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手のひらサイズの令嬢はお花の中におりました  作者: しろねこ。


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派手な騎士の仕事

急に来た派手な男が来たのには、驚いた。

リンドール王城の門前にて一人の男が馬車から降りる。


アドガルムの王太子直属の騎士で、名をオスカーと名乗った。


「こちら我が王アルフレッド様からの親書です」


書簡には印も押してある。

男が降りた馬車にはアドガルムの紋が入っており、付き添いの兵も多数いる。

鎧にもアドガルムの紋が描かれていた。


「さぁさ、わかる人に早く言ってきちゃって。遅くなるとアタシが怒られちゃうから」

オスカーは門番を急かし、早く早くと促した。



「アドガルムからの使者が来ている?」

慌てた様子の兵士からそのような話をされ、大臣のラドンは眉をひそめる。


訪問の話など聞いていない。


「こちらが親書らしいのです」


渡されたのはアドガルム王の名前と印が押されているものだ。


「まさか、本当に?!」

読み進め、ラドンはすぐさま命令を出す。


「陛下に知らせろ、アドガルムからの使者が来たと。他の者は使者の方を一先ず応接室に案内しろ」






ただただ戸惑うばかりだ。

「謁見の許可を頂き、感謝いたします。私の名はオスカー=カラミティ。本日はアドガルム国王であるアルフレッド=ウィズフォード様より親書と、そしてアンドレイ様への直接の伝言を賜りました」


派手な男性騎士は恭しく膝を付き、見た目と反して丁寧に挨拶をする。

白い髪の一部を赤くしていて、顔には化粧も施していた。

金糸で刺繍された騎士服はキラキラと光っている。


胡散臭いが、アドガルム王からの手紙を直接持ってきたのだから、追い返すわけにはいかない。


「オスカーとやら。アルフレッド殿からの親書には目を通したが、その伝言とやらに託されたのか?我が国が大変な事になるという話は」


親書にはリンドールの危機と題されていた。

内容については、使者として遣わされたオスカーが説明するとの一文があった。


「そうです。現在宰相のディエス様が大変なのはご存知ですね?」

「娘の行方がわからないと言っていたな。こちらも数人の兵士に探させているが、見つからない」

「数人ですか?数百人の間違いでは?」

オスカーは、聞き返す。

ディエスはリンドールの宰相であり、公爵だ。

もっと親身に動くべきでは?とオスカーは思う。



「そこまですることもないだろうとの判断です。自らいなくなった、との情報もあるくらいですし…ミューズ嬢の失踪の噂についてはオスカー様も聞いているでしょう?」

大臣のラドンが口を挟む。


「どういう噂です?わかりかねますが」

オスカーは首を傾げる。

さらりと長い髪が揺れた。


「居なくなる直前に男と歩いていた、と話がありまして。確かあのパーティで、アドガルムのティタン様も途中でご帰宅されてますよね」



(これはこれは…)

ピンと来たオスカーは、不機嫌さを隠そうともしない。


「つまり、我が国のティタン様がミューズ様を無断で連れ帰ったと言いたいのでしょうか?」

「そのように取ってもらって結構」


連れ帰ったのは確かだが、前提が違う。


「随分な言い草ですね。ならば、全ての裏が取れてるという事でよろしいでしょうか?まさかリンドール国の大臣ともあろう方が、噂だけでアドガルムの使者として来ている私に、王子への侮辱を言うとは覚悟がおありですか?」


オスカーがそっと取り出したのは通信石だ。


「そのような体たらくだから、ディエス様もこの国が嫌になるんですよ。今回の真相を暴くため、アドガルムの王太子が直々に犯人のもとに乗り込んでいます」

「王太子?エリック様もリンドールに来てると言うのか?!」

「えぇ。事件解決の為に」


余計な事を言ってしまったが、オスカーの仕事はただのお使いだ。


今から行われる呪い返しについてをリンドールの国王に聞いてもらうため、こちらに派遣された。

本当は一緒に呪い返しを見てみたかったが。


「どうぞ聞いてみてください。何が起きていたのかを」

通信石をニコラと繋ぐ。


断罪劇が始まった。







『聞こえたなオスカー。全部終いだ』

ニコラが通信を切った。

全ての話が終わったのだ。

「……」


アンドレイもラドンも何も言わない。


「では私は帰ります」

通信石をしまい、オスカーは身を翻し、皆に帰ろうと促した。


「話を聞いてたからわかるでしょうけど、ディエス様もお話しに来るでしょうね。皆で後のことを話し合ってくださいな」

ディエスがこの国を見限るのかどうなのか。

この人達の手腕次第だろう。


「待ってください!アドガルムはずっと、ミューズ嬢を助けるために動いていたというのですか?失踪事件の犯人はリンドールの者だったとは…知りませんでした、どうかお許しを!」


大臣が頭を下げる。

先程言ったティタンへの侮辱は大問題だ。


本来なら徹底抗議をするものだ。


犯人はまさかの自国のもので、ティタンに掛けられていたのは冤罪だ。


「私からは何とも言えませんが、個人的に許せませんね。裏も取らないであのような発言を、大臣という役職についてる人が言うとは、この国は信用出来ません。エリック様はずっとおっしゃってましたもの。この国は噂に振り回されすぎだと」


思いの丈をそこそこぶつけた。

あとは自分の仕事ではない。


オスカーはもはや振り返ることもしなかった。





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