嫉妬
えー。前回の話しが遅れての投稿となったので、二話一気に投稿します。そこまで、書いてないのが恐縮なところではあるんですけど笑
大体一話につき2000文字書ければ、御の字かな。と思って書いてます!
短い文章で進んでいくので、時々頑張って多くかけれるように意識はしていきますので、どうか応援のほど、よろしくお願いします!!
お洒落なカフェや中華飯店。少し歩けば、ファミリー向けのレストランなど。
有り体にそう言った飲食店が密集する通りがある。
更に少し先に見えるラーメン屋の向かいが、今日の夕食を。と買い物に出かけた母さんの良く通うスーパーマーケット。
あまり、僕はこちらの方にまで出てくることはないが、母さんの荷物持ち程度であれば幾らか橋を運んでいる。
それでも、目的は大抵夕食の買い物がメインで有り、他に用事があるわけでもない。
必然的に興味のない店などは視界の端に入っても、新しい店が出来たのか。と思うに止まってしまう。
行ってみたい。とか、何の店なんだろう。とか。正直どうでもいいのだ。
故に、今僕が珍しく母さんの手料理以外を口にしていることや、このお店がどの程度の認知度を誇っているかなどはどうでもいいと言える。
更に付け足すならば、向かい側に座っているこの女の子の事も僕は知らないし、どうでもいい。
「ん?どうかした?」
少し見つめすぎた。
「……」
僕の視線に気づき反応した彼女の言葉を他所に今回も無言を貫く。
湯気がふわりと鼻にかかる。
あー、忘れていたそう言えば、柄にもなくこんなの注文してた。
彼女は今も小首を傾げて不思議そうに見つめていたが、一度も目を合わせる事なく。フォークに手を伸ばす。
メニュー名でいえば、シェフ自慢のカルボナーラと言うらしい。
くるくるとパスタを巻きつけると、鼻孔を擽る濃厚なソースの香りが食欲を引き立てた。
一口チュルリと咀嚼する。
ん。案外美味しい。
滅多に食べないものながら、偏食である自認する僕の舌には合った。
それからは、黙々と食べ進める。
「へぇ。ちゃんと人間なんだね。神川くんも」
何か思うところがあるのだろう。
彼女は、自分の頼んだパスタを皿に添えて、頬づえをつきながら僕を眺めていた。
何を失礼な事を、僕だって人間だ。
当たり前のことを、その微笑みで言わないでほしい。
これではまるで、僕が人間ではないような口ぶりじゃないか。
「……」
「ふふっ。そんなにむすっとしないでよ」
思わず睨みつけていたらしい。
まあ、いいや。僕は早くこれを食べて出て行こう。
「なんかさ。神川くんっていつも人の事を避けてるじゃない?」
本当に何を行っているんだこの人。
僕らは初対面だし、接点もないはずだ。
普段の僕を知ったような台詞を吐くんじゃない。
「あ、一応教えておくけど。私達同じクラスだし。朝だって放課後だって話しかけに行ってたからね?……ま、ほとんど俯いて無視されてたけど」
ん?同じクラス?
確かに朝も放課後も迷惑なほど、話しかけてくる奴がいた。
実際それがこいつだと言われれば、少しは納得はいくか。
「でね。無視されたのは私の押しかけみたいなのもあるから、いいんだけど」
無視されていることは、別にいいのか。
「私ってさ見ての通り。可愛いじゃん?さっきの櫂くんの事もそうだけど、モテるんだよね」
櫂くんとは、多分少し前に喧嘩別れした不良な彼のことだろう。一度名前を呼んでいたのを覚えている。
というか、何を真剣な顔して自慢話をしているんだこいつ。
「それでね。私ってわがままなんだ。モテるのは嬉しいんだけど、誰かのモノにはなりたくないの。わかる?」
「……」
僕にわかるわけがないだろう。
……めんどくさい。
「だけど、仲良くなればなるほど。みんな最後には私にこういうの。俺と付き合ってください。って」
私は幸せです。
いつもみんなに好かれています。
最後には私のことを愛してくれます。
……うざい。……うざい。……うざい。
別に、僕は人を求めてなどいない。
嫉妬してるわけでもない。
じゃあ。
……なんで僕はこれほどまでイラついている?
話しを聞いていれば聞いているほど、心の奥からドス黒い何かが止めどなく溢れてくる。
だが、彼女はそんなことは知らない。
話しは止むことなく、彼女の口は開かれるていく。
「だから、一番私を好きにならなさそうな神川くんに手伝ってほしいんだ!私がみんなといい距離感で仲良くできるように」
何も間違ったことを言っていないという瞳。
彼女は屈託もない笑顔でもって、僕にそう投げかけた。
対して僕はもう……無理だった。
「……もういい」
「ん?何??何か言ってくれたよね!なんて言ったの?いいとか何とか言ってくれてなかった??もしかしてオッケーな感じ?」
「……これから一切、僕に話しかけるな」
ガチャン。と音を大きく立てたフォークが机に転がる。
僕は財布から元々あった千円札を二枚彼女の前に差し出すと、店を出た。
いつもなら、こんなに怒ることはない。
良くも悪くも彼女は、僕には合わないと自覚できた。
店内に軽い鈴の音が出口の扉を閉めると同時に響く。
由香は力強く置いたフォークの音にびっくりした表情。姿勢のまま、固まっていた。
店を出てから横を通り過ぎる際、僕らが座っていた席が外の窓から見えた。
彼女は寂しい顔をして、もう冷えてしまったパスタを独りぼっちで口へ運んでいる。
その光景が見えた瞬間に、また僕の胸はチクリと痛みが走った。
でも、それは電車の中で感じた気持ちのいい痛みではない。
心臓を槍で一突きにされたような抉る痛みだった。