第35話 GAME OVER
スマホに入っている学園内の地図を確認すると、談話室は 1階の職員室の隣りだった。
並設されてるエレベーター使い1階に下りようと、エレベーター前で待っていると遠くから異様な雰囲気の女性が歩いて来てい た。
「(すごい綺麗な人だけど、多分先輩よね)」
学年毎にネクタイやリボンの色が決められていて、自分のリボンの色とは違うので、上級生か下級生なのは分かる。
しかし、あまりの体の発育の良さや、左腕に風紀委員長のワッペンを付けていたので 3年生であることが確定した。
相手方もこちらに視線を向けてくると、その目は鬼のような恐しい印象を抱せるぐらいには怖かった。
「私、彼女に何かしたかしら?でも、先輩と関わることなんて無かったはずだけど……」
実際は風紀委員長のダリアは メアに怒っていたり、威圧したいわけではなかった。
メアも知る、とある人物に対して静かに怒っているのである。
そんな事を知らないメアは、急いでエレベーターに乗り込み、ものすごい速度で閉めるボタンを押した。
「ふう~、命拾いしたわ」
突然の災害にみまわれたことは忘れることにして、気持ちと切り替えた。
1階に着くと帰る生徒も多いのか少し騒がしかった。
だけど、今のメアからするとその喧しさのおかげで緊張感が和らいだ。
そのまま談話室の前まで歩みを進めた。
すると部屋の前にはその人のボディガードらしき黒服の男が2人、がっしりと待ちかまえていた。
「Please handover the sword you carry at your waist」
「ええ、もちろん良いわよ」
そう言いメアは剣をボディガードに渡した。
「Please don't make any Rudeness.」
メアは頷き、扉に手をかけて開いた。
そして部屋に入ると、目の前には大きいソファが対面するように置かれていて、その間には透明なガラス製の机がある。
その左側のソファに自分を呼びだした張本人が座っていた。
「It's been a while. Minister of Special abilities」
メアは敬礼のようなポーズをとって形式的な挨拶をおこなった。
「メアリー・アウローラよ、ここはスターダスト異能学園なのだから母国語ではなく共通語で話そうじゃないか」
異能大臣と呼ばれた男は髪をオールバックにして、きっちりと纏めており、いかにも出来る人といったイメージを与えていた。
「こちらも時間が余り無くてね単刀直入にいかせてもらうよ」
メアは相手がだらだら話すのが好きじゃないことは分かっていたので、事前に気持ちの整理ができていた。
「はい。もちろん構いません」
ここでアメリカの異能大臣は メアがずっと立ちっぱなしな事に気づいたので、対面のソファに座るように促した。
「失礼します。」
許可をいただけたので、目の前のソファに腰掛けた。
メアが座ったのを確認してから大臣は本題に入った。
「 学園から君の学年交流会での活躍は聞かせてもらったよ。 なんとこの学園の序列16位を倒したそうだね。」
メアは今、褒められているので最悪の事態をまぬがれたと思って内心安緒していると、1番聞きたくない接続詞が耳に入ってきた。
「だけど、それ以外の活躍はあまり芳しくなかったようだね。そのせいか序列は 1200位ぐらいまでしか上がらなかったようだしね。前例として1回の行事で500位以内まで上がった生徒が過去に複数いたのに、元1位の君がここまでとは、正直残念だよ」
先程とは違い冷たさが声に滲んでいて、背筋が凍りそうな感覚に襲われた。
自分の中で嫌な予感が渦巻いて、目に映る景色が朧げになりだしていた。
「これでは君の親友への、資金援助や医療支援も打ち切りになるだろうね」
「どうか再考していただけませんか…」
もう視界は真っ暗で、意識があやふやな状態で言葉を捻り出していた。
もはや自分の意思ではなく、脊髄反射のような感覚だった。
「済まないがそれは出来ない。これは私の省内の会議で多数決によって決まったことだ」
これからのことは記憶に無かった。
大臣との話が終わった後、ふらふらな足取りで談話室から出た。
その危うい足取りのまま、寮へ帰っていくメアの後ろ姿はか細く、消え入りそうだった。
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