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第9日 冬の香

作者: 夜乃 ユメ

 一年を通して冬が一番好きかもしれない。寒い、ということ自体に幸せを感じる。寒いと温かさが欲しくなる。冷え切った状態から得る温かさの効果は絶大で、体の隅々まで沁み渡るような感覚だ。

 冬になると石油ストーブが置かれる。あの人工的に作り出される温かさと、それによる香りを嗅ぐと、私は冬が到来した気分になる。夜遅く、家に帰ると石油ストーブの香りが鼻腔をくすぐる。今年も冬が戻ってきた、と懐かしさを毎度感じる。

 小さいころから積まれてきた、自分の家での冬を直に感じ、季節の移ろいを儚くも嬉しく思う。人間を季節4種に大別すると、私は恐らく冬の人間だ。寒さに体が反応し、温かさによって、安心感を得る。どちらか一方が欠けてもこれは成立しない、究冬特有の究極的な醍醐味だ。

 冬は空気が澄んでいる。全ての汚れが浄化され、全ての生物が活動範囲を収縮している季節に、私は最も快活になる。何もかもが季節を超えるまで眠るように静かになる時に、それらが発する呼吸を聞くのだ。静謐な時間と共に、高揚が交わるのは、一年を通して冬だけだと思う。思いっきり息を吸う。香りはないに等しい。でも、冷たさと無臭感で、冬らしさが感じられる。

 今年も冬が帰ってきた。たくさんの静けさと寒冷、玲瓏な夜を携えて。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なろうには珍しいまともな日本語。読みやすい。 [気になる点] 興味を惹かれるようなフックがない点。 [一言] 冬への想いが丁寧に綴られていて、読んでいてホッコリしました。
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