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探検の行きついた先に光あり

 洗濯物を出しに行く人のふりをしてフローラは城内を歩く。


 もっとも偽装しなくても夜の城内の往来は少なく、まして研究施設エリアでは起きている人は多くても部屋にこもっている人たちがほとんであり、たとえ出会ってもそこまで他人に興味を示さなかったりする。


 ちょっと有名人であるフローラでさえ会釈して通り過ぎれば関心をもたれることなく歩ける。周囲に人がいないときを見計らって、麻の袋からフラムの手が出てきて進行方向を指さしてくれる。


「こっちか……」


 フローラも研究施設で働く者として時間に囚われれず自由に動けるが、それは決められたエリアだけである。

 同じ研究施設の中でも立ち入り禁止エリアや、関係者以外侵入禁止エリアは存在していてどこでも自由に入れるわけではない。


 そしてフラムが指さした方は関係者以外立ち入り禁止のエリアへ通じるドアだった。


 試しにドアノブに手をかけてみるが施錠されており開かない。開かないことで逆に安心したフローラが麻の袋をぽんぽんと叩く。


「探検はここでお終い。鍵がかかってるから入れないよ」


 帰ろうとドアを背にしたフローラが持つ麻の袋からフラムが飛び出してしまう。驚き声を上げる間もなくフラムは翼を広げて不器用に滑空すると隣にあった部屋のドアの前に立つ。


 ドアノブを見つめるフラムの視線に負けたフローラがそっとドアノブを押してドアを引くとゆっくりと開く。

 隙間から飛び込んだフラムは、窓からの月明かりが頼りの薄暗い部屋の中を慣れた様子で走り、壁にあった小さなヒビに体をねじ込む。


「ちょっとどこに行くの」


 小さな声で呼びかけるがフラムは壁の中に消えてしまう。残されて部屋の入口の前で困り果てるフローラだがすぐに近くでカチャっと金属音が聞こえ先ほど開かなかったドアのノブがガチャガチャと動く。


「まさか……」


 立ち入り禁止のドアノブに手をかけ引くとドアがゆっくりと開く。そして隙間から飛び出してきたフラムがフローラに抱きつく。


「びっくりしたぁ~。まさかお城の隙間を通って立ち入り禁止エリアにも入ってたの? まったく……」


 呆れるフローラに対して上機嫌なフラムが開いたドアの先を指さす。


「入るの……? 魔力」


 戸惑うフローラだが、微かな魔力を感じ引き寄せられるように中へと入ってしまう。念のためにとドアの内カギを閉めて部屋の中に入って行く。


 簡素な机と椅子、そして本棚と観葉植物を飾る棚があるわりとシンプルな部屋を見渡したフローラが鼻をスンスンとする。


「なんだろ? なんだかゾワゾワする魔力を微かに感じるんだけど特に気になるところもないし」


 首を傾げるフローラがもう一度部屋の中を見渡す。


「そもそもなんでこの部屋が立ち入り禁止なんだろ?」


 シンプルな部屋に疑問を感じたフローラが本棚に並ぶ本の背表紙を観察しようとすると、フラムが観葉植物の棚を指さす。

 その意図が分からないまま近づいたフローラはフラムが必死に指差す小さな鉢に入った観葉植物を手に取る。


「これがどうかしたの? ん?」


 鉢を観察したフローラが鉢の裏を見て模様が刻まれていることに気がつく。そしてフラムが次に指さす机に近づくと机に触れ、天板が異常に分厚いことが気になり裏側を触ると下にある板が動くことに気付く。


 引っ張ると天板の裏からもう一枚板が引き出される形になる。


「同じ模様……」


 植木鉢の裏にあった模様と同じものが出て来た板の上に刻まれていることに気が付いたフローラが、おそるおそる板の模様に合わせて植木鉢を置く。


 次の瞬間本棚がゆっくりと横に移動して別の扉が現れる。


「隠し扉……」


 ごくりと喉を鳴らしたフローラがドアを押すとあっさりと開く。そして現れた階段に更なる緊張を感じたフローラが鼻の下を押える。


「魔力が濃くなった。下になにかある」


 行ってはいけないのは頭では分かっているが、興味に引っ張られフローラは階段の下を見つめる。真っ暗な暗闇にどこまでも伸びる階段に思わず尻込みをするがフラムが大きく息を吸うとお腹を膨らませてから今度は息を思いっ切り吹く。


 息に小さな火が灯り可愛いブレスを放つフラムによって階段の底が露わになる。


「意外に短い。ってフラムいつの間にブレスなんて吐けるようになったの? って首を振らないで⁉」


 階段の先が見えたことで安心し、ブレスを吐けることを初めて知って驚いたかと思えば得意げに首を縦に振るフラムのせいで炎が飛び散り慌ててしまう。そんな緊張感のないフラムに慌ててしまう自分自身の行動に、フローラは思わず笑ってしまう。


「もう、すぐ調子に乗るんだから。でも明かりは助かるよ」


 軽く怒るもすぐに褒められて嬉しそうなフラムを抱いたフローラは、火が消えないうちにと急いで階段を下りる。短い廊下を壁伝いに歩き再び現れたドアを開けると小さな部屋が現れる。


「うっ」


 魔力の濃さもあるが、鼻をつく臭いに思わず鼻を押えたローラが暗闇に慣れていない目で辺りを見渡す。


 暗闇もあって不安に駆られるフローラの腕に抱かれているフラムが再びブレスを吐く。


 ほんのりと明るくなった部屋に安心したのも柄の間、炎の光を受けて部屋の奥の方に光る二つの青い光に気付いたフローラが、飛び跳ねんばかりに後ずさりをして驚いてしまう。


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