全滅させるぐらいはできるだろうけど)
こんな俺らを持ち上げる海外メディアでもいるのだろうか?
「ボサッとしてないで、このお店に入るわよ」
「ん」
ここはダリア行きつけの高級ファッションブランドである「エテルナ・ヴォーグ」
永遠の流行と名付けられたお店に2人で入った。
内装は大理石の床で一歩ごとに冷ややかな光を反射し、天井から吊るされたシャンデリアが淡い黄金の輝きを落としていた。
壁際には最新のコレクションが一着ずつ距離を置いて並び、布地の質感を際立たせる柔らかなスポットライトがあてられている。
「ようこそお越しくださいました」
その一言には、余計な飾りも媚びもない。
しかし、気品はまったく失われない。
そんな印象を受ける。
「どれにしようかしら」
ダリアは通い慣れているので、まるで自分の家かのように振る舞っている。
それはダリアも貴族の出なのもあって、許されている側面もある。
「(暇なんだよな〜こうなると)」
このゾーンに入ってしまうと、ダリアは誰にも手が付けられない。
なので、自分の役目がくるまでは待機である。
その役目を俺に担わせるのはやめて欲しいのだが。
ダリアは洋服やアクセサリなどを一通り物色した後、俺のところにやって来た。
「これとこれ、どっちが良いと思う?」
差し出されたのは純白のワンピースと、深紅のドレスだった。
対照的な2つだが、ダリアは自分が似合う服を分かって見せてきてるだろう。
だって、ダリアの雰囲気的に真っ白なんて似合わないだろう。
しかも、白なんて着たら血がついて、赤に変色してしまうだろうから。
しかし、ここでドレスの方を勧めるのは面白くない。
だから敢えて、純白のワンピースを選ぶ。
「俺はワンピースの方が好きだな」
「そ、そうなのね…分かった。これ買うわ」
ヘルトなら赤の方が良いって言ってくれると思っていた。少し意外だ…。
もしかしたら好みが変わったとか?
この前似合ってると言ってくれた、今着てる黒いブラウスも好きじゃなくなったの?
ダリアはイヤリングと、俺が選んだワンピースを手にレジへ行った。
スマホで時間を確認してみると、もう12時を過ぎていた。
「次はどこに行こうかしら」
「ダリア、2時間以上も悩んでいたよ。もうそろそろレストランの予約時間が迫ってるから、買い物よりそっちに行くよ」
「それじゃあ、エスコートを頼めるのかしら?」
ダリアは挑発的な笑みを浮かべて、スカートの両脇を丁寧に掴んで、立派なカーテンシーをやってみせた。
こっちにも相応の対応をしろと、ダリアは言いたいのたろう。
しかし、単純に面倒なのと、堅苦しい儀礼的なのは苦手なので、ダリアを無視して回れ右でレストランに向かった。
「はぁ!? 私が頼んでいるんだから応えなさいよ!」
ムスッとした顔でそう言った。
本人はヘルトに軽く怒っているだけなのに、周りにいる人の表情が固まった。
しかも、小さい子の中には泣き出している子もいる。
しかし、ダリアは一切気にしない。
なぜなら、彼女はヘルトのことしか見えていないからだ。
結局ヘルトが先に行ってしまったので、少し小走りで追いかける。
「もう、ヘルトじゃなかったら殺すところだったからね」
随分軽く言い放った。
ダリアでなければ100%ギャグだろうが、言ってる本人が本人なので、おそらく本気だろう。
「あ〜怖い怖い」
※ダリアはサボる気満々だったので、制服を着てきていません。
そんな状態で学園に行っても、セブンキングスなら何も言われません。
(けどダリアとすれ違った校長先生は、不満に思っている模様)
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