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夜明けのまにまに  作者: AL Keltom
本編
51/88

48,再会

流血、微グロあり

 



 ――私建物の入り口から何かを蹴破る音が聞こえた。



 そして隣の部屋から同じ音が聞こえ、徐々にその音が大きくなってくる。

 もう色々考えていられる状況ではなかった。


 この建物は入り口を抜けると奥に長い廊下が続いていて、通路の右の壁にいくつもの扉が連続した等間隔で配置されている。

 現代の建物で言うなら、マンションの通路が連想できる。


 そして、俺たちがいる部屋はいわゆる角部屋、ではなくその一つ隣の部屋。

 おそらく侵入してきた者たちは俺たちが建物のどの部屋にいるかまでは分かっていないようだった。

 その部屋に窓が無いのが幸いしていた。もし外から覗かれでもしたら、潜伏場所がバレて奇襲すらできなくなるだろう。



「トピア様はベットの下にでも隠れていてください!」


 ミーニャがかすれ声で俺に移動を促してきた。

 俺は、音を立てないように素早くベットの下に身を潜める。



 ミーニャとフィアルは言い合いをすぐに止め、部屋の扉を入ってすぐのところの左右で陣取った。

 そこはさすが亜人の血と言うべきか、二人で作戦を話し合っていたわけでもないのに考えていることは息ぴったりだった。

 メイの件でもそうだったがさっきまで敵対していたというのに、

 共通の敵がいればこんなにも団結できるものなんだなと、俺は思った。



 ――そして、二つ隣の部屋から音が聞こえ、すぐ隣の部屋から音が聞こえ、そして、俺達は息を飲み込んだ。







 ――瞬く隙も無かった。それはあまりにも一瞬だった。



 扉を蹴破られ闖入する者らの服装は、全員黒ずくめで顔すら見えない。

 部屋に入ってきたのは二人、短刀を装備していた。その服色といい、武器といいどこぞの隠密組織か何かかと思った。


 ――そして問答無用で攻撃してくる。


 しかし、こちらは二人とも扉の入り口から死角に居たこともあり、最初の二人は即座に切り倒した。

 黒ずくめは胸を斜めに切りつけられ、そこから出た鮮血が二人を染め上げる。



 それでも、扉からはまた同じ格好、同じ武器を持った者が二人入って来る。今度はそう簡単には倒せない。


 奇襲というのは一度しかできないものだ。なぜなら一度攻撃したら、敵に奇襲者の居場所が分かってしまい、それは奇襲としての用を成さないからだ。



 黒ずくめとフィアルたちは間も無く剣戟に入る。


 しかし、俺はどこか安堵していた。

 なんだかんだ言って、ミーニャは頼りになるし、フィアルもあの目ざましい武器を持っている。

 状況の打破など何とかなると思っていた。


 しかし実際ミーニャの持ち武器はナイフだから何も問題ないのだが、フィアルは細長い剣、天井の低い室内で振り回すと天井に当たってしまう。それではあまりにも不利だった。




「ちょっとフィアル!?早くあの技使っちゃってくださいよ!」


 二対二の戦い、実力派ほぼ互角だった。

 しびれを切らしたミーニャがフィアルにそう呼びかけた。

 あの技というのは、たぶん広場で俺たちに向かって放たれた技だろう。


「それは無理!こいつ、手数が多くて……あの技は構えが要るし、あんたも間違えなく巻き添えになる!」


 フィアルはさっきまで、殺したいほど恨んでいた相手を気遣っていた。

 しかしそれほど、今の状況がひっ迫しているという事なのだろう。




 ここまではまだよかった。

 二人の戦いは拮抗しあっている。しかし、ミーニャもフィアルも目の前の敵に集中しきっていて、部屋の外に潜んでいた敵までは気を配れなかった。



 潜んでいた敵も黒ずくめで数は二人、しかし持っている武器は短剣ではなく弓。

 扉から腕だけを出し、そいつらは卑怯にもミーニャたちの不意を突いて首元に向かって同時に矢を放った。


 そして――



「「――ぐガっ!?」」


 二人は思考外からの攻撃、首に走った激痛に短い声を上げその場で膝を突く。


 あまりに美しく、あまりに鮮やかに二人が同時に倒れるその様子に、感嘆すら漏れそうだった。

 だがそれは戦っている二人にあまりに不敬だ。俺は声を必死に押さえた。

 しかし膝から崩れ落ちた彼女らは、狼狽えるでもなく、落ち着き払っていた。




 ――矢に首元を貫かれた二人はその場に跪き、両手を首元に当ててゆっくりと呼吸を整えている。

 傷口からの出血こそほとんど無いものの、二人のこれ以上の行動は明らかに無謀だった



 俺は一瞬二人を助けようとするも、膝を突いたミーニャがこちらに視線を送ってくる。

 出てくるな、という意味だろう。しかし首元に刺さったその矢は明らかに重症だ。何とか助けなければと思った。

 しかし、思考をいくら巡らせたところで俺一人だけでは、この人数をどうこうできるとはさすがに思えない。





 ――などと思っていたら、黒ずくめの連中は部屋から撤退していく。ご丁寧に切りつけた味方の死体を回収していった。

 何が何だか分からない、しかし俺はそれを見るや否や、ベットの下から飛び出し二人のもとへ駆け寄る。



 しかし、俺もひどく慌てていた。部屋に一人黒ずくめの奴が残っていたことに気が付かないくらいには。



 俺が二人の近くで屈もうとした瞬間に、正面に居た黒ずくめに俺の首元が手で正面から掴まれる。

 そして、そのまま片手で俺の体重を持ち上げ、俺の体は宙に浮く。

 首が絞められているわけではないので呼吸はできるが、自身の全体重が首に乗っていたらそれは間違いなく痛い。

 何とか体重を分散させようと、俺は手で掴まれている手首を強く握った。



 黒ずくめは一言もものを言わず、自由なはずのもう片方の手で短剣を持ち、振り上げる。





 ――走馬灯も流れない。実際死ぬときはこんなものか……





 俺はゆっくり目を瞑る。そんな時だ。横から声が聞こえてきたのは……



「――あたし言ったわよねー?その男には傷一つ付けないでって……」



 目を開けると黒ずくめの頭には横から剣が刺さっていた。耳から反対側の耳に貫通しており、頭の両方から血が噴き出している。




 ――私それはこの世界で初めて聞いた随分と懐かしい声だった。


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