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魔王勇者と不死鳥少女  作者: 竹内優斗
偽りの国
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02

2話目です

 二人はその後、食料品や日用品などを買い込むため、大通りを散策していた。途中、空腹感を刺激する匂いが漂ってきたので、露店で食事を取りつつも、目的の店を見つけては必要なものを購入していった。


 そうやって歩き回っていると、いつしか日が落ち始めていたため、泊まる場所を確保すべく宿を探し始めた。


「これで四件目だにゃー」


「まさかこんなに宿が空いていないとは……」


 宿を探し始めた二人だったが、見つけた宿はすべて満員状態だった。宿屋の主人に聞いたところ、どうやらこの時期は騎士団や観光客が泊まるため、部屋がすぐ埋まってしまうそうだ。


「こんなところにも騎士団が影響してくるとは……」


「騎士ども許さないにゃー」


 まさか一つも宿が取れないなど、全く想定してなかった。


「……このままだとせっかく国に来たのに野宿になりそうだね」


「そんにゃー……」


 ハヤトにこの先到来するであろう未来を告げられ、アーリアはガクッとうなだれた。一方でハヤトも、教えてもらった宿が全てダメだったこともあり、どうしたものかと途方に暮れていた。


「なあ? あんたたち、もしかして旅人か?」


 そんな中、二人へと声をかける人物がいた。二人は声がした方へ顔を向けると、そこには両手に荷物を抱えた青年の姿があった。


「はい、その通りですけど……」


「やっぱりな、そうだと思ったぜ。ローブを着た、いかにも旅人ってやつが宿屋の前で立ち尽くしていたからな。この時期のことを知らないで、宿がなくて困ってるんじゃないかと思ってな」


 青年は二人に向かってそんなことを告げた。


「はい、まさにその通りです。その……。この国でどこか一晩を過ごせるような場所を、知ってれば教えていただけないでしょうか?」


 ハヤトは一縷の望みをかけて彼に質問した。


「何ならうちに来るか? 空いている部屋があるから人を泊めることは出来るぜ」


 青年はそう提案してきた。


「よろしいんですか?」


「ああ。一人で住むには少し広すぎる家だからな。必要な人に使ってもらう方がいい」


 彼はこう言っているが、いきなり見ず知らずの他人を連れていくには何か裏があるのではとハヤトは訝しんだ。けれど、宿に困っていたこともまた事実なので、警戒は怠らないようにしつつも素直に申し出を受けようと思った。


「こう言ってくれてるけど、アーリアもそれでいい?」


 そう聞くと、アーリアは頷いた。


「それでは、お言葉に甘えさせてもらいます」


「お兄さん、ありがとうにゃー」


「お、おう。変わった口調の子だな……」


 青年はアーリアの口調に若干呆気に取られたが、気を取り直し自身の家へと向かった。


 彼の後ろをついて行く中、アーリアがハヤトに小声で話しかけた。


「主様、この人は信用して大丈夫なのですか?」


 彼女は少し心配そうな顔でこちらを見ていたので、安心させるためにも自分の考えていることを伝えることにした。


「いや、別に信用しているわけじゃないよ。何か裏があるのかもしれないけど、僕らが宿に困っていたのも確かだしね。一応警戒はしつつも、何かあったら動けるようにしておけばいいと考えてる。だから、アーリアもあまり気を抜かないようにね」


 彼女はハヤトの言葉を聞き、得心がいったように頷いた。



「着いたぞ。ここがうちだ」


 彼の後を追って着いた先には、レンガで造られた家があった。周りにも似たような家が建っているので、恐らくこの国では一般的な造りなのだろう。


 ハヤトたちは彼に勧められるがまま、家の中へと入った。


「そうだ。あんたら夕食はまだだよな? これから一緒にどうだい?」


 彼の後に続きダイニングへと入ると、彼から夕食のお誘いを受けた。特に断る理由もなかったので、ありがたく同伴させてもらうことにした。


「よろしければ、ぜひお願いします」


「お願いするにゃー」


 そう返事をすると、彼は手に持った荷物を置き、キッチンへと向かっていった。



 ハヤトたちは彼の作った料理を食べ終え、食後に彼との会話に興じていた。


「へぇー。あんたら二人でずっと旅をしているのか」


「はい。僕と彼女は、もうかれこれ何年も旅を続けています」


「俺にはわからないが、旅をしてて辛かったこととかはないのか?」


「この前の土砂降りは、かなりきつかったですね」


 彼は笑いながら、こちらに同意した。


「あれは確かに酷かったな」


「体中がびしょびしょになって大変だったにゃ」


「お嬢ちゃん、風邪を引かないように気をつけなよ」


「大丈夫にゃ。心配ありがとにゃ」



 そんな他愛もない会話をしていると、気付けば時間はあっという間に過ぎていた。


「おっと、もうこんな時間か。いい時間だし、部屋へ案内しよう」


 彼はそう言って、二人を客間へと案内した。


「この部屋を使ってくれ。二人では少々狭いかもしれないが、そこは我慢してほしい。俺はそこの部屋にいるから、何かあれば呼んでくれていいぞ」


「ありがとうございます。何から何までしていただいて」


「気にしなくていいさ。俺が好きでやってるだけだからな」


 そう言うと、彼はダイニングへと戻っていった。


「何か裏があるのかと思ったけど、結局何もなかったにゃ」


「今のところそうだね。まぁ、何か事情はありそうだったけど……」


「そうなのにゃ?」


 アーリアは顔に疑問を浮かべていた。


「夕食を食べた部屋だけど、あそこに写真が立ててあったんだ。ちらっとそれを見たけど、中に小さな女の子が写っていたよ」


「小さな女の子? 妹かにゃ?」


「年齢的にそんな感じはしたね。ただ、さっきの会話で、一言も家族について言わなかったから、僕も特に聞かなかったけど……」


 そう言うと、アーリアは不思議そうな顔をしていた。


「どうして聞かなかったのかにゃ?」


「そりゃあ、僕らはあくまで家に泊めてもらってるだけの立場だからね。わざわざ他人の事情に首を突っ込む気はないよ」


「わかったにゃ。よそはよそ、うちはうちにゃ」


「微妙に違う気がするけど……」


「にゃっ!?」



 翌日、泊めてくれたことを彼に感謝し家を出ていこうとしたが、彼はこの国にいる間はここに泊ってくれていいと言った。今から宿を探しても見つかるかわからないため、悪いとは思いつつも、その好意に甘えさせてもらうことにした。


「それで、今日はどうする予定なんだ?」


「今日はこの国の観光をしようと思ってます」


 彼が今日の予定を聞いてきたのでそう答えた。


「そうか。なら、国の中心部に行ってみるといい。あそこは人で賑わっていて、大道芸などもやってるから、この国の一つの名物だぞ」


「なるほど、ありがとうございます。一度行ってみることにします」


 彼の助言によって、今日の観光予定が決まった。


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