僕、見つめる。
僕の視界には時々僕が映り込む。
比喩でも例えでもない。ましてや、妄想や虚言でも。
頭を揺さぶっても、目を瞑ってみても、ただじっと見つめる僕がいる。
いつしか当たり前になったこの光景も僕は自然とそれに慣れていった。
どこからともなく現れるそれの存在を僕だけが知っている。
いつもは映らない。そんな僕の影が出てくる時を知っている。
笑えば映り。
泣けば映り。
怒れば映り。
感情が激しく揺さぶられるとそれは現れた。
笑っても泣いても怒っても……そいつはいつも無だ。
ふて腐れたように遠くを見つめて、動くこともない。
ただ、気付いた頃にはもう消えている。
前触れなんてない。あ。いた。と思えば、数秒。数分も数えぬ間にいなくなっている。
十七年の月日を共に生きてきた。
僕は自分の人生の在り方をその影から教わった。
何も感じてなどいないと思っていた遠い眼差しにも、ずっと見ていて分かったことがある。
違う感情が含まれた視線。心を置いてきてしまった僕の影から感じる重たい視線。
それは何かを羨ましがっていた。
いつも変わらない表情にいつもと同じ瞳の色。
それは昔から見てきたものと今でも何も変わらない。
でも、十七になった僕はそんな彼の思いに気づいてしまった。
彼から感じる思い。それは僕が見る世界を羨ましがっているということ。
羨望の眼差し。
彼は何も言わない。でも、ずっと見ていた僕は分かっていた。間違いなく彼はそれを持っているということ。
……僕の瞳は君から奪ったもの。
誰からも、神からすら与えられなかった僕の見る世界を、僕は君から奪ってしまった。
だからなのかな……。
いつしか君の瞳は僕の影を探している。