第101話 唐突に始まる
これから襲ってきた犯人を追うのは少し難しい。
というか、それだと作戦が崩れてしまう。
だからこれからは普通にぶらっと歩こうか。
と、思って一歩踏み出すと、見知った人影が視認できる限界ギリギリの速度でやってきた。
そいつは薄手のシャツや綿のTシャツに、風通しのいいスカート。
白いスニーカーやシンプルなサンダル、小さなトートバッグを提げている。
スカートでこんな速度出して良いのだろうか?
まぁこんな事を言ってしまうと、セクハラだと文句がきそうだ。
「お師匠様の元で変な魔力を感じたから急いで来たんですけど、大丈夫でしたか?」
弟子はわざわざ俺の身を案じてくれたみたいだ。
師匠としては嬉しい限りである。
「俺は何の問題も無かったよ。詩乃がそんなに急いでくれるとは嬉しいね」
「別にお師匠様のために急いだ訳ではないです!もし、お師匠様が反撃をしたとしたら周りに被害が出るじゃないですか。そのフォローをするために来たんです」
なるほどそういうだったのか。
確かにまともに反撃しようとすると辺りを巻き込んでいたかもしれない。
それにしても何でこんな所に詩乃がいるんだろう?
まぁ弟子のプライベートを詮索するわけにはいかないか。
「大丈夫、理解したよ。でも一瞬しか捕捉出来なかったんだよね」
「お師匠様でもそんなことがあるんですね。いつもみたいにもう敵を見つけてたんだと思ってました。意外です」
それだけ相手が強いということなのだろうか?
それとも逃げることに特化した異能でも持っているのか?
いずれにしても厄介そうだ。
「君は俺を過大評価してるんじゃない?俺にもこういう時は必ずある。けれど、これからが締めだからここから取り返すよ」
「締めなのは分かっています。そもそも私は作戦の下準備のために出てきたんですよ」
外に出ている理由は下準備のためだったのか。
なんだ…デートとかじゃないのね。
デートだとしたら、ついていってイジってあげれたのに。
「じゃあ、俺も変な奴とエンカウントしたことだし動こうかな。これを好機だとポジティブに考えてみようか」
エリオットにメッセージを送るだけで作戦は実行フェーズに移る。
戦力としては詩乃がいれば十分だろ。
2人でどうにもならない状況はあまり想像付かないが、そうなったら……まぁフィーリングで頑張るしかないね。
「お師匠様はほんとに気楽ですね。これから国の威信をかけた戦いをすると言うのに。実に羨ましいことですよ」
「ハハッ、よく言われるよ。まぁ、気楽にいこうじゃないか。セブンキングスはこれぐらいの事でへこたれてはいられないからね」
エリオットに作戦の開始を告げるメッセージを送る。
これからアルカナシア王国は戦火に包まれるだろう。
それでも自分の肌感が警鐘を鳴らしている。
あいつを放っておくのはまずい…と。
「まずは高い場所に向かおうか。その方がやりやすいだろうし」
「はいそうですね。では移動しましょう」
この国で一番高い場所というとあそこしかない。
転移は出来ないから空を飛んでいくしかないかな。
今から車を用意するのはさすがに時間ロスになってしまうからね。
魔力を纏って重力を振り切って飛ぶ。
風が少し強いがそんなもの魔力の覆い方次第で調整できる。
空での移動はあまり目立っても混乱を生むだけなので、地上から見えないように建物の上を飛んでいく。
魔法で姿を隠すことは可能だが、そうすると逆に問題が起きる。
例えば国の防犯システムに引っ掛かる可能性がある。
そうなると、国は軍を動員しないといけなくなる。
簡単に言うとはちゃめちゃ迷惑。
だから、姿を晒して誰か識別できるようにしておかないといけない。
「ついてこれなかったら置いていくからね」
「そんな体たらくは見せませんよ!」
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