魔女と少女
「……ティーラさん、入りますよ。」
ドアの向こうから、声が聞こえる。
「あぁ、オリアか。」
メイド服を着た少女が入る。
「はい、朝食出来ました。」
今日の朝食はパンとスープ。
「残さず食べてくださいね。」
▪▪▪
魔女の名前は『ティーラ』。
現世では居なくなったとされている魔女族。
ティーラは、その魔女族の生き残りとされている。
魔力は薄いとされている。
……のだが、『呪いの生き残り』と怖がられて
人気の無い、木の根元にある家でひっそりと暮らしている。
そして、少女の名前は『オリア』。
彼女には親が居ない。
と言うのも、彼女の母親はティーラの妹だ。
腹違いの生き別れた妹なのだが、魔女族の事で厄したのだ。
確か、あの日の夜だったか……
▪▪▪
「……よし、洗濯物は干したと。」
雲一つない夜空。
今日の分の洗濯物、乾きそうだ……
「………っ!?」
身体が急に動かない。
頭も痛い。
『………た、すけ……て、お、お姉ちゃん……』
耳鳴りの合間に、微かに聞こえる声。
「この声、もしかして……シェーラ?」
『わ、わたし……い、いや……!』
残虐な映像が脳内に出てきた。
あれは、魔女狩り?
それに、まだ幼き子の姿……
『お願い、その子だけは………!』
映像が途切れた。
「急がなきゃ……!」
▪▪▪
上着と箒を持つ。
念のため、気配が薄く出来る魔法を唱える。
万が一のため……
箒に股がって空を翔び、街の方面へ向かう。
シェーラの家は、わりかし郊外の所にあった筈だ。
街へ近づくと、一本の煙が見える。
あの方面、シェーラの家だ。
スピードを上げて近づく……
「……嘘、でしょ……」
やはり、煙……火事のあった家はシェーラの家だった。
「そんな、あの子は……」
ピーっと、指笛が聞こえた。
音のなる方を見ると、桜の木の根元にマントを着た男性が、何かを抱えている。
「……ミベラ!」
ミベラは、違う魔女族の生き残り。
彼は魔術師として、飄々と旅をしている。
「嫌な空気がして通りかかったら、魔女狩りに出くわしてしまってな。」
「その子……。」
「……ああ、何とか救い出せたよ。……だがな。」
その言葉で、すべてを悟った。
それから、赤子に『オリア』と名付けて育てている。
▪▪▪
「………ティーラさん?」
オリアは顔を覗きこむ。
「……ん。」
「大丈夫、ですか?」
「大丈夫よ。」
「……そう言えば、顔似てると思っているんですよ。……本当のお母さんでは、無いのですよね?」
とうとう、話すときが来たのか。
「貴女の本当のお母さんは、わたしの腹違いの妹だったのよ。そして、わたし達は『魔女族』なのよ。」
オリアは驚かなかった。
寧ろ、わたしを気遣う表情を見せた。
「私は、ティーラさんの味方ですよ。……何があっても守ります。」