第47話 輝きに照らされて
この前は飛行機が飛ばなくて、すごすごと寮に帰ることになってしまった。
それから3日が過ぎた。
スターダスト異能学園の始業式まで、あと3日になった今でも異能省から連絡が来ない。
このままではもしかしたら、始業式に遅れてしまうかもしれない。
そうなると、変なタイミングで転校することになってしまうと、さすがに少し気まずい。
なので上に対しての不満が溜まっていた。
暇なせいで貧乏揺すりをしていると、スマホに通知が入った。
どうやら飛行機の予約が取れなかったようである。
私は頭を押さえることしか出来なかった。
これで始業式に間に合わないことが確定してしまった。
このシーズンはスターダスト異能学園行きの便は常にほぼ埋まっている。
なぜなら、スターダスト異能学園の入学式があるからである。
入学式の前日から数日間島はお祭り状態になっていて、この国以外からも観光客が集まって活気だっている。
そのせいでこのシーズンは予約が出来ないのだが、異能省の権力を使って席を無理やり取ってもらっていたのだが、さすがに2回目となると難しかったようだ。
実は私もそのお祭りを少しでも体験してみたいなと、思っていてさらに落ち込む…。
でも、そんなメンタルでいても現実は変わらない。
だから今はまだ9時と寝るには少し早いが、もうふて寝することにした。
結局私がスターダスト異能学園のある島まで行けたのは1ヶ月後だった。
正直どう考えてもおかしいと思う。
お祭りのせいで予約が取りづらいのは分かるが、こんなに遅れるとは思ってなかった。
飛行機から降りて異能学園へ向かうための車をなんと異能省が用意してくれたようで、もう外で待ってくれていたようだ。
予約が取れなかったことへの、お詫びも兼ねているのかもしれない。
しかも車はいわゆるスポーツカーの類の高級車だった。
国の威信がかかっているのか、異様に豪華である。
こんな豪華な車に乗ったのは、以前アメリカのメイカーの序列でNo.1に相応しい実力が備わっていると認められて、表彰される時のお出迎え以来である。
しかも、私が異能省に入るきっかけとなった男…デイヴイット・コリンズさんは随分出世したようで、今では異能大臣となっている。
なので、表彰状を私に渡してくれたのも、大臣であるデイヴイットさんである。
正直に言うと、私より強い人は国内に居るのだが、どのお方も少し高齢で成長できる余地が残されていない状態だが、私はまだ若くその方たちを将来抜くだろうと期待されて序列が1位に格上げされた。
体感は神輿というか宣伝目的のお飾り1位に感じるが、私より強い人に伸びしろが凄いと褒められたことはある。
だから2回目の異能学園でさらに実力を上げたいという気持ちが強くなった。
10数分ほど車に乗っていると、スターダスト異能学園の門が見えてきた。
来るまでで色々あり過ぎて、かなり複雑な心境なのだが、取り敢えず学園の職員室に向かうことにした。
過去を思い出しているとさらに苦しくなる。
心臓の鼓動が、耳の奥で鈍く響いていた。
世界の音が遠ざかっていく。
泣きたくて仕方がないのに涙がまったく出てこない。
出てくるのは怨嗟だけである。
今の状態で寮に帰る気にはなれない…。
ヘルトにこんな姿を見せられない。見せたくない。
そんなことを考えていると、誰も居ない公園に着いていた。
ガラガラな公園の雰囲気と、自分の心境が重なっているように感じる。
公園にベンチなどは無く、しょうがなくブランコに座ることにした。
これからどうしようかと考えていて、無意味にブランコをこいでいた。
今からアメリカに戻ったとしても、ナタリーが回復することはない。
「(ハハハ、私もナタリーの後を追おうかな…。大臣は今後ナタリーを普通の病院に移すと言っていたけど、それでは治る見込みははっきりといってない
…)」
気づけば夕闇が地面を呑み込み、あたりはすっかり夜の気配に染まっていた。
もう自分の中では諦めの思いが強くて、どうなってもいいやと思っていると、暗がりの中から見知った人が這い出てきた。
「おや…、どうしたんだい。そんなに辛気臭い顔をして。まるで君の親友が助からないことが決まったような表情をしているね」
その人物の瞳はこの場を照らすほど輝いていた。
私は眩しすぎて目を閉じてしまった。
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