八話め。笑顔でGO! 作戦
「で? 何で笑わせに行ったのにお前顔がボコボコになってんの?」
イケメンの言葉はごもっとも。
どう伝えれば良いのか解らず黙っていると隣で筋肉がッフ、と小さく笑った。
「俺の筋肉の躍動が抑えられなかったのさ……」
その言葉に、俺は顔が痛いのも忘れて筋肉に食って掛かっていた。
「なーにカッコつけてんだテメー! テメーのせいでこんな素敵な顔になったんだろーが!!」
「っへ、照れるぜ」
照れてやがる! こんなに怒ってるのに照れてやがる!!
「褒めてネーよ!! 皮肉だよ!! 人の顔の原型変えといて褒められたと思う頭の中はなんだ!? 何で出来てんだ!? そうか筋肉だろ!! どーせ頭ん中もみっちり筋肉なんだろーがどうせよ!!」
少しムッとした様子で筋肉が威嚇のポーズを向けてきた。
「おいおい俺の筋肉を侮辱するようならば相手になるぜ?」
「じょっとーだクソッタレ! テメーの筋肉ケチョンケチョンにしたらー!!」
ゼーゼーと荒い息をしながら喧嘩越しの俺と筋肉の間にイケメンが割って入る。
「まーまーまー、落ち着け落ち着け、んで? 笑わせたのか?」
イケメンの言葉に俺はっう、と詰まってしまう。
それだけでイケメンも直ぐに理解したらしい。
「駄目だったか」
「まぁ、その、はい……」
内容はどうあれ。
コンビプレイも失敗。
「……女笑わせるなんて簡単じゃネーか」
イケメンの発言に俺の眉が勝手に上がる。
「その簡単なのが出来ねーから困ってんじゃねーか!!」
「女の子にニッコリ笑いかけてみな?」
何を言ってるんだこの素敵顔面は。
「俺が笑いてーんじゃネーの、笑わせてーの!!」
「……視点切り替えて見ろよ? 釣られて笑ってくれるかもしれないぜェ?」
そういうと、イケメン野郎は素敵な笑顔を披露してくれる。
ふざけている様に聞こえているが真面目な話らしい。
つまり笑ったら本当に女の子が笑ってくれるとか思っている様だ。
ヤダ! カッコいい!! ムカツク!!
「ッキャー! 私達の王子様が笑ったワー!」
「ステキー!!」
「こっち向いてー!」
ドア際から覗いていた女共が昭和臭い感じの盛り上がりを見せている。
このイケメンボケナスのファンとか言う奴だ。
イケメンが言った通り簡単に笑っちまってやがる。
どいつもこいつもヘラヘラヘラと笑いやがってェェェ。
これだから顔が良い奴はムカツクゥゥゥ。
……うん。
俺も。
笑いかけりゃ、笑ってくれるのかね。
少し気になってしまう。
イケメンのように笑いかけてみた。
「げ!! 河合がコッチ向いたわよー!」
「こっち向いてんじゃねーわよ! 変態野郎!!」
「死ね! こっち見ンな!! 視線絡ませただけで目が腐るわよ!!」
……親衛隊たちは各々が思う最高の敵対意識のジェスチャーと共に苛立ちを示しやがる。
おいおいおいおい!! ピチピチ女子学生が眉間に皺寄せて首切りジェスチャーまでしやがった!!
……不断からクラスでバカなことばっかやってっから女子からの人望なんざこんなもん。
自分で言うのもあれだが男友達は一番多い自身があるのだが……いや只の負け惜しみです。
「うるっせー!! アホ女共!! そして俺は河合じゃねー!」
ドアに溜まっている奴等に向かって思いっきり悪態を吐いて見せる。
女達特有の、キーキーという叫び声を挙げていやがる。
「ちょっとォ!! 言いすぎでしょソレー!」
言いすぎ!? 地獄に落ちろとか首切れろとかのジェスチャーはやりすぎじゃないんですか!?
それこそ男女差別ですよ!!
「ちっきしょー! 女性差別ならぬ男性差別だろうがー! 筋肉!! あそこのお嬢様達がお前のステキ筋肉が見たいってよー!!」
「おやすい御用だ!! ご希望にお応えするゼ! マイブラザー!」
ババッ! と筋肉は素早く上半身を脱ぐと、お嬢さん達へ筋肉ポージングをしながら走りながら向かった。
「ヘイ素敵なお嬢さん達!! お触りは一人一回で勘弁な!!」
「ぎゃー! 筋肉バカよー! デカい方の変態が来たワー!!」
固まっていた女達は筋肉が寄り付くと同時に散っていく。
「何故逃げるんだガールズ!?」
そんな事を言いながら上半身裸でキャーキャー言ってるイケメン親衛隊を追い掛け回してやがる。
見る奴が見たら完璧に捕まる光景だなコレ。
それを横目にイケメンがニヤリと俺に笑いかけてくる。
「どうすんだ? やってみるか?」
……駄目元でやってみるか。
一発芸もトークもギャグも脅かしもコンビも効かなかったんだ。
「……やってやるよ! 何でも試してやるっつの!」
「おお行って来い行って来い!」
そう言いながらイケメンがケラケラと笑う。
顔は違うだけでやっぱりこいつとの頭の中は全く持って俺と一緒らしい。
類友だ。
楽しければいいのだ。
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