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第9話 ~遠征クエストの真相~

「急に何よトールさん!? 意味が分からないんだけど!!??」


 マリンは胸倉を掴んで怒鳴りつける俺に驚き戸惑っている様子だった。

 無理もない反応だと思うが、今はそれどころではない。、


「このクエストはチュートリアルクエストで最悪なパターンのヤツだ! お前も知っているだろう!?」


 この世界の創造主を自称する女神なのだから知らないはずがない。

 俺の言葉にビクッと身体を震わせたことから、思い当たる節はあるようだ。


「嘘っ!? これが!? ちょっと意味が分からないんですけど!!??」


 やはり、マリンも心当たりがあったらしい。

 だが、動揺してパニックになっている暇はないのだ。

 早く次の行動を起こさないと手遅れになってしまう可能性がある。


(ここまで村の過疎化が進んでいるとなると、一刻を争うぞ!)


 この場所は間違いなく『始まりの村』だ。

 本来は主人公がオープニングで旅立つ村であり、村人も活気に満ちているはずなのだ。


(それなのに【人がほとんどいない】ということは、一番マズイ状況だ)


 そう考えた時には既に走り出していた。


「とにかく逃げるぞマリン!!」

「トールさん!! 待ってよ!!」


 マリンも慌てて追いかけてくる。

 文句を言わないことから、マリンもこの状況が理解できているらしい。


(早くクローラの街に戻らないと!!)


 もし、ここで何もせずにいたら取り返しがつかないことになるかもしれないのだ。


(くそっ! なんで気付かなかったんだ!!)


 後悔しても遅いことはわかっているが、自分の迂闊さに腹が立つ。

 俺は焦りながらも冷静に周囲を観察することにした。

 村のどこを探しても人影すら見つからない。

 この村の生物はすべて死に絶えて、魔王によって滅ぼされているのだ。


(やっぱり……誰もいない……これは全滅パターンだ!!)


 チュートリアルクエストにおけるバッドエンドの一つ、【村の全滅】。

 主人公がこのクエストを受けるのが遅くなり、村がモンスターの大群に襲われて全滅してしまった。

 先遣隊であるゴブリンが倒されずに帰還したせいで、ゴブリンキング率いるゴブリン軍団に蹂躙されたのだ。

 主人公はその絶望的な状況を目の当たりにして、人間領が魔族に攻められているという危機的状況に気付くのである。


(急がないと本当にヤバい!!)


 今、この村の周辺は大量のゴブリンが徘徊しており、大変危険な状態だ。

 俺たちはいつ襲われてもおかしくはない。


(なんでもっと早く気が付かなかったんだよ!!!)


 俺は心の中で自分自身を罵倒した。

 不自然に冒険者ギルドに残されていた遠征クエスト。

 偶然こんな遠方にある村と同じ方向へ向かう馬車。

 馬車を降りる時の老人の行動。

 今考えれば不自然なことが多すぎた。


「ねぇ! これって全滅パターンよね!? どういうこと!?」

「俺が知るわけないだろう!! お前の方が詳しいんじゃないか!?」

「私だって知らなかったのよ!!!! 誰もやっていないなんて思わないじゃない!!!!」


 足を止めることなく走り続ける俺をマリンが追いかける形で追走してくる。

 その表情はとても必死なものだったが、今の俺にとってはどうでもよかった。


「とりあえず街に戻るぞ!」

「わかったわ!!」


 俺の提案にマリンは素直に頷く。

 マリンもこのままこの村に残っていたら助かる見込みがないことは理解しているようだ。


(多分もうすぐ現れるはずだ……)


 俺たちが必死に逃げていると、案の定、あらゆる方向から地響きのような音が聞こえてきた。


「ギャッギャッギャ!!」

「グギャグギャッギャ!!」

「ギギィーー!!」

「ガァアアッ!!」

「ゴブゥウウッ!!」

「ゲヒャアアアッ!!」

「ブルォオオオーー!!」

「ギュルルル!!」

「ピキャアア!!」

「キキィイイイッ!!」


 木々の間から次々と姿を現す人間ではない異形たち。

 身長は人間の半分ほどしかないにもかかわらず、筋骨隆々の身体つきをしている。

 肌の色は緑色で、醜い顔から覗く鋭い牙と爪は、見るものに恐怖を与えることだろう。

 そんな恐ろしい姿をした怪物たちが数十体、俺たちを取り囲むように現れたのだ。


「やっぱりゴブリンだ! マリン急ぐぞ!!」

「わかってるわよ!!」


 ゴブリンたちは獲物を見つけた喜びからか醜悪な笑みを浮かべる。

 しかし、すぐに襲い掛かってくる様子はなく、小走りで包囲網を縮めてきた。

 俺とマリンは全力で駆け抜けようとするが、ゴブリンたちも逃すまいと速度を上げて追い掛けてくる。

 ゴブリンたちの速度が予想以上に速かったため、数体のゴブリンが飛び掛かってきた。


「ブレッシング! スピードブースト! マジカルアーマー! エンジェルブレス! ブラインドカーテン! マジックバリア!」


 マリンは俺走りながら俺へ補助魔法を掛けてきた。

 途端に体が軽くなり、力が漲っていくのを感じる。


(これならいける!!)


 俺は能力強化された自分のステータスを見て、咄嗟に剣を抜いた。

【名前】トール

【種族】人間族

【年齢】18歳

【レベル】0

【基礎能力値】

 体 力:141/141

 魔 力:130/130

 筋 力:12+10

 生命力:4+10

 敏捷性:2+10

 器用さ:3+10

 知 力:3+10

 幸 運:1+20

 スキル:なし

 装備品:鉄の剣:攻撃力10(筋力+2 器用さ+2)

     革の胸当て:防御力7

     革の肘あて:防御力5

 状 態:ブレッシング  (9分45秒):全能力値上昇

     エンジェルブレス (9分45秒):幸運値上昇

     スピードブースト (9分45秒):移動速度上昇

     マジカルアーマー (9分45秒):防御力上昇

     マジックバリア  (9分45秒):魔法防御力上昇

     ブラインドカーテン(9分45秒):回避率上昇

「トールさん!! やっちゃって!!」

「おらぁ!!!!」


 気合と共に剣を振り、飛び掛かってくるゴブリンを切り裂いた。

 ザシュッと鈍い音がして鮮血が飛び散り、地面に転がるゴブリンの死体。


(よし!)


 一撃で仕留めることができたことに安堵する暇もなく、逃げるため走り出そうとした。

 しかし、マリンが倒れているゴブリンを見つめたまま動かない。


「立ち止まるな! 囲まれるぞ!!」


 俺はマリンの腕を摑んで引っ張るが、動こうとしなかった。

 それどころか俺の手を振り払ってきた。

第9話をご覧いただきありがとうございました。

もしよければ、感想、ブクマ、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。


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これからもよろしくお願いします。

次回は明日公開します。

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