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アラサー女子、ブラック上司に副業疑惑をかけられる

 始まりは、社内のカフェスペースで後ろからいきなり怒鳴られたことだった。


「おい、副業なんて禁止に決まってるだろ! すぐ詳細を報告しろ!」

「ひっ!?」


 すぐ後ろ、息がかかるんじゃないか、ぐらい近くから大声を出されて、青山カレンは椅子から飛び上がりそうになった。


「えっ。あ、飴田課長!?」


 振り向くと、同じ庶務課の男上司、飴田課長が無表情で立っている。


「副業。我が社に就職していて副業なんて、ふざけるにも程がある」

「い、いやちょっと待ってください。副業なんて大袈裟なことはやってません、趣味で小物を作ってるだけなんです」

「は? 今さっき、売るだの何だのと話してたじゃないか」

「それは……」


 アラサー女子カレンの趣味は、レジンという透明な樹脂で作るアクセサリー作りだった。

 会社帰りに区民会館でサークルに参加して、去年から講師や先輩たちに教わっている。


 ちょうど最近、講師がこの手のハンドメイド(手作り)作品の出品販売アプリを紹介してくれたので、自信作を幾つか出品していたのだ。


(確かに売れたわ。ブローチが一個だけ。値段は500円。でも販売手数料のこと忘れてて、しかも送料無料にしちゃったもんだから、材料費まで入れると赤字よ赤字!)


 そんな失敗談を、お茶休憩のためカフェスペースでコーヒーを飲みながら他部署の同期たち数人と話していた。

 それだけだったのに。




 それは副業だ、とよりによって同じ部署の直属の上司から糾弾されて、居心地が悪い。


「いえ、本当に副業とかじゃないんです。趣味ですから材料費を考えると利益なんかも無いですし、……あの、お騒がせして済みませんでした」


 これで駄目なら、作ったアクセサリーの大半は同じ区民会館の学童や老人クラブに寄贈していることなどを告げるつもりのカレンだ。


 だがひとまず納得したのか、上司の課長がそこで引き下がってくれたのは幸いだった。


「び、ビックリした……」


 へなへなと椅子の背もたれに凭れ込んで、カレンは深い溜め息をついた。

 お茶休憩の時間はまだ残っている。

 温くなってしまったコーヒーを飲み飲み、また嘆息した。


「あれ、カレンのとこの上司でしょ? すごい剣幕だったね。いつもあんななの?」

「うーん……まあ、威圧的に感じることは多いかな」


 年齢は四十代半ば、独身。

 仕事はまあまあできるし身なりも良いが、無表情なことが多く、理不尽というより嫌味の多い意地悪な上司だ。


「まあでも、副業ってほどのことやってないのは本当だしね」

「気をつけてよ。カレン、結構可愛いから心配」

「もうー何言ってるのよー」


 青山カレンは今年28歳、アラサー。

 背は平均ぐらい、ショートボブで元から地毛が明るい茶色なのでカラーは入れていない。

 目がパッチリ二重でウサギのように大きいので、童顔で可愛らしく見える。らしい。


 だが同期たちの心配は、その後まさにドンピシャで的中してしまうのである。






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