第43話 卒業後の仕事
異能学園を卒業した後、私はデイヴイットさんとの契約を延長させた。
だから私はまだ、異能省のお世話になることになった。
私はようやく11歳になった。
まだ学校の初等部に居るはずの年齢だが、私は特例として異能省の訓練官となった。
訓練官とは、異能省の職員になるための準備期間のようなもので、この訓練官を卒業するのと同時に立派な異能省の職員になれるのである。
訓練官は異能の特訓がメインなのだが、その他に警察のようにこの国の異能系の犯罪者を取り締まる仕事もある。
なので、逮捕した相手が凶悪犯や、強いメイカーだと功績として記録されて、正式な職員になれる時期が早くなる。
しかし、あくまで訓練官は名前の通り訓練をすることがメインなので、5年間特訓を続けていると試験が受けられる。
その試験を合格すると、パトロール中の逮捕の人数など関係なく、晴れて異能省の職員として事務作業や実務作業が待っている。
州内のパトロールは月に2回程度行っていて、ローテを組んで皆でやっているらしい。
日々の特訓は異能学園の授業の発展系のようなもので、あまり新鮮味が無かった。
しかし、パトロール活動は刺激が満載だった。
先輩の方々とのパトロールも楽しかった。
それでも中々異能系の犯罪者など出る訳ではないので、ただのボランティアのようになっているがそれでも良かった。
「あそこの公園は私が小さい頃、ずっと通っていたんだ。今の時間帯は子供たちは居ないけど、お爺ちゃんやお婆ちゃんの憩いの場になっているのよ」
先輩は懐かしげに語っていた。
先輩もまだ若いのに、なぜそこまで黄昏ているのかは分からない。
けど、私も少なからずその気持ちは分かる気がする。
私もナタリーと出会うまでは公園の遊具で遊んでいたりが、異能が発現するとそっちの方に注力していたから、公園には行かなくなった。
「まぁ、そんなことは気にせずパトロールを続けましょう」
「はい」
街は平日にも関わらず人で溢れ、活気に満ちている。
日頃の光景とはまったく変わらないが、このような日常に危険が潜んでいる可能性はもちろんありえる。
なのでパトロールの重要性は揺るがないので、先輩の背中を見習おうと再確認した。
そんなことを思っていると、目の前数10m先で煙が立ち昇った。
「俺様に口答えすんじゃねえよ!」
「それはお前が悪いに決まってんだろ。頭沸いてんのか」
「俺様の頭が沸いてるだとぉ、そんなわけねぇだろ!」
煙が立ち昇っている所から言い争っている声が聴こえた。
しかも、両者とも異能を行使している様子である。
これはとうとう私たちの出番だ。
私たちは顔を見合わせ、体に魔力を循環させて走った。
街によって法律は異なるが、この街では特定の施設以外では緊急時や特例を除いて、異能の行使が禁止されている。
なので、異能の行使が確認出来た時点で、処罰の対象となる。
走っている最中に炎の粒が飛んできた。
しかし速度は正直遅く、自分の異能で簡単に相殺出来た。
すると、相手はようやくこちらに気が付いたようである。
「チッ…異能省のやつが来やがった」
「そんなの関係ないでしょ、早くその子に謝って」
どうやら大柄な男性の方が、言い争っている女性の隣に居る子供に何かをしたようだ。
しかし、互いに異能を行使している者は平等に罰さなければならない。
「ちょっとあなた達、異能の行使をしていたでしょ。第28条1項の市街地での異能の不正行使に該当するから、処罰の対象にさせてもらうわよ!」
初めて先輩の真剣な表情を見て、気持ちを切り替えるために頬を軽く叩いた。
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