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レアスキルから始まる私の創生記〜私は私のために生きるので好きなものに囲まれて国を創ります〜  作者: 功野 涼し
人間だった私が魔王となるまでのお話

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自信はないけどやってみます

 井戸からくみ上げた水は澄んでいて、桶いっぱいに入って揺れる水面に映る穴兎の顔はほころんでいる。


「フローラ様ありがとうございます。おかげさまで水がくめるようになりましたのじゃ」


「いいえ、私は何もしてませんよ。お礼を言うのでしたらヴァイツさんにお願いします」


 カニン村長にお礼を言われたフローラが首を横に振り否定すると、隣にいるヴァイツを掌でさす。


「水の守護者様ありがとうございます」


「うむ、我はフローラのためにやっただけだ。だが称える声は素直に受けよう」


 ふんぞり返るヴァイツがドヤ顔でフローラを見ると、フローラは苦笑いで応える。


「そうだ、フローラのおかげで我の力がかなり上がったぞ!」


「そう言えば多くの者に感謝されると力が強くなると言ってましたね」


「さすがフローラだ、覚えていてくれたか。今の我ならブリューゼとやら指一本で倒せる」


「あ? 聞こえているぞ」


 事あるごとにいがみ合う二人にフローラがため息をつく。


「俺も腕を取り戻せばお前なんぞ敵ではない」


「腕を戻す? そんなことができるわけがないだろう?」


「フローラなら出来る」


 ブリューゼとヴァイツの口喧嘩の最中に出た言葉に周囲にいた者たちの視線がフローラに集まる。とくに医者であるケリールは驚き興味を持ってフローラに尋ねる。


「切断されたばかりならスキルを使って繋ぎ合わせられる者もいると聞いたことがあるけど、ブリューゼの場合は長い年月が経っていて、しかも繋ぐ腕もない。それでも可能なのかい?」


「え、ええ。正しくは別の腕を合成するんですけど。そうだ、少し相談に乗ってもらえますか? お医者さんの意見が聞きたいです」


「もちろんいいよ」


 フローラに頼られ満面の笑みで応えたケリールを同時に睨むブリューゼとヴァイツをひと睨みで大人しくさせたフローラは借りている家へと向かう。


 ***


「これはまた面白いものを……」


 兵器レーシュエンの左腕を興味深そうに観察するケリールをフローラが見上げる。


「単純な合成なら出来ると思うんですけど、一部だけを繋げるにはブリューゼさんの体と金属の腕を構成する物質が離れ過ぎていて難しいんです」


「離れ過ぎか……それぞれを構成する物質が違うから当然なわけだけど。なるほどこの腕の内部に魔力の流れを感じるね」


「触っただけでそんなことも分かるんですか?」


「僕のスキルは『構造把握』だからね。だからこそ医者をやってるってわけさ」


「すごいです! 私なんて魔力を流して、流れ具合から頭で図を想像しているんですけどケリールさんは直接見えるってことですよね!」


「いやいや、それほどでもないよ」


 テンション高く笑顔で話すフローラに照れ笑いをするケリール、そんな二人のやり取りをブリューゼとヴァイツは面白くなさそうな顔で頬杖をついて見ている。


「生命と無機物を合成することは出来るんだよね。ならまず腕の方を生命に近づけて……そうだね狼くんの毛をむしって合成し近づけてみるとかどうだろう?」


 会話の中でケリールが出した答えにフローラはブリューゼのことをじっと見つめる。


「ちょっとむしってみていいですか?」


「うっ、必要なら仕方ない。ひと思いにやってくれ」


 ブリューゼが右腕を出すとフローラが近づき毛を掴む。


「そ、そんなにいくのか?」


 フローラがむんずと掴んだ毛の量にブリューゼの顔に怯えが見える。


「多いですかね?」


「い、いや沢山あった方がいい……かもしれない。やってくれ」


 あからさまに動揺するブリューゼだが、自分の毛を掴み不安げに見上げたフローラの目を見てきりっと表情を変え大きく頷くと腕に力を入れる。それを見てホッとした表情になり笑顔で頷いたフローラもまた手に力を入れる。


「えい!」


「うくわっ!」


 きゃんっとブリューゼの悲鳴があがり腕を押えて屈むブリューゼの横で、フローラは手に握った毛の束を見て嬉しそうな表情を見せる。コルサをはじめとした狼人族はもちろん、穴兎たちもそれぞれ体を押えてブリューゼを襲ったであろう痛みを想像して青い顔になる。


 フローラは自分の手に握られた毛を見て満足気な笑みを浮かべると早速、兵器レーシュエンの腕に向かい合成を試みる。


 右手に握ったブリューゼの毛と兵器レーシュエンの腕の間に引かれ繋がる青い糸が交わった瞬間はじける光に初めて見る者たちが目を大きく見開く。


「う~ん……ほんのわずかに変化したような気がするんですけどどうですか?」


 フローラが自信なさげにケリールに兵器レーシュエンの腕を渡すと、ケリールは手に取り注意深く観察する。


「そうだね、ほんのわずかだけど生き物に近づいた。金属に混ざった感じがあるね」


 ケリールの言葉にほんの少し笑みをこぼすが、どこか不服そうなフローラが兵器レーシュエンの腕を見つめて考え始める。


「毛で変化があるんだ。それこそ生命的な……魔族が残す結晶なんかがあれば。と言っても簡単に手に入らないし、仮にあったとしても狼くんの魔力と反発しては意味がないからね」


 ケリールの言葉にハッとした表情になるフローラだが、すぐにブリューゼを見て小さく首を横に振る。


「もしも魔力の結晶が必要なのであれば私たちから提供いたします」


 思ってもみなかったコルサの提案にフローラとブリューゼが顔を見合わせ驚いてしまう。

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