第13話 いきなりの接敵
ヘルトが自ら探知魔法を使わないと宣言したので、グループはまず近場の状況把握から始めようと話し合いで結果決まった。
しかし、あたり一面木しか見当たらほどの密林だったので自分たちの位置がどこにあるか、敵がどこにいるのかまったく分からない状況に置かれていた。
「ここどこよ!ほんとに…」
「助けてくれ〜!死ぃにたくなぁ〜い!!」
メアと渡は今の状況が分からなすぎたので、遭難者ごっこをしていた。
ヘルトはそんな奇行を見て呆れていたが、突如東の方角がら"ドカーン"と爆発音が鳴り響いた。
「行ってみるか」
ヘルトの提案に2人とも頷き、息を潜めながらその爆発音がした方向へ進んでいった。道中は周りが木だらけなこともあって非常に進みづらそうにメアと渡はしていたが、ヘルトは少し浮いて移動していたので特に影響を受けなかった。
「…なんかあいつだけズルくね…」
「…私もそう思うわ…」
2人がヘルトに対する愚痴を吐いている間に密林を抜け開けた場所にたどり着いた。
そこには2つのグループが戦っていたが、1人の剣士の少女によって圧倒的な試合が繰り広げられていた。
「あんな一方的な戦いになるのか…」
「まぁあの、戦闘狂の弟子だからね」
「戦闘狂?有名な人なのかしら?」
木陰に隠れて話しあっている最中にも戦況は移り変わっており、かろうじて3対3を保っている状態だったが現在は2人が脱落しており絶望的な状況になっていた。
「彼女はセブンキングス序列7位"瞬光の剣王"の弟子で序列16位だからね」
「弟子…だからあんなに強いのね」
ついに最後まで残った1人が剣で斬り伏せられて強制転移が発動して退去していった。
それを見て2人は急いで木陰から身を乗り出し戦場に飛びだしたがヘルトはゆっくりと姿を現した。
「やあ、久しいねキリカ」
「お久しぶりです、ヘルトさん」
ヘルトもキリカもここが戦場であったことを忘れているかのように雑談を始めていた。
それにグループの残りのメンバーは軽く引いていた。2人が雑談を交わしている最中に衝撃の発言が飛び出した。
「君の相手を俺がしても面白くないから、そこに居る2人と戦うってことで良いかな?」
メアと渡はいきなり自分達の話しが出てきたことに驚いていたし、強者同士が戦うと思っていた。
それはキリカの味方も同じようで顔が青ざめていた。
相手の2人ともキリカの方を向いて懇願するかのような表情をしていた。
「私も彼女と戦いたいなと、思っていたので全然大丈夫ですよ」
キリカが"ニコッ"と笑っているのに対してその味方は期待が打ち砕かれた表情をしており、とても対照的だった。
「じゃあそこの2人、あそこで戦おうか」
「「は、はい…」」
ヘルトの背にキリカの仲間が着いていってしまったのでこの場にはキリカ、メア、渡の3人だけになってしまった。
メアと渡は事前に互いの異能を確認していたのでメアは前に出て渡は後ろに引いた。
「そこのあなたは戦わないんですか?」
キリカは渡の異能を知らなかったので不思議に思っていたが、メアから本人以外の魔力を感じたので薄々勘付いていたが相手が答えてくれた。
「残念ながら俺の異能はサポート特化でね」
渡が喋っている間にもメアは剣に炎を纏わせてキリカに向けて振り下ろした。
それに対してキリカは冷静に呼吸を合わせてキレイに受け流して次の一撃に繋げた。
「ちょっと卑怯じゃないですか?」
そんな言葉を吐きながらも渡のサポートを受けている自分ですら追いつくのがやっとの速度でキリカは剣を振り下ろしてきた。
その後も防戦一方となり、体力も魔力もどちらもじわじわと削られていた。
「はぁ…はぁ…」
(一太刀が速すぎるわ…)
キリカの剣技は師匠譲りの高速な剣捌きが特徴で、その師匠の剣捌きは光の速度より早いらしいがその弟子の剣捌きも、光とまではいかないが圧倒的な速度を誇っていた。
「ギアを少し上げますよ!」
そうキリカが言った瞬間、メアは焦ったが気を引き締めようと思った時には目の前には剣先が自らに迫っており、対応が少し遅れてしまった。
「…マズっ!…」
剣先がメアに当たるはずだったが、メアが気が付くと剣先は目の前から消失していた。
が、間合いを空けた先ではキリカが全身に雷を纏わせて立っている姿がそこにはあった。
「気を抜いては駄目ですよ、ここが戦場だったらあなたはもう死んでますよ」
キリカの言葉に確かに自分は少し緊張感が足りなかったなと思い直し、メアは再び気合を入れ直した。
その決意を表すかのように体からオーラが飛び出した。
「確かにそうね。じゃあ私も行かせてもらうわね!」
「"異能解放"!!」
※キリカは純粋に戦いを楽しみたいので、バフ役から倒そうとかいう考えは持っていません。(戦闘狂の性とも言う)
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