第105話 噂の広がり
この気絶しているおじさんからとれた情報は案外少なかった。
簡単にまとめると、"教主"とやらを崇拝する宗教を広めたかったようだ。
まったくバカバカしいにもほどがある。と、切り捨ててやりたいところだが、そんな単純な出来事ではない。
この世界では異能こそが全てだ。
故に強き者は尊ばれ、崇拝される傾向にある。
それ自体を止めることは不可能なのだが、やり方が非常に良くない。
ファンクラブぐらいのレベルなら問題は何もないのだが、宗教となると触れづらい。
この国では宗教の自由が認められている。
しかし、犯罪者を使った卑劣な手を使うような集団は認められない。
「随分めんどそうな奴が出てきましたね、お師匠様」
「まったく本当にそうだよ。しかも、その教主の部下らしき男はかなり強かったよね。そいつが崇めるやつなんてヤバイだろうな」
"教主"とやらが何れ程の力を持っているか分からないが、国を荒らした者には痛い目に遭ってもらわないと。
セブンキングスが舐められるようになると、他の面々にも迷惑かけちゃうし。
「この案件はエリオットに伝えないといけないから、先に帰っておいてね。あっ…その男は通報しておくだけで良いから」
そうとだけ言い残してヘルトは消えた。
こんな体験はお師匠様と過ごしていると、意外とよくあることなので慣れてきた。
でも、これだけは言わせて欲しい。
「もぉ〜毎回私に後処理丸投げして、少しはお師匠様もやってください!」
弟子である詩乃の悲痛な声が路上に響いた。
おじさんに色々吐かせた後は気絶してもらっているので、光の世界は閉じられている。
なので、もうここはただの廃れた路上が広がっていた。
エリオットに報告をしてきたのだが、非常に忙しそうだった。
影のおじさん…どうやらモルドという名前らしいがどうでもいいか。まぁ、あいつ以外の犯罪者も罠に嵌めたから、それの対応もしてもらっていた。
仕事を増やすなと言われるかもしれないが、そもそも悩みの種を取り除いてあげたのだから、それぐらいは任させてほしい。
今後は王子の仕事も減っていくだろうしね。
よ〜し、これで自由の身になれた。
さてこれからどうしましょうか。
教主とやらとはこれからも戦っていくことになるだろうけど、それはこの国ではないだろうね。
もっと相応しい舞台がありそうだ。
なんだかそんな気がする。
《おや〜…魔法の王とは気が合うね、私もまったく同意見だよ。だから星が導くその時にあいまみえよう。もちろん教主として勝たせてもらうから》
頭の中で誰かの声がする。
魔力も感じなかったし、何か特異な現象の存在も感じなかった。
俺の感知外から何かされた可能性は全然ある。
しかし、こんな芸当が出来る人物は残念ながら知らない。やはりただ者ではなさそうだ。
このアンサーを返してあげたいけど、居場所がまったく掴めない。
これ程自分が手を打てない状況は珍しい。と、言ってしまうと痛い人になってしまうが、事実なので困ってしまう。
防御策ぐらいならいくつか思い浮かぶけど、帰省中にやることではないな。
ここでしか出来ないことをしないと。
やっぱりコネをフル活用させてもらおうかな。これでも大貴族だし。各所に連絡するのはだるいが、それも後の楽しみのためだと思って頑張ろう。
今後も忙しくなりそうだ。だけど、暇しない生活を送れそうでありがたい。
国を巻き込んだ大きな事件が一旦区切りを迎えて少し時が経った頃、アルカナシア王国一の異能学園ではとある噂が蔓延していた。
それはあまりにも広まりすぎて、学園側としても手がつけられなくなっていた。
「ねぇ、知ってる?あのスターダスト異能学園からセブンキングス様がいらっしゃるらしいのよ」
女子生徒は興奮冷めやまぬ声色で友達に話しかける。
クラスの中でも同じ話題で盛り上がっていることが肌で分かる。
「えぇ〜!そうなの!セブンキングス様ということはまさかヘルト様なのかな?ヘルト様はこのアルカナシア王国の貴族であられるし」
色々な憶測が飛び交っている中、ヘルトの妹である奏の名前は出なかった。
それはこの地でも彼女が恐れられていることの表れだった。
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