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俺が勇者になったワケ

「はぁはぁ・・・クソッ」

 俺は今帝都の裏路地を駆け巡っていた。

 理由は簡単俺がある貴族の持つ宝石を盗んだからです。

 助けて(泣)。

 いつもなら俺の能力があれば余裕で逃げられるんだが

 今回は違った。

 この世界には皆さんご存知の魔法が存在する。

 それを使うには当然魔力を消費する。

 こんなに俺がピンチなのはこれが理由である。

 そう、魔力が底をつきました アッハッハッ。

 笑い事じゃねぇ。

 そして絶賛お巡りさん達とドキドキ鬼ごっこ中です!!

「いたぞ、囲め囲め」

 ああ皆さん、俺の獄中生活に乞うご期待。


 皆さん、こんにちは 僕は今冷たい石の部屋の中です。

 わーい今日から衣食住が保証されるぞー(棒)

「囚人ナンバー110番出ろ」

 俺が牢屋でゴロゴロしていると看守の男が声を荒らげている

「おい!110番 お前だよ、お前、リアム・ロレット」

 誰を呼んでいるのかと思ったら俺でした。

「最初から名前で呼んで下さいよ、ナンバーで呼ばれても覚えられませんって」

「いいからさっさと来い」

 実に無愛想な看守に案内され連れて行かれた先には2人の男が待っていた。

 部屋の様子は中央に机が有り、対面するような形で椅子が1つづつ設置されている。

 1人は椅子に座り、もう1人は奥で記録用の魔道具を操作している。

「座れ」

 看守に促され俺は席につく、それを確認すると2人の男に挨拶し看守は部屋の外に出ていった。

「君がリアム・ロレットか」

「ええ、そうですよ」

「お前に対する判決が出た。お前は死刑だそうだ」

「は?」

 俺にとっては衝撃的な事実が淡々と告げられた

「ちょっと待って下さいよ、いくらなんでも死刑はないでしょ」

「確かにお前がやったのは窃盗だだが10年に渡り犯行を繰り返し、しかも相手は全員貴族、お偉いさん達満場一致で死刑だとよ」

「ふざけるな、ふざけるな、バカヤロー

 金持ちの気まぐれで死んで溜まるかよ」

「いや、気まぐれじゃねぇよ」

 そんなことを言いながら男は俺を白い目で見ている。

「まあ、落ち着け、話はこれだけじゃねぇんだから」

「なんだよそれ、デスゲームへの参加でもさせられるのか?」

「まあ、あながち間違いじゃねぇ、お前に魔王討伐に参加してもらう」

 男の話をまとめるとこうだ。

 この世界には魔物を束ねる王、魔王がいる。今まで帝国は幾度となく魔王軍と戦争を繰り返している。ただ帝国も魔物だけに裂く戦力はない。現在は魔王軍を抑えるため世界各国は停戦同盟を結んでいるが、互いに戦争で疲弊仕切れば他国に取り込まれる危険性もある。

 そこで提案されたのが冒険者というシステム

 兵士とは別で志願者を募り国が運営するギルドからクエストを受け仕事内容によって報酬が貰えると言うもの。

(いざとなれば兵士にもなるぜって魂胆らしい)

 そして1組だけ国がメンバーを集めた『勇者』と呼ばれるパーティーが存在する。そのメンバーに抜擢されたそうだ。

 そして、見事魔王を倒せば俺の死刑は取り消しされるそうな。

「なんで俺なんかを選んだんだ?」

「実はここ数年結成した『勇者』が結成して数日で消息を絶っている」

 え?何それ、俺どの道死ぬのでは?

「まあ、そんで人が足りねえから罪人でも使えるもんは使うってことらしい」

 俺のどこにそんなに目を引くところがあるんだよ

「正直言って王都の警備隊から10年も逃げ切れるのはお前ぐらいさ」

 俺の心のツッコミを知ってか知らんでかなんか答えが帰ってきた。

「まあ、どうするかはお前の自由だが、今ここで決めろ」

「喜んでやらせていただきます!!」

 そんなもの即答に決まってる。

 俺はまだ死ぬ訳には行かない。

 食い気味な俺の態度に2人とも顔をひきつらせているがそんなものは関係なかった。


 その後俺は別室に移動させられ風呂に入らされた。さっぱりした俺の前には真新しい服が用意されている。

 黒を基調としたダークコートだった。

 その後は国王直々に行う任命式があるらしいので待機となった。

 ぼーっとしながら適当にお茶請けを貪っているとまた呼び出しを受けた。どうやら他のメンバーと対面させるらしい。

 この合うやつでもいればいいんだがな。


「ガチャ」

 という音と共に開いた扉の先には綺麗な容姿の少女が3人。

 あれ?もしかして役得?

「ヤッべ」

 この発言は下心からでは無い。3人のうちの1人に見覚えしかないやつがいたのだ。

 綺麗な赤のロングヘアー、全身ミスリルの鎧に包まれたその少女は俺が先日宝石を盗んだマルグリット家の1人娘ルイーズだった。

「最後の1人が罪人というだけでも頭がいたかったのだけど・・・

  よりにもよって貴方だったなんて」

 わぁー早速 嫌悪されてるー。

 まあ当たり前だけどなハハハ・・・

「いい!貴方は何もしないで、魔王を倒した後で貴方の無能ブリを報告してすぐに死刑にしてあげるわ」

 そしてめっちゃぶっそーなこといってるー。

「落ち着いて下さいよ、ルイーズさん。少なくともしばらくは仲間になるんですから」

 ルイーズはフンッと鼻を鳴らし少し離れたところにある椅子に腰掛けた。

「私はソフィア・リディエルです。役職は魔法使いですのでよろしくお願いします。」

 先程ルイーズを宥めてくれた少女である。

 白い髪に群青の目が特徴の少女である。服装はよくありそうな黒のローブではなく髪と同じ白を基調としたワンピースである。

「魔法使いだって、お前いくつだよ」

「フフッ、女性に歳を聞くなんて失礼ですよ、まあ私は気にしませんけど、ちなみに年齢は18です」

「はぁ!?お前ぶっ飛んでんな」

 この世界では魔術師と魔法使いが存在する。

 魔術師は魔法が使えれば誰でも名乗ることができる言ってしまえばなんちゃって役職なのだ。俺だろうが、そこら辺の子供だろうが名乗ることができる。

 それに対して魔法使いは国際法に定められた試験を突破したものだけが名乗ることができる。その試験内容は3段階。

 どれも決められた魔法の使用が合格の条件である。

 対人戦魔法までを扱えるC級。

 それに加え他者への高位のバフ、デバフをかけられるB級。

 さらに結界術や錬金術などの専門分野も操ることができるA級。

 その上にアホみたいな威力と範囲の魔法を操れるS級がある

 あれ?4つあるじゃんと思うだろ。

 S級なんて名前だけでそんな器1000年に1度レベルの人材見たことないんだなあー。

 だから大体の人間がA止まりで現在存在する魔法使いは3段階である。

「階級聞いてもいいか?」

「C級ですよ、まだ18ですし」

 ちなみにC級は25歳でなれれば優秀とされている。

「それでも十分すげーけどな」

「ありがとうございます」

 フフッと微笑む姿はなんとも心が和む、どこぞのツンケン貴族とは大違いだ。

「それで、お名前は?」

 そういえばまだ名乗っていなかった。

「俺はリアム・ロレット、まあこそ泥やってた」

「え!あの怪盗リアムですか」

「ノア!!」

 途中で興奮気味に俺によってきた最後の少女にルイーズが声を荒らげるが、俺がそちらを向くとバツが悪そうに顔を背けている。

「怪盗はやめてくれ、ただのこそ泥だよ」

「でも、この10年捕まらなかった大怪盗って帝都じゃ有名ですよ」

「そんでもこうして捕まってるだろ

 それより、お前は?」

 ああ、すいません。と言いながら少女は身だしなみを整える。

「僕はノア・アリエッタ。帝国軍でそちらのルイーズとバディを組んでいました。一応シールダーです」

 それで合点がいった。つまりルイーズは俺にノアを取られるのが嫌な訳だ。

「僕?」

 自己紹介を聞き一人称に違和感をおぼえる

 なんだこいつ、僕っ子キャラか?

「そうです、僕よく間違われるけど男なんですよ」

 ああ、男の娘でした・・・

 えっへんと胸を張るっているがどう見てしも少女である。

「そういえばルイーズとはどこで知り合ったんですか?」

「あいつの家に忍び込んだからここにいるのさ」

「じゃあルイーズに捕まったんですか?」

「いいや、あいつも能力持ってたみたいだがわかり易すぎだ俺にとっちゃ余裕だったね」

 ダァン

 その発言にルイーズが急に立ち上がり机を叩いたのだ。

「私が弱いですって」

 いや、言ってねぇそんなことは断じて言ってねぇ。

「誰があんたの魔力を枯らしたか忘れたの?」

「その魔力の枯れた奴に逃げられたのは何処の誰だったのでしょう」

「なんですって、やっぱりあんたは今殺す」

「やれるもんならやってみな」

 そんな時だった。

「皆様、式の準備が出来ました」

 1人の兵士が俺たちを呼びに来た。

 兵士に案内されたのは大広間である。

 そこは鏡合わせの作りになっており、名前もわからん花とか知らねぇ おっさんやらが玉座を中心に並んでいる。

 そして玉座には当然この国の王様がドーンと座っている。

 俺たち4人は玉座の前に膝まづくように指示される。

 俺たちが位置に着いたところですぐに玉座横にいた神官っぽい人がなんか喋りだした。

「最後に国王様から各々に激励のお言葉をいただく」

 すると王様ほ席を立ち俺たちの前えと移動する。

「ソフィア・リディエルそなたの魔法の才にはとても期待しておる。そなたの才ならば魔王を倒すまでにさらなる成長を期待しておる」

「はい、そのご期待に添えるよう精一杯頑張りたいと思います」

「ルイーズ・マルグリット、そなたの剣の腕はこの国でもかなりのものだ、これまで培った全ての力を今回も存分に奮ってくれ」

「お任せ下さい、この力で必ず魔王を討伐して見せます」

「ノア・アリエッタ、そなたは味方を守る盾である、どんな攻撃だろうともそれを防ぐことが出来れば味方の損害はないそなたにはそれができる力がある。期待しておるぞ」

 無茶苦茶なこと言ってるんだけどこの人・・・。

「リアム・ロレット、実を言うとそなたを推薦したのは私なのだ」

 おいおいまじかよ、初耳なんですけど・・・魔王に殺されて来いってか?

「聞いておると思うが、何故か今までに送り出してきたもの達はすぐに消息を絶っておる、何が起こるか分からない旅となるだろう。そんな時にそなの知恵と起点で突破してもらいたい」

「わ、分かりました・・・」

 高々10年逃げ回ってただけの俺に何をそこまで期待しとるんだこの爺さんは・・・。

 その後はある程度の荷物を持たされ、門へ移動し、大勢の住民に見送られ出発した。

 この後俺たちは隣町のギルドにメンバー登録をしに行く

 なんでわざわざ隣町に?

 答えは簡単、帝都にはギルドがないからでーす。

 王都周りわ比較的モンスターが少ない、そしてモンスター駆除は帝国兵士の訓練がわりにされている

 よって帝都内にはギルドの設置がされていないのである。

 国王が隣町までは馬車を出すと言ってくれたのだが、どこぞの馬鹿貴族が俺と同じ空気を吸いたくないと駄々をこねたので徒歩で向かうことに・・・。

 ほんとだるい、こいついない方がいいんじゃないの?

「そういえば、リアムさんは盗んだものをどうしてたんですか?」

 不意にソフィアがそんなことを聞いてくるルイーズはノアと距離をとって歩いているのでいいのだが、もし聞こえていたらまためんどくさいことになって居そうだ。

「普通だよ、売って生活費の足しにしてたんだよ」

「そうなんですか?コレクションとかしてるのかと思いました」

「あー、それぐらい余裕がありゃぁ良かったんだがな」

「でも、今までに盗んだお宝があれば一生遊んで暮らせそうですけど・・・」

「俺1人ならな」

「どういう意味です?兄弟とかいらっしゃるんですか?」

「まあ、そんなとこ」

 他愛ない?会話を続けながらギルドに向かう俺たち、まさか序盤からあんな目に会うとは思ってなかった・・・。

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