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夜明けのまにまに  作者: AL Keltom
本編
45/88

43,尋問

 


 ――部屋の前に立つと中からはうめき声のようなものが聞こえる。



 俺が中に入ろうとすると、後ろからミーニャが沈黙したまま先に部屋に入っていった。俺も続いて部屋の中に入った。

 ミーニャが壊した扉を尻目に部屋の中を見渡すと、ミーニャが俺に向かって目配せしてきた。きっと何か作戦があるのだろう。


 気絶から目が覚めたフィアルは、首を上下左右に捻って何とか目隠しを外そうとしているようだった。

 やがて、人の気配に気づいたようで――



「誰!?もしかしてアル!?手足が縛られていて動けないの!お願い助けて!」


 懇願する感情的なフィアルに対し、ミーニャは冷淡にそして絶望を告げるように言った。


「彼はここにはいません。騒いでも彼の耳には届きませんよ」


 その声は今まで聞いたことが無いくらい冷徹で、俺への囁きとは違った意味で寒気がした。

 ミーニャはどうやらフィアルを尋問したいみたいだ。ミーニャが目配せしてきた理由も察しがついた。


 俺は音を立てないように、その場に居座る。


「ミーニャ!?アルをどこにやったの!?早く返して!!」


 彼女は床に突っ伏したまま、声を荒げる。


「彼の意志も関係なく、無理心中しようとしたくせに、それでいて返して??ふざけるのもいい加減にしてください!!」


 ミーニャの怒りはもっともだ。俺もフィアルに殺されたら少なからず恨むだろう。


「――っ……あなたには関係ない…!勝手に私たちの仲に入ってきて、アルを奪おうとするなんて、卑しい亜人がっ!」


「勝手に吠えてればいいです。結局あなたには何もできないのですから」


「吠えてるのは犬のあなたでしょ!!」




 ……なんというか、俺はその光景が異常に見えていた。

 先程は阿吽の呼吸で、画策をしていたのに、今は水と油のように反発しあっている。

 ミーニャが言っていた亜人の血というやつが一切効いていない。

 それだけ彼女らの譲れないものに対する信念が強固なのだろう。


 そして彼女たちの譲れないものというのが、俺という事も複雑な気持ちだった。

 俺は自分自身にそこまでの価値があるとは到底思えない。

 前世でもそうだったし、事実この世界で目覚めてからも役に立つような事は何も出来ていない。


 それなのに彼女らがそこまで頑なになる理由が俺には理解できなかった。



「――なぜあなたがそこまで彼に執着しているのか分かりませんね」




「あなたなんかに分かるわけないわ!!アルが居なくなった時の私の虚無感!虚脱感!寂寞感!寂寥感!

 …私の心が空っぽになってどれだけ自分で慰めても、何をしても満たされない。アルが居ないこの世界なんかに私は何も価値を見出さない!!」



 …“見出せない”ではなく“見出さない”と彼女は言った。

 もしかしたらその彼女の考えが、あの狂気の沙汰紛いの行動に出た理由かもしれない。



 ミーニャが達観したように言った。


「――結局、あなた自身の為の利己的な考えなんですね。そんなものに一方的に巻き込まれた側の気持ちも考えてください」



「うるさい!うるさい!!私は彼が居ないと生きていけないだけなの!!あなたこそ、私たちの仲に横から割り込んできたくせに、しかもアルの気持ちを踏みにじるかのように無理やり変なことを言わせるなんて、頭おかしいんじゃない!!?」



「彼は受け入れていましたよ」



「だから、あなたが彼のやさしさに漬け込んで、理不尽で無理やりに彼に強いたんでしょ!?

 私はあなたなんかとは違う!正式に婚姻関係を申し込んで、彼は受け入れてくれた。あなたは所詮、人の恋路を邪魔するだけの単なるお邪魔虫」



 フィアルがそう言った瞬間、ミーニャがこちらに顔を向ける。その顔は怒りと困惑を混ぜたような顔だった。

 無言だが俺に事の真偽を確かめたいようだ。


 勿論だが、そんな事実は記憶にない。いや、記憶を無くす前に交わしたものなのかもしれない。しかし、それでもそんな約束があるなら最初に言いそうなものだが……



 ――俺は無言で、首を横に振って、無言の問いに答える。

 ミーニャは一先ずこっちを置いておいて、フィアルの尋問を続ける。




 そんな風にしばらく言い合いを続けるとフィアルが言い放った。自慢げに、そして口元に笑みを浮かべて、


「――それに私はアルに言われたの!愛しているって!それも名指しで!

 ――あなたなんかとは違うのよ!」


 縛られて何もできない状態だというのに、やけに大口を叩く。


 ミーニャはと言うとフィアルとは対照的に歯を噛みしめ、苦々しい顔をしている。

 圧倒的優位な立場に居ながら、なぜそのような顔をするのだろう。

 しかし、すぐに表情は余裕のものに変わる。



「本当におめでたい頭をしていますね!あれが彼の本心だと本当に思っているんですか!?」


 ミーニャは声を荒げて、態度を大きくする。



「当たり前でしょ!?アルに聞けば、すぐに分かるはず!だから早く返しなさい!いや返せ!!」


 フィアルも声を荒げて、対応する。


 そしてミーニャがその言葉にニヤリと笑うと、言った。



「――それでは聞いてみるとしましょう。今、この場で!!」



「「――えっ?」」


 二人の短い驚きの声を聞いた。




 ――ミーニャはフィアルの目隠しを取りはらったのだった。


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