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続・魔族大公の平穏な日常  作者: 古酒
魔武具騒乱編
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122 エピローグ

「なっ、どうした、アリネーゼ! 帰ったはずでは?」

 絡まれるのが嫌だからか、今日ばかりはヤティーンよりも早く、アリネーゼは退出していたのだ。だというのに……。

 いや別に! 焦る必要とかないんだけども、秘密の恋人とかでもないわけだし! なにか、してはいけないことをしようとしていた訳でもないしね!


「ああ……」

 アリネーゼは俺とジブライールを交互に見てから、一つ頷く。

「大丈夫、あなたたちのことはヤティーン公爵から聞きましたけど、別に何も思いませんわ」

「あ、うん……」

 本当に一片の興味もなさげな声で言われた。


「お聞きでしょうけど、副司令官公爵城への転居が完遂しましたので、ご報告申し上げますわ。同時に通信術式も設置いたしましたので、こちら、お渡ししておきますわね」

 そう言って、懐から『雀の横顔』の影絵の描かれた紙を差し出したのだ。そう、雀の……。


「忙しい身ですので、雑談でのご利用は、なるべくご容赦くださいませ。それでは、さようなら」

 そう言うと、俺が一度切ったこともある犀の角をツンと高く上げ、部屋を出て行ったのだった。


「なるほど、こういうのもありだったか……」

 ジブライールがアリネーゼの通信術式を、怖いくらい真剣な眼差しで見ている。

「こういうのって……?」

「あ、いえ! 私は単純に、紋章と同じく葵の図柄にしましたが、想う御方の姿絵にするという方法も」

「それはどうだろう! 俺は紋章と同じモチーフにした方が、わかりやすくていいと思う!」

 俺の横顔とかを城に刻まれても、それはそれで恥ずかしいし困るからね!


「なんにせよ、まぁ、とりあえずはスッキリしないところもあるが、一区切りかな……」

「スッキリしない……ですか?」

「ああ」

「えっと、それは……〈修練所〉のことではなく、ガルムシェルト関連のことで?」

「そうだ」


 魔王様の魔力を奪った実行犯であるヨルドルとは決着がついたし、彼を唆し、暗躍したとされるリシャーナも隠れていればよかったものを、わざわざ出てきて最終的には処断された。


 だが、俺としては人間……あのネズミを掴む鷹……だっけ。あの《組織》とかについてももっと調査を行いたかったというのが本音だ。他の大公の共感を得られず、残念至極ではないか。どう考えても、領境の結界破壊に関わっているだろうに……。

 それから、あの奇妙な出版社についても消息がつかめないままだ。なにせまだあれ以来、君は知っているかシリーズは配本されていないらしい。

 人間関連については仕方が無いので、せめて自分の領地では、機会があれば追求はしていこうとは思っている。


 最後の最後にわざわざ出てきたアギレアナのことも、釈然としない。本当にウィストベルが言うよう、今回の件に関わっているのか、そしてそれがただの愉快犯なのか、何一つわからないままだ。

 これに関しては、ウィストベルに更問いをしようとは思っているが。


 最後の最後に発覚したといえば、ベイルフォウスとデイセントローズのことは、今回一番の衝撃だった。一度ゆっくり話をしてみたいが……そういえば、俺たちもう親友じゃなかったっけ。

 その他にもミディリースとその父母、リシャーナと息子たち、ロムレイドとその姉妹といった、家族に関わりの深い事件だった、という印象だ。


 まだまだ、気がかりなことはたくさん残っている。が、なんにせよ、端緒となった魔王様の魔力は戻り、支配体系はちゃんと再始動している。何か問題が隠れていたとしても、今、見えないものについてグダグダ心配しても仕方が無い。

 悠々構えるのが魔族の強者、というものではないか。


「頭を切り替えて、修練所の運営を楽しむか」

「そうですね。なんと言っても魔王城の施設――特に修練所については閣下の発案ですし、その運営を担えるというのは、楽しみで仕方ありません」

「その点では、ジブライールこそ魔王城を建てるのに尽力してくれたわけだしな」

「え、つまり……ある意味、二人の共同作業、ですね……」

「え? なんだって?」

 あまりにも小声すぎて、なんて言ってるのかわからなかった。

「え、いえ、あの……なんでもないです」

 ? なんかモジモジしているのだが。


 とにかく俺としては、今回の事件については一段落ついたと納得することとし、今後は修練所が滞りなく開場され、たいした問題も起こらず次に渡せることを、心から祈るばかりだった。


【魔武具騒乱編】 了

というわけで、唐突ではございますが、一旦魔武具騒乱編をしめさせていただきたいと思います。

途中で更新が滞り、長くかかって申し訳ありませんでした。

もともと、魔武具騒乱編で最後にしたい、などと言っていたこともあるようですが、ゲフンゲフン、都合良く忘れ、まったりと今後も更新していきたいと思っています。

とりあえず次章は【修練所運営編】の予定です。

今回は色々反省しているので、今後は初心に戻ってサクサクな内容にできるよう、頑張りたいと思います!

いつから更新するかは未定ですが、気が向かれましたらまたお付き合いくださいませ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
いつも楽しく読んでます。 続き待ってます。
[一言] 修練所運営編 結局主人公に秘密とかって明らかになったのかな
[一言] お疲れ様でした!まだまだ続くことになって嬉しいです。ゆっくり続きを待ってます。
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