第32話 想定外とそれの残した影響
ガブリエルは突如自分の剣に、莫大な魔力を注ぎ込み始めた。
先程までは空は澄みわたっていた。
しかし、その影響で太陽の日差しをいっさい許さない空模様に変化してしまった。
「もう、なんであんなに力が残っているのよ」
何をしでかすか分からない危険な状態だった。
なので、急いでガブリエルの元に向かおうとした。
「《主よ、私の力不足ですみません…》」
ーーしかし、想像を絶する行動をガブリエルは取りだした。
"グサッッ"
自分の胸にその剣を突き立てた。
「は……?」
「どうなってんだよ……?」
予想外の行動にヘルト以外の3人は動きを止めた。
そのせいで、対応が少し遅れてしまった。
その一瞬の間にガブリエルが光に包まれた。
そして、その光は収束しだして弾けた。
この行動をヘルトは薄々勘付いていた。
なのでガブリエルの自決で得た大量の魔力を、自分の魔力で相殺するべく魔法を行使した。
「【炎葬花】」
特別イベントでも行使した魔法だった。
しかし、その花の花弁などは前よりも大きくなっていた。
その花からヘルトの魔力が放たれた。
2つの魔力は拮抗することもなく、ヘルトの魔力が天まで突き抜けた。
そのおかげで陽の光が大地に再び降り注いだ。
最後に残ったものは何も無かった。
ガブリエルは光の粒となって消えていった…。
ガブリエルが完全に消滅したとたん、学園側ではモニターの警告シグナルが解除された。
それに教師陣達は安緒した。
しかし、非常勤のデバッカーが緊急で呼び出されたのに仕事が無くなったのはまた別のお話。
場所は山岳地帯に戻る。
ガブリエルとの決着がついた後、全学年の全エリアに緊急報送が流れた。
"ピーンポーンパーンポーン"
「学年交流会に参加してる全ての生徒に通達です。」
「現在2学年のエリアで原因不明のトラブルが発生しました。 事態の把握のため、脱出用プロトコルを発令いたしました。」
「なので、速やかに避難をお願いします。」
「繰り返し申し上げます... 」
その後も放送は五月蝿いぐらいに続いた。
「想像していたよりもずいぶんと大ごとね」
「あんな大物が突然現れたんだ。学園の意図してないアクシデントだとしたら、 責任問題になるんだからあたり前だろ」
烈があまりにも冷静だったので、メアはギョッとした視線を向けた。
「何だよそんなまじまじと見て、 気持ち悪いから止めろ」
不意打ちで言葉の針を刺されてしまった
「…ごめんなさい…」
メアは自身の非を認めて謝罪をした。
それに満足したのか烈は黙ってこの場から立ち去った。
メアと烈との間で微妙な空気が流れている中、ヘルトと渡は少し離れた場所で話し込んでいた。
「お前が今回の事件の犯人じゃないよな?」
その声には疑問と言っているよりかは、何か確信めいた言い方だった。
それにヘルトは眉一つ動かさず答えた。
「はて、何のことやら?」
「でもそう思ったってことは、何か理由があるのだろう。 それを聞かせておくれよ」
渡はその結論に至った理由を話し始めた。
「まず1つ目はあの怪物が出現する場所へ俺達を誘導した事。2つ目はあの怪物がお前のことを攻撃の標的にしていなかったことだ。」
「戦ってる途中におかしいなと思ったんだ」
これにはヘルトも軽く驚いた。
なぜなら、強敵との戦闘中に周りまで見れる者は少ない。
しかも、渡は対面して戦うには不向きな異能である。
その状態で周囲を俯瞰して見れる渡はやはりブレインに向いていると思った。
ヘルトは口の前に人差し指を出して話した。
「ヒントを一つあげよう。いくら俺でも、そうやすやすと学園のセキュリティは突破出来ない」
少ないヒントを頼りに思考を回転させる。
渡は深く考えるべく、手を顎に添えた。
「2人とも、そんな所でしけてないで早く脱出するわよ!」
しかし、メアの大声で思考が吹き飛ばされてしまった。
渡はいったん考えることは諦めてメアの元へ向かった。
「おい、ヘルトも行くぞ」
「分かっているとも」
3人で脱出ブロトコルを使った。
目を開くと今日何回も見た景色だった。
しかし、以前とは違う所があった。
それはモニター越しでしか姿を見せなかった学園長が壇上に立っていた。
その姿は最初に見せたのんびりとした様子とは異なり、 切迫した様子だった。
これには既に集っていた生徒達にも、雰囲気が波及していった。
もし、「面白い!」「続きが気になる!」「応援してやっても良いんだからね♡」という方は、是非とも評価、ブックマークをお願いします!




