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第一話 追放



「サヤ、悪いが今日限りでパーティを抜けてくれ」


 それは晴天の霹靂というほどの物ではありませんでした。

 絡みつくような不快な視線や過度なボディタッチが増え、直接的な「抱かれろ」との言葉を頂き遂に我慢の限界を訴えた次の日のことだったからです。


 私は勇者パーティから追放の宣告を受けました。



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 ここは冒険者ギルドが運営する酒場。


 冒険者ギルドとは誰かの困りごとを依頼と管理し、その依頼をこなせる人物に斡旋する組織のことです。そして冒険者ギルドに登録した人たちのことを冒険者と呼びます。

 そして依頼を個人で達成することが困難なときに結成されるのがパーティです。

 しかし、それとは別に国が指名し管理する専属の冒険者があります。

 それが勇者パーティでありそのパーティの質がそのまま国評価に繋がると言われています。

 そのため冒険者パーティのランクはE~Sまでありますが、勇者パーティは最低でもAランク以上であり大体どこの国もSランク相当のパーティを抱え込んでいます。


 当然ながら勇者パーティにおける人事権は私達であれば所属する国にであるリンドブルム王国の国王にあります。

 たとえリーダーであろうと、勝手に追放するというのは許される事ではありません。

 本来であれば…ですが。


(理由は…聞くまでもないでしょうね。)


 黙って見つめる私が不服であると捉えたのかパーティリーダーは続けます。


「パーティメンバーと碌にコミュニケーションも取れない。間を取り持とうとするリーダーに対する配慮を無下にし和を乱す。そんなメンバーなど必要ないだろう?」


本来であれば否定したい内容ではありますが、言い返すだけ無駄でしょう。

ですが最後に確認だけはしておかないといけません。


「えぇ、リーダーがそう仰るのでしたら仕方がない…と言いたいのですがパーティの人事権は国王様にあるのでは?」


「ふっ…。陛下には息子である僕から説明しておくから問題はない。」


 そうこの勇者パーティのリーダーであるシルバー・リンドヴルムはリンドヴルム王国の国王であるゴル ド・ウェスティン陛下の息子なのです。

 説明と言いつつ、あることない事を誇張して伝え私の評判を貶めるつもりでしょう。

 ですが言質は取りました。カチリと何かが外れる音がしました。


「そうですか。それでは今までありがとうございました。」


 そうして私はその場を去ります。このパーティを離脱したくずっと耐えてきました。ようやくそれが叶うとのことなので内心小躍りしてしまいそうですが、平静に返事をします。

 しかしそれが気にくわなかったのでしょう。


「ははっ、栄誉ある勇者パーティから追放されたお前に行く先なんてあるのか?本当は内心悔しいのであろう?自分の価値を高めようとする女は今までいたが、君にそれほどの価値はない。だと言うのに何度も僕の誘いを無下にするなんてな。後で後悔しても遅いからな?」


 王子様は早口で捲し立てます。よほど私が焦っていると思い嬉しいのでしょう。そのような顔を見るだけでも苛立ちが収まりませんが今日はとても気分がいいので聞かなかったことにしましょう。

 私は何も言わずにその場を後にしようとします。


「な…おい!聞いているのか!君はいつもいつもそんな態度でっ…ておいまて!くそっ!」


 追放だと言っておきながら待てとは本当に自己中心的な方ですね。

 というよりこのまま後を追いかけてきそうですね。物凄く嫌なのですが。

  

「シルバー様お待ちになって」


 どうやらシルバー様は他のパーティメンバ呼び止められた様子。この隙に撒いてしまいましょう。


「すまない、リンダ。今は少し忙しいから後でな?」

「いやですわ殿下…リンダ、殿下の側を離れるなんて考えとうございません。」


 そうしてシルバーがリンダに絡まれていたために私はその場を後にすることができたのでした。




 全く、放蕩王子は困った人でした。勇者パーティを自分のハーレムか何かと勘違いしているのではないでしょうか?

 ウェスティン王国の勇者パーティ「竜の花園」はその名の通り竜(王子)の花園ハーレム

なのでしょう。

 私は王子ももちろんですが、パーティメンバも好きになれない方がほとんどで、王子と私を除いて4人いるパーティメンバーの内3人は会話をしたことすらありません。彼女らの声を聴くときは私に対する陰口を言うとき位でしょう。王子に対して無関心な対応を、調子に乗って気を引こうとしている勘違い女とでも思っておられるみたいです。

 残り一人は礼儀正しく品のある方なのですが、どうも私が話しかけると早々に会話を切り上げてどちらかへ行かれてしまいます。


 この国に来てから4年が経ち勇者パーティに所属して4年が過ぎました。短いようで大変長かったです。


 ついに


 ついに




 憎くて憎くて殺したくて殺したくてたまらない方たちの全てを奪う機会を手に入れたのですから。









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