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成長

 レアスキル認定された『合成』を持っていると判明してから、エアガー国の研究施設にフローラは研究員として働き始める。


 研究員といっても自身のスキルを使用し国の利益のための研究、どちらかといえば知識と使い方を学ぶ練習が主となる。


 最初はスキルを発動させる訓練から。体内にある魔力を意識し心の中に魔力を流し込み、そこにあるであろうスキルと魔力を混ぜて手先の方へ流す。そんなイメージを持って魔力を体中に流し込み手先に集中させるイメージを訓練する。


「ちゃんと魔力の流れを意識して、スタートとゴールを明確にするの。特にゴールは意識してね。じゃないとおでこをかざしてスキル発動とか、最悪お尻を向けて発動になっちゃうから手先に集中!」


「ひえっ!? そんなのは嫌です! 頑張ります!」


 マリアージュの指導の元、訓練すること約一ヶ月。フローラはスキルの発現に成功し二つの木片を一つにまとめることに成功する。


 初めての成功だが喜びよりも驚きの方が勝り、二つが合わさったことで一回り以上大きくなった木片と、先ほどまであった二つの木片が消えたことに困惑してしまう。


 自分以上に喜ぶマリアージュに、ここまでの努力が実り成果を出したことが実感できたフローラは満面の笑みを見せる。


 ━━それからさらに数ヶ月


 金属の塊の上に右手を置き、木片に左手を置いたフローラが目を閉じて集中する。ゆっくりと目を開け二つの物体を視界に入れたフローラが、左右の手を物体から離すと青い光が伸びる。そのまま中央に向かって青い光を引っ張って、手をパンっと軽く叩く。


 青い光がはじけると左右にあった鉄と木片はなく、中央に木目調の鉄の板が一つある。

 それに恐る恐るフローラが手を伸ばし触れる。最初は指先でツンツンと、そのまま撫でて最後に手に取ると色々な角度から見て観察する。


「できた? どれどれ」


 慎重に扱うフローラとは違い、興味に対して真っ直ぐなマリアージュが木目調の鉄板を手に取る。

 指ではじいたり拳でトントンとノックし耳をつけ、最後にぺろりと舐めてみるマリアージュをフローラは不安げな表情で見つめる。


「ふむふむ、鉄の要素が強そうね。合成のスキルを使用すると半分半分が混ざるっていうよりは優勢、劣勢みたいなのがあるってことかな? それともフローラが調整できるのかな?」


 思考を口にしながら木目調の鉄板を机に置くと金槌で軽く叩く。


「強度は鉄……もちろん切れない」


 ノコギリの歯を当てて切れないことを試したマリアージュは、ランプの蓋を開けると中で燃える炎に木目調の鉄板の角をつける。


 すると木目調の鉄板から煙が上がり始めやがて火がつく。ランプから抜いたそれを下に向けて炎が木目調の鉄板に火が広がるように促す。


 段々と燃え広がる炎を見ていたマリアージュが木目調の鉄板を投げて床に落とすと、上からバケツに入った砂をかけて鎮火させる。


「燃えてしまう鉄板ねぇ」


 砂から拾い上げた角から燃えて欠けた木目調の鉄板を見ながらマリアージュは呟く。


「そんなの使えませんよね。なんかもっと加工しやすい鉄板ができるとかだったらいいんですけど」


 申し訳なさそうに言うフローラだが、マリアージュは口角を上げてニヤリと笑みを浮かべる。


「仮説でしかないけど配合比率を変えれる可能性があるのよね。それを証明sるには研究とフローラの練習次第にはなるけど。でもね、この短い期間で合成自体はほぼ完ぺきに出来るようになったのはすごいことなんだからもっと自信を持っちゃって!」


 マリアージュの言葉にフローラは表情を明るくする。その様子に微笑んだマリアージュは言葉を続ける。


「それにこの力にも使い道はあるから。たとえば鉄壁の鉄の城門に木の特性を合成させたらどうなる?」


「燃えてしまいます」


「そっ! つまり敵対する国を攻めるなんてとき、又は囚われた仲間の救出に鉄の壁を燃やして救出しちゃう! なんて使い方はどう?」


 マリアージュの考えにフローラが目を丸くして驚く。


「そんな使い方があるなんて思いつきもしませんでした。鉄が燃えるって欠点でしかないと思ってましたから」


「でしょでしょ。私ほど天才だとマイナスなことも視点を変えてプラスに変えちゃうわけ」


 自慢気に腰に手を当てて胸を張るマリアージュにフローラは尊敬の眼差しを向ける。


「マリアージュさんがよく言う視点を変える、全体を見渡す視野の広さを持つことってやつですね」


「そうそう、一つをじっくり見るためには全体も見ないと本質は見えてこないもの。一面、または個の部分ばかりしか見ていたら全としての役割は見えづらい、その逆も然りよ。マイナスとプラスは表裏一体くらいに思ってよく観察すること!」


 人差し指を上に向けてウインクするマリアージュに対してフローラは、惜しみない尊敬の眼差しを送る。

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