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マジック&スカイ  作者: 安良久 理生
8/9

7 筋肉

 筋肉登場。

 夕ご飯を食べて一休みした後、VR用のヘッドギアを被ってから自室のベッドに横になった。すると脳裏にはメニュー画面が浮かび上がるので、いくつかインストールされているゲームの中から、『マジック&スカイ』を選択する。選択後にはゲームのタイトル画面が表示され、やがて僕の意識はゲームの中の町、第2エリアのポリネロンの転送スポットで覚醒する。この転送スポットは一人分のスペースがたくさん集まっているもので、大勢の人が利用してもぶつからないようになってはいるけど、ダイブインしたりステージから転送されてきた人がここに現れるので、いつまでもスポットを占拠しないように場所を移動する。


「やっぱロージーは来てないか」

 まだ少ししか埋まっていないフレンドリストを見ると、ロージーの名前はグレーアウトしていた。ケイトリンちゃんたち3人は、ダイブインしているようだけど今はまだ連絡は控えよう。


 僕は待機ルームへ跳んだ。第1エリアよりもルーム内に人が多いな。ある程度のグループを作っている人たちや、一人か二人くらいでいる人たちがあちこちに点在している。

 そんな人たちを横目にしながら、メニューを開こうとした時だった。誰か僕に話しかけてくる人がいた。

「なああんた、もしかしてソロかい」


 そちらを見ると、服を着た筋肉がいた。じゃない、全身これでもかとばかりに筋肉が付きまくった男が立っていた。

「ワリイな、驚かせちまったか」

 彼は少し申し訳なさそうに頭を掻いていた。

「あ、いや、大丈夫、ただスゴイ筋肉だなーって思っただけだから」

 僕は気にしていないよアピールのため、にこっと笑いかける。実際ちょっと驚いたけどね。


「あはは、すまねえな、さっきから何人かに声かけてたんだが、なかなか上手くいかなくてよ」

 彼は多分悪い人ではないのだろう、さっきからどこか遠慮勝ちだ。

「あー、そうなんだ。もしかして誰かパーティを組む人を探しているの?」

「ああ。別に自分一人でもいいんだがよ、なんだか味気なくてな。それで誰か一緒にパーティ組んでくれるやつがいないかと思ってたんだが、こんなアバターにしちまったからかもな」

 ……うん、正直に言うと、筋肉が付きすぎてちょっと引くかな。RPGだといかにも戦士職って感じなんだけどね。この人なんでこんな筋肉にしたんだろう。


「ねえ、ちょっと聞いてもいいかな」

「ん、なんだ」

「あー、気を悪くしないで欲しいんだけど、なんでそんな、その、筋肉だらけにしたの?」

「筋肉だらけ……、いやまあ、元から筋肉キャラが好きだったし、これまでプレイしてきたRPGは全部こんなガタイのアバターにしてたからな。こっちでも同じようにしてみたんだが、あまり意味がなくてな」

 割とそのまんまかー。うーん、ロージーには一人で遊ぶって言ったけど、確かに仲間がいないと味気ないかも。

「僕は今日から始めたばかりの初心者だけど、それでもいい?」

「おお、俺だって今日からの初心者だ。パーティを組むのなら初心者同士で気兼ねなく出来るってもんだ」

「それなら、僕も君とパーティ組むのは問題ないよ」

「そうか! 有り難え! 俺は金剛ってんだ」

「僕はヒロ、よろしく」

 そのまま僕たちはフレンド登録も交わした。金剛か、筋肉さんらしい名前だね。ちなみにミドルビーストを使っていて、これからもビーストを育てていくんだって。筋肉さんが声をかけたので、パーティのリーダーは筋肉さんに譲った。


「さて、それじゃどうするかい。俺は武器も準備したし、これから2-1ステージに挑戦ってとこなんだが」

「ああ、ちょうど僕もそうしようかと思ってたところだよ」

「それなら都合がいい。これから乗り込むか」


 そんなわけで、僕と筋肉さんは二人パーティでステージを開始した。あ、BGMが第1エリアと変わってる。

 キャノピーには毎度お馴染みとなった、ステージ中のミッションが表示される。今回は空の敵と海上の敵がいるんだね。スカイジェリー20体、シーホース10体だって。クラゲとタツノオトシゴかな。地面を見ると、半分は砂浜、半分は海になっていたけど、海の上には敵の姿は見えない。

『まずは空の連中からやっつけろ、ってこったな』

 筋肉さんの声がスピーカーから聞こえてきた。ロージー以外の声が聞こえるのってちょっと新鮮。

「だね。行くよ」


 僕たちの周辺には、20体ほどのクラゲっぽい魔獣が浮かんでいた。弱そうだけど数が多いな。

『ちょいと担当を分けるか。俺はこっち側を叩くから、ヒロはそっち側を頼むわ』

「ラジャ」


 筋肉さんは左側、僕は右側の敵へと接近する。そろそろ射程距離に入ったところで、まずは大雑把に狙いを付けて、メインウェポンのガトリング砲を発射。精密な射撃を行うほどのテクニックは、僕にはまだ無い。それでも下手な鉄砲なんとやらで、何発かは当たってくれた。続けてサブウェポン発射。今使っているボムは射程が短めな代わりに追尾型になっている。おっと、このタイミングでクラゲたちも丸い弾を撃ってきた。それほど弾速は無いようなので余裕で回避だ。って、回避行動に合わせて機首がずれるから、ドラゴンの首の近くに装備されているメインウェポンの狙いもずれてしまった。ずれた先にも別のクラゲがいるから、そっちを撃てばいいんだけど、なかなか当たらないからまだ一体も倒せていない。あ、HPが削れていたヤツにサブウェポンのボムが当たって一体だけ倒せた。


 うーん。これだとダメージを与えるのも一苦労だね。よし、敵さんの頭を抑えることにしよう。ちょいと機首を上げて高度を取りつつ、当たるかどうかなんて結果を見ずにサブウェポンを連射。距離が離れないように螺旋を描くような上昇コースを取る。いや、取ったつもりだけど、本当にそんな飛び方が出来てるかは分からない。

 それでも、十分に上がったと思えるところで機体を急降下させる。うん、思った通り僕よりも低い高度に敵が密集して昇ってくる。これなら当てやすそうだ。一体一体、しっかり狙いを付けて武器を連射、マナの残量にも気を付けつつ、敵を撃破するごとにターゲットを変更。サブウェポンは撃ちっぱなし。ここまでで半分の5体を撃破。


 クラゲたちの集団を通過したところで、やや大きく旋回し敵集団の元へ戻りつつサブウェポンのみ発射。うん、だいぶ慣れてきたね。

 残りの連中は、射線上の敵を普通に一体ずつ狙って倒していく。体当たりすることにならないよう動いてたつもりだけど、何発か敵の弾にも当たってしまった。でも全てシールドが防いでくれたし、マナの消費もあまり多くはなかったので問題無し。

 僕が最後のクラゲを倒したところで、ちょうど筋肉さんも終わったみたい。


『よおヒロ、そっちも終わったな』

「うん、筋肉さん。あとは海の上だね」

『え、筋肉?』


 キャノピーには、『シーホース出現』と表示されているので海を見ると、確かに海上に敵が出現していた。やっぱりタツノオトシゴだ。それが10体、海の上をこちらへ進んでいる。あ、なんかドリルみたく螺旋模様を描く水の弾を撃ってきた、狙いは甘いけど結構スピードが早いな。


『よっし、今度も二手に分かれていくか。俺は海上から接近するから、ヒロは空から攻めてくれ』

「ラジャ」

 筋肉さんのビーストタイプは一気に海面へと向かっていったので、僕は高度を上げて敵のほぼ真上に飛ぶ。ある程度の高さまで行ったら、そこから海へ機首を下げる。筋肉さんの機体も海上に到達して敵へと進路を向けたようだ。

 僕は筋肉さんの進行方向の右手側にいる敵を狙って、ガトリング砲を連射する。狙いのズレは、撃ちながら修正していく。よし、一体撃破。次。

 筋肉さんの機体からは、緑色の火の玉のようなものが発射される。さっき武器屋で見たな、多分グリーン・ボールだったか。連射性能が低いので僕はパスしたのだけれど、威力はそこそこあるみたいで、筋肉さんも順調にタツノオトシゴを倒していく。多少の被弾は無視して離脱せずに、そのまま直進して敵を分断するつもりのようなので、僕はサポートに徹して筋肉さんの行く手の周辺にいる敵を優先して倒していく。

『助かるぜ、ヒロ!』

「どういたしまして」


 僕は海面に近くなったところで、筋肉さんは敵の集団を抜けたところで一旦旋回してもう一度攻撃を仕掛けていくことを繰り返した。何度目かのアタックで、ようやっと敵を全滅することに成功した。

『よっしゃあ、最後の一体は頂いたぜぇ!』

 筋肉さんが最後のタツノオトシゴを撃破すると、キャノピーに『ミッションコンプリート』の文字が踊る。


「おつかれ、ヒロ」

「おつかれ、筋肉さん」

 町の転送スポットに転移後、僕たちはハイタッチを決める。

「初めて組んだ割には、なかなかいい連携だったな」

「ほんとだね」

「ちょっと歩くか」

 他の人の邪魔にならないよう、僕たちは酒場のある方へ歩き出した。

「ところでヒロ、俺のこと筋肉って呼ぶのは、やっぱり見た目のせいか」

「え? 筋肉さんの名前って筋肉さんじゃなかったっけ?」

「……金剛だ」

「……え」

 思わず僕はその場に立ち止まってしまった。筋、じゃない、金剛さんもなんだか困惑したような顔だ。

「う…その、ごめんなさい」

「ああいや、いいんだ、別に悪気があったわけじゃねえんだろう」

「そうなんだけど……申し訳ないです」

 うー、顔から火が出そうだよ。

「まあいいさ、お前さんが呼びやすいように呼んでくれや、はっはっは」

 金剛さんは豪快に笑うとバシバシと僕の背中を叩いてきた。ちょっと痛いけど、アバターにはHPの設定が無いのでダメージは受けない。うん、やっぱ筋肉さんでいいや。


 酒場は広場からすぐのところにある。そこそこ混んでいる店内の空いている席に座ると、さっそくやって来たウェイトレスのNPCに注文しようとしたところで、メッセージウィンドウが目の前にポップした。

「お、あと5分でレイド開始か」

 筋肉さんも自分のところに来たウィンドウを見たようだ。

「それなら、しばらくここで観戦してようか」

「そうだな、何か食うか」

 酒場の壁には、よくあるスポーツバーのように大型ディスプレイが設置されている。多分魔法で表示してるって設定なんだろうね。そのディスプレイは、レイド戦を含めて攻略中のステージがいくつか分割されて表示されるものだ。ただし、攻略しているところを非公開に設定した場合はディスプレイには出てこない。デフォルトでは表示されないようになっており、僕たちもそのままだ。何が楽しくて初心者の下手なプレイを晒さないといけないのかってね。なので、ここに表示されるのは、ある程度腕に覚えがある人たちと、団員を募集したい船団だろう。


 ウェイトレスには飲み物とサンドイッチ、フライドチキンセットを注文して僕たちは観戦モードに入った。

 次は2、3日中には更新したいです……。

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