2017年4月13日
低音の落ち着いた音楽が耳に心地よく響く。
「おい、ケイ!」
肩を揺らされ、うとうとと落ちかけていたところを引き戻される。目をうっすら開いて、肩から伸びてる腕を追って、顔を見上げる。真っ赤な瞳と目が合う。
「あー…レッド……何?」
「何じゃない!!」
レッドに話しかけたつもりが、グイッと顔ごと持っていかれ、ふわふわと綿あめみたいな茶色い髪が見え、次に瞳孔が猫のように縦に裂けた黄色い瞳と目が合う。
「こんな状況でよく寝られるな!!」
「タマ、あれ? 縮んだ?」
「縮んでない!!」
座っている自分とほぼ変わらない目線の高さに、いつものやり取りをする。
ケラケラ笑っていると、右腕を持ち上げられブンブンと振られる。ちぎれそうなくらい痛い。
「敵が襲ってきますぅ!!」
今にも泣き出しそうな翡翠の瞳が、ずいっと鼻先がくっ付きそうなくらい近づいてきた。
「ジャンヌ近いっての、バカ!」
ジャンヌの顔面を抑えて引き離す。
「……ってか、敵?」
辺りを見渡すと、銃を抱えた何十人の男たちに囲まれていた。
「あーあ、折角気持ちよく寝てたのに…」
「ってか、演奏中に寝るな!!」
余談だが自分らはジャズバンドを組んでいる。
手頃なバーを見つけては、演奏をしてお金をもらっている。
レッドはサックス。
タマは
ジャンヌはピアノ兼ボーカル。
そして、自分はドラムだ。
「仕方ないじゃん、ジャンヌの歌声があまりにも眠気を誘うから」
「あ、ありがと…!」
「ジャンヌ、褒められてねーと思うぜ…」
結局敵そっちのけで口論が始まる。痺れを切らした男たちは、無警戒なレッドたちに向けて引き金を引く。
しかし、銃弾は空中で止まっていた。
「うっせぇな」
男たちを睨みつける。じりっとたじろいだ。
「雑音ってのが、一番嫌ぇなんだよ」
男たちに人差し指を向けて、デコピンをするように弾いた。
空中に浮いていた銃弾が一斉に、ケイから弾かれたように男たちに襲いかかる。
体が穴だらけになった男たちは力なく倒れ込んだ。
その様子を怠そうに見つめる。そして、「あ゛ー」と声を漏らして、椅子の背もたれに反るようにうなだれた。
「眠い…」
「お前は…年中眠そうだな」
「ヒヒっ、働いたから寝ていい? レッド」
「仕方ねーな」
ふぅと息を漏らしてレッドはケイを背負う。
ケイに激甘なレッドの行動に、タマとジャンヌはため息をついた。
ゆらゆらと歩く振動に気持ちが良くなり、ケイは一瞬で意識を飛ばした。
(。-ω-)zzz. . . (。゜ω゜) ハッ!