第44話 悪足掻き
「とりあえず2人とも異能の行使をやめなさい」
周りには一般人も普通にいるので、こんな場所で更に行使されると被害が拡大しかねない。
なので、即刻やめさせないといけなかった。
すると、女性は体に纏っていた風を霧散させてくれたが、大柄な男性は私達にまた炎を圧縮させた球を放出してきた。
先程飛んできた炎より大きく、そして圧縮されているせいで威力も上がっていた。
でも、これぐらいなら私一人でも簡単に処理出来るのだが、先輩が氷の壁を出してくれた。
思いの外大きな音をたてて、壁にぶつかった。
「(えっ、そんなに威力があったの)」
初撃を簡単に相殺出来たので、今の攻撃も正直大したことはないとたかをくくっていたので、完全に予想外だった。
その事を先輩が見抜いてくれてくれて本当に助かった。
そうじゃなきゃ、かなりのダメージを負っていたことだろう。
「先輩、ありがとうごさいます!」
「あんまり相手を舐めちゃだめよ」
氷の壁で防いでもらっていると、視界が閉ざされている状態になってしまう。
攻撃を受けきって、先輩が壁を解除されると男は逃げていってしまった。
こうなると追い掛けてでも捕まえないといけないので、指示を聞いてくれた女性にはこの場で待機していただいて、あの男を先輩と追うために目配せをして魔力を足に集中させた。
相手の姿はもう小さくなっていて、かなり距離を離されてしまった。
なので、見失わないように近くの建物の上に跳び乗って、屋根を蹴った。
先輩の方が異能の使い方が上手なので、移動速度は速いと思っていたが、以外にも私の方が速かった。
そのおかげで目測で2km先ぐらいで、ようやく追いつけた。
「往生際の悪いやつめ!」
異能省から支給された特別な木刀に魔力を込め振るう。
すると、同じ系統の異能のせいなのか、相手の体に纏っている炎を完全に消し去ることは出来なかった。
しかし、吹き飛ばす程度のことは出来たようで、数m先の大木に突っ込んでいた。
相手が大木に少しめりこんでいたが、苦しそうにしながらも這い出てきた。
「痛ってえな~。ガキだからって調子乗ってると潰すぞ」
本人は至って真剣に言っているんだろうが、顔を打った衝撃で鼻血が垂れていて、正直かっこ悪かった。
その言動と状態のコントラストが面白くて、おもわず笑ってしまった。 それに相手は気付いて怒りだした。
しかし、私が時間を稼いでいる間に先輩があの男の後に回っていた。
これで先輩と挟む形になったので、 逃げられる可能性が低くなった。
すると相手もそれに危機を覚えた男は、いきなり私の方に突っ込んできた。
おそらく私の方が先輩より弱いと判断されたのだろう。
逆に私からしてみれば、正直好都合である。
相手の向かってくる速度に合わせて剣を横に振るう。
すると、上に飛んで避けられた。
そうなると先輩の異能の格好の的である。
氷の弾丸をガラ空きの背中に撃ち込んだ。
「ぐわぁぁぁ」
私に目掛けて腕を振り上げていたのに、体勢を崩したせいで腕が宙に浮いている。
すごい無防備な状態である。
こうなったら、そのガラ空きのお腹に木刀を叩き込まないのも逆に失礼というものだろう。
なので左足を大きく下げて、今自分の出せる力を木刀に乗せて斬り結んだ。
すると男は音もなく倒れた。
「おぉ〜。やっぱりメアは太刀筋が本当にきれいだね」
そこまで褒められると嬉しいのだが、私の太刀筋はメアリーの太刀筋を見様見真似で模倣しているだけである。
だから、罪悪感のようなものを感じた。
それから先輩は倒れた男の側に寄り、異能省に連絡をいれて引き取ってもらった。
そして元の場所に待っていただいていた女性の所に急いで戻った。
すると女性の方は被害者と思われる小さい子と、楽しそうに話していた。
※現在「変幻自在なストーカー女は僕の周りに潜んでいる」という作品の連載を始めました。
この作品よりも暗い内容にする予定なので、少しでも興味を持たれた方は、下記のURLから飛んで読んでみてください!
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