02
本日2話目
神聖歴四五三年
勇者は今、玉座の間で王に向かって跪いていた。
「勇者ユウヤよ。約束通り、そなたにはこれから魔王退治へと向かってもらう」
「はっ!」
「そなたにはこの聖剣を授ける。きっと使いこなすことが出来るだろう」
そう言うと、側仕えの者が剣を渡してきたため、ありがたく受け取る。
「さらに以前話していた通り、そなたのパーティメンバーとして同行する者を、こちらで数名程見繕った」
そう言って合図をすると、壁際から三名ほどの人物がユウヤの前に現れた。
「それぞれ剣士、魔法使い、僧侶の三名である。勇者ユウヤよ。彼らと共に魔王討伐へと赴き、見事我ら人類の悲願を果たして見せよ」
「かしこまりました。私の力により、見事魔王を打ち果たして見せましょう」
こうして、勇者ユウヤは旅の仲間を連れて、魔王退治へと向かうこととなった。
旅をするにあたり、国からは色々と用意をしてもらった。聖剣のことは元より、空間収納のできる指輪や移動に使う馬車など。何日分かの食料も用意してもらい、早速空間収納を使うこととなった。
そうした準備を終え、いざ出発するとなると、国民総出で旅立ちを見送られた。
ユウヤはこれだけの期待を背負っているとわかり、必ず魔王を倒すと改めて決意した。
王国を発ってから数日。勇者一行は馬車に乗って移動していた。
「これから長い間を共にするんだし、皆のことを知っておいた方がいいと思うんだ。だから、お互い自己紹介をしよう」
そう提案したのはユウヤだ。彼の提案に他の三人も異論はないようで、この場で自己紹介をすることが決まった。
「じゃあまず僕から。僕はユウヤ、皆知っての通り勇者をしている。得意なのは剣術と、少しだけだが魔法が使える。いざという時、切り札の聖剣を解放して使うこともできる。これから仲良くしてくれるとうれしい」
よろしく、と最後に一言付け加えた。
「俺はルイスだ。剣術しか取り柄が無いが、よろしく頼むぜ」
次に剣士がぶっきらぼうに答えた。ユウヤより少し年上に見える、赤っぽい服を着た細身の男だ。腰の鞘には、剣の中では珍しい刀と呼ばれる武器が収められていた。
「私はニーナ、魔法使いよ。攻撃魔法は得意だけど、補助や妨害といった魔法は使えないわ。そこのところよろしく」
魔法使いである女性は、勝気そうな様子だった。ユウヤと同年代で、黒いローブを身に纏っている。魔法を補助するため、手にはロッドと呼ばれる杖を持っていた。
「わ、私はケイトと言います。か、回復と補助魔法が使えます」
最後の僧侶は、ユウヤより少し年下の少女だった。白いローブを着て、メイスと呼ばれる先端に突起のついた杖を持った彼女は、自信なさげにおどおどした様子で話していた。
こうして全員が自己紹介を済ませ、皆で会話をしていると、ようやく目的とする国に到着した。
魔王討伐というが、実際に脅威となっているのは魔王だけではなく、その配下たちも人々を苦しめていた。各地では魔王軍の脅威により、人類の生活圏がどんどん縮小してきている。そのため、旅の中ではそういった場所を解放していくことになる。
今回到着した国はそういった場所の一つで、侵攻してきた敵軍は鬼人族と呼ばれる種族によって構成されていた。
鬼人族は頭に角が生えていて、二メートルを越す体に、強靭な肉体を持つことで知られている。種族全員が好戦的というわけでもなく、温厚な者もいる。
しかしながら、魔王軍に属する奴らは特に好戦的で、人類を殺すことを楽しみとしていた。奴らを放っておけば、
被害はどんどん拡大していくので、一番初めに対処する必要があるということでここへと送られた。
この国では、全ての兵士を集めて鬼人族が国に侵攻するのを食い止めていた。だが、やはり戦力差というものはどうしようもなく、戦いは劣勢であった。そのような状況のため、勇者一行が到着したと聞くと、国民は大きく喜んでいた。
勇者一行は彼らに助力するため、現在の状況について詳しく話を聞いた。どうやらこちらの三千ほどの勢力に対し、敵勢力はおよそ一万ほど。
城壁を使った守りに徹しているため、現状は持ちこたえているが、それもいつまで持つかわからない。国の兵士も終わらない攻勢に段々と疲弊してきており、いずれ均衡は崩れそうということだった。
守りに徹するだけでは勝てないと思ったユウヤは、自分たちが打って出て、敵の親玉を倒してくると提案した。その提案に彼らは喜びつつも、たった四人でそのようなことが可能なのかとも訝しんでいた。
けれど、実際にここで証明することは難しいため、自分たちの力を信じてほしいと言うことしか出来なかった。
そしてユウヤたちは現在、城門の外で魔王軍と相対していた。
いきなり城門が開いたため、魔王軍としても何が出てくるのかと警戒していたのだろう。けれど、出てきたのがたった四人だけとみると、明らかな嘲笑が見て取れた。
油断してくれる分にはありがたいので、四人は今のうちに攻撃を仕掛けることとなった。
まずケイトにより、ユウヤとルイスに攻撃・防御、後は早さが上昇する補助魔法がかけられた。次に、ニーナが敵軍勢を減らすため、大規模な魔法術式を発動するべく詠唱を始める。それを見て、ユウヤとルイスはその場に二人を残し、魔王軍へと駆けていった。
それを見ていた魔王軍は、こちらが真っすぐ突っ込んでくるのを見てあざ笑っていた。しかし、笑っていられたのは束の間だった。
背後から飛んでくる大量の氷の刃を見て、今までの態度を一変して、顔を強張らせていた。
ニーナの氷刃による攻撃魔法が敵に降り注ぎ、次々と敵軍を壊滅させていく。そして、いくらか数が減った敵軍の中、二人は道中斬り捨てつつも、その合間を縫っていった。
敵軍は混乱していたため、進んでいくのは簡単だった。補助魔法による効果も大きいのだろう、二人は親玉と思われる鬼人族の場所まですぐに辿りついた。
敵の親玉はこいつだと明らかにわかった。他とは異なり四メートルを超える体躯をしており、他の鬼人族から守られるように立っていたからだ。
二人は周りにいる護衛を手早く倒した。そして、ようやく親玉と対峙する。
「貴様ら、一体何者だ?」
奴がそう問いかけてくる。
「僕たちは勇者パーティだ!」
「勇者? なるほど、貴様らがそうか。ならば、ここで俺が始末しておくとしよう」
「はっ! 出来るものならやってみな!」
こうして、魔族の親玉との戦闘が始まった。




