第14話 戦闘狂の弟子
キリカ視点ではメアの雰囲気がガラッと変わり、途端にオーラが大量に飛び出したのを見て"異能解放"を使ったことが明白だったのでキリカは驚きで興奮していた。
「まさか"異能解放"を使えるとはね!」
キリカはそのまま全身に巡らせている魔力の量を増やし、さらに移動速度をあげた状態で消えた。
かのように見えるほどの速さでメアに近づいた。
ーーその直後に身体に衝撃が走った。
「ぐわっ……!?」
「【煉獄閃!】」
キリカは吹き飛ばされた先で、自分の横腹へと視線を落とす。
そこには浅いが確かな切り傷が残っており、自分が切られたことが否応にもわからされた。
しかし、キリカは逆にテンションが上がっていた。
「はぁ…はぁ…良いね!良いね!最高だよ!!」
なぜかキリカは攻撃を受けたにも関わらず、言葉を荒げて興奮しているようだった。
そう彼女は師匠と同じで戦闘狂でバトルジャンキーでもあったのだ。
(あの人さっきまで"キリッ"ってしてたのに変わりすぎじゃない!?)
メアの混乱をよそにキリカは身体の中で大量の魔力を循環させた。
そして彼女は温存していた切り札を切った。
「楽しくなってきたね〜! "異能解放"」
そう彼女が呟いた途端にメアにもまったく引きを取らないほど莫大なオーラが迸っていた。
それを見てメアも口角を吊り上げていた。
「これで同じ条件になったわね」
「そういうことだからぁ!手加減無しでいくよ!」
そう言いながらキリカは全力で地を蹴る。
足元には草が生い茂っていて走りづらい状況だったが、自分の最高速度を出している自信があった。
スピードを剣に乗せて思いっきり振りかぶった。
凄まじい衝撃と共に周りの地面も軽く吹き飛ばされていた。
"カキィィン" 互いの剣が凄まじい音を立ててぶつかりあった
「炎系の異能なのに何で着いてこられるのかなぁ!?」
メアは異能解放と渡のサポートのおかげもあって、パワー面は上回っていたが速度は完全に負けていた。
「(異能解放のおかげで半径1mの状態は分かるけど、距離を開けられると困るわね…)」
「まぁ良いや、じゃあこれならどうかなぁ!【黒雷槍】」
キリカの手のひらに大きい雷の槍が出現し"バチンッ!"という音と共に投擲された。
メアは範囲外からの攻撃を完璧に防ぎきれず、一瞬痙攣し、硬直してしまった。
「分かったぁ!近距離しか反応出来ないんだぁ!」
「(くっ…さすがに遠距離技は1つぐらい持ってるか…)」
メアは自分の弱点がばれてしまって焦っていたが、なぜかキリカは遠距離で攻撃し続ければ有利に戦えるはずなのに、自分の方に近づいてきていた。
「でも、それだとあなたの全力が見られないよねぇ!」
「(この人、目がラリっているわ…)」
キリカの迫力に押され気味だったが相手が全力を見たいと煽ってきたので、それに応えて今日のために練習してきた新たな必殺技を繰り出すことにした。
「そこまで言うなら、私の全力見せてやるわよ!」
「【炎龍輪舞】」
「そうこなくちゃ!こっちも全力でいくよ!!」
「【轟雷天龍】」
2匹の大きな龍が両者の間でぶつかり合い、力がせめぎ合っていた。
その余波で周りの空気が揺れ、遠くからでも見えるほどの影響を及ぼしていた。
「渡、今よ!」
未だに両者の必殺技が均衡している中、メアは渡に対して合図を出した。
すると横から渡が飛び出し、魔力の砲弾をキリカの足めがけて撃った。
「…お前、いつのまに…」
「この作戦はヘルトの野郎が考えたんだから、恨むんなら俺じゃなくてヘルトのことを恨めよ」
(あの野郎この展開を完璧に読んでやがったな…)
先程まで両者の力は均衡を保っていたが渡のせいで体勢が崩れてしまい、メアの必殺技を直にくらってしまった。
「…油断しちゃったかな…」
キリカはメアの攻撃を受け許容以上のダメージを負ってしまった。
そのため強制転移が発動する兆候が出ていたが、キリカは最後は清々しい顔で2人に言い放った。
「…楽し、かった、よ…」
強制転移が発動する最後までの間もキリカは、全力で戦えたことへの感謝の言葉を伝えていた。
すると、まるで最初から誰も居なかったかのようにその場は静まり返った。
"パチパチパチ"
その場にいきなり拍手の音が響いた…
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