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大きく変わる生活

 家に帰ったフローラは儀式の場で一部始終を知ってはいたが、改めて喜ぶ父親と母親に迎えられ三人で喜びを分かち合ったあと、馬小屋に行きラピドに自分のスキルの話をする。

 そのままニワトリたちにも話しかけていたとき、家に全身を鎧で身にまとう王国兵士が二人やって来て両親と話すのが目に入る。


 何事かと近づいたフローラに二人の兵が気づくと、胸に手を当て姿勢を正し綺麗な気をつけをする。


「こたび王国よりフローラ様の身辺警護を任命されましたランドルとメイッサです! フローラ様が就任されるまでの短い間ではありますが全力で警護にあたりますのでよろしくお願いいたします!」


「えっ、あ、はい。こちらこそよろしくお願いいたします」


「「はっ!」」


 古今東西、王国に有益なスキルが発現した者の噂は瞬く間に広がるものである。それを素直に祝福する者も多いが、中には悪用せんと悪意を持って近づく者もいるのが現実である。


 それを阻止するために王国から護衛が派遣されるということは知ってはいたが噂程度のものであり、本当にあってまして自分に護衛がつくとは思っていなかったフローラは、驚きつつも自分の持つスキルが特別なんだと実感できて嬉しくもなる。


 喜びを実感していたときちょうど肩に着地したフラムが、フローラに頭を擦りつけて甘えてくる。


「こらっ、くすぐったいってば」


 ドラゴンの子供とじゃれるフローラを見て驚くがすぐに「さすがです」と褒めちぎる兵士たちの言葉に照れながらフローラの新しい日々が始まる。


 ***


 護衛がついた以外特に変わったこともなく過ごしていたフローラの元に王国からの使者が来たのは、スキル鑑定の儀式を終えて約一ヶ月ほど経ってからだった。


 金の装飾が施された馬車が家の前に止まると、儀式にいたギムレットが数人の兵を連れてやってきて令状を読み上げる。


「スキル『合成』を持つ者、フローラ・サマント。汝に王国研究施設、並びに王国治安維持部隊の所属を命ずる」


「はい」


 返事をしたものの、研究施設も治安維持部隊もよくわかっていないフローラの目には迷いが見える。


 そんなフローラにギムレットは優しく微笑む。


「突然のことで驚いただろうが、研究施設はフローラの力を有効的に使う手段を見つけるためのもの。フローラは力を使えるようになってくれればあとは研究員がやってくれる」


 そこまでの説明を聞いてもなお不安そうに瞳を揺らすフローラにギムレットは優しく語りかける。


「治安維持も直接戦闘というわけではない。フローラによって生み出された武器や防具を部隊に使ってもらい実戦に耐えうるかを研究する。その際実際に見てもらう必要があるため形式上部隊の所属が必要というわけだ」


 説明を終えてコクリと頷くフローラだがその表情は固い。


「難しいことを言って申し訳ない。フローラはできることをやってくれればいい。そのために周りも協力するから安心して欲しい。それにいきなり何でもできる人なんていないから大丈夫だ」


 ギムレットの言葉に少し安心したのか安堵のため息を吐いたフローラは笑顔を見せる。


「お気遣いありがとうございます。精一杯頑張りますので宜しくお願いします」


 まだ不安は拭いきれてはいないが、それを押しのけて希望を感じるフローラの瞳にギムレットをはじめ、フローラの両親達も微笑む。


 フローラの新たな人生の第一歩がこうして踏み出される。


 ***


 一般市民であるフローラにとって城の中全てが初めて見るものばかりで、口を開けたままキョロキョロしながら美しい装飾品で飾られた廊下を歩く。


 そのまま連れて行かれた場所は城の端の方。端といってもフローラにとっては何もかもが大きく、豪華で圧倒され続けるだけである。


「こっちは研究塔と言って王国の利益となるための研究、魔法や戦闘技術、魔族や魔物の生態。農業や工業に至る経済なんか幅広い研究機関集まっている。フローラには魔法研究の一部であるスキル専門の部署に所属してもらい王国のために頑張ってもらうことになる」


 ここまで案内してくれたギムレットの言葉にフローラは大きく頷く。


「はい頑張ります」


 笑顔で力強く頷いたフローラを見てギムレットは満足そうに微笑む。


「それでは私が案内できるのはここまでだ。あとはここの責任者であるメイファスト君に詳しいことは聞いてくれ」


 そう言いながらギムレットが視線を後ろにやるので、フローラもつられて後ろを振り返る。


 視線の先には金色髪の男性が立っていた。丈の長い白衣を着ていて眼鏡の奥に気難しを押し込めたような少し神経質そうな顔の男性は一歩前に出ると頭を下げる。


「魔法とスキルの研究を統括しているサマトリアと申します。以後お見知り置きを。こんなとこで立ち話もなんです、施設を案内しながら説明しましょう」


 そう言ってフローラが名前を名乗る間もなくサマトリアは部屋の奥へと向かってしまう。

 どうしていいか戸惑うフローラがギムレットを見ると、ギムレットは優しく微笑む。


「ちょっと変わった男だが面倒見はいいし根もいい男だ。フローラの活躍に期待している」


「はい、頑張ります。ギムレット様、案内ありがとうございました」


 フローラは元気よく頭を下げてお礼を言うとサマトリアのあとを追う。

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